ダイバーシティ・インクルージョン|導入が進む背景とそのメリットとは

ダイバーシティ・インクルージョンとは

ダイバーシティ・インクルージョン

ダイバーシティ・インクルージョン(Diversity&Inclusion)は、個々の違い(多様性)を受け入れ、互いに認め合い、個々を活かしていくことです。
「D&I」と表記されることもあります。

ダイバーシティ

ダイバーシティ(Diversity)とは、直訳すると多様性という意味で、黒人の人種差別や性別による雇用格差などから1960年代のアメリカで生まれた考え方です。
ビジネスにおいては、「多様な人材」「多様な働き方」を認め、組織にさまざまな人材が存在している状態を指します。

・多様な人材:性別、年齢、国籍、生活環境、バックグラウンド、宗教、障がいの有無、生き方や価値観、性格や嗜好など
・多様な働き方:雇用形態、働く時間、働く場所など

インクルージョン

インクルージョン(Inclusion)とは、直訳すると包括・包含といい、「包括」は一つにまとめること、「包含」は包み込む・中に含んでいることを意味します。1980年代に社会福祉のキーワードとしてヨーロッパで生まれた考え方です。
ビジネスにおいては、受け入れる・認める・活かすといった意味を持ち、「出身や性別の異なる人、外国人、LGBTQ、障がいのある人など、多様な人材の個々の価値観や考え方が認められ、組織において一人ひとりの能力やスキルが活かされている」状態をインクルージョンといいます。
 
多様な人材が組織で活躍するためには、「多様な人材を受け入れる」という意味のダイバーシティと、「多様な人材の個々の能力を活かしていくこと」という意味のインクルージョン、双方の考え方が必要です。

ダイバーシティ・インクルージョンが必要とされる背景

< 欧米 >

上記にも記載した通り、ダイバーシティの考え方はアメリカで生まれました。
奴隷制度が200年以上続いたアメリカでは、1865年のアメリカ合衆国憲法修正第13条による奴隷制度廃止後にも黒人差別が根強く残っており、白人が優位な社会でした。
また、女性や人種的マイノリティ(黒人やヒスパニック、アジア系人種など)は社会において雇用機会や昇進機会が制限され、差別の対象となっていました。

そんな事態を解消すべく、1964年の新公民権法が施行され、人種差別撤廃やマイノリティへの機会平等化が制度化され、雇用面でも機会均等、アファーマティブアクション(積極的差別是正措置)の義務付けが進みました。
しかし、法律上は企業が人種差別を禁止していましたが、実際には差別や理不尽な対応は続いていました。
この頃企業はダイバーシティに積極的に取り組んでいたわけではなく、人種差別の裁判での多額の損害賠償を防ぐため、訴訟に対する防御として取り入れた側面が強かったようです。まずは従来のマイノリティを組織に受け入れるという形で進みました。

その後、1980年代にはいると、人種や性別、価値観などの「違い」に価値を置くという考え方が生まれてきます。これが「ダイバーシティ」の始まりです。
マイノリティが一定の経済力を持つようになったため、マイノリティに対するマーケティング・コミュニケーションとしてダイバーシティを取り入れたり、CSR(企業の社会的責任)として取り組む企業が広がってきました。しかし、まだ企業経営に大きな影響を与えるものではありませんでした。

大きく流れが変わったのは、1987年にアメリカのハドソン・インスティチュート発表された「Workforce 2000」という21世紀のアメリカの労働力人口構成予測に関するレポートです。
「Workforce 2000」には、今後労働市場に新規参入する白人男性の割合が、47%から15%に急激に減少することや、労働力が急速に高齢化・女性化していくことが示されました。
これにより、企業が人事や組織戦略を大きく見直し、女性、有色人種、障がい者、高齢者などを積極的に活用する必要性が明らかになりました。ここから、具体的なダイバーシティの研究や導入が本格的に始まります。

2000年代に入ると、IT化や新興国の経済成長などにより、経済や企業活動のグローバル化が急速に進みました。
グローバル化に成功するためには、異なる人種、文化、習慣、宗教、価値観を持つ人々や組織をまとめ上げ、個々の多様性を活かす経営が必要になります。
また、グローバル競争の中で、優秀な人材を引きつけ、働き続けてもらうことが企業にとって経営戦略上非常に重要になりました。優秀な人材にとって、ダイバーシティやインクルージョンは企業選択におけるひとつの重要な価値観であり、採用競争力の観点から無視できなくなりました。 
こうして、ダイバーシティは個を尊重する「ダイバーシティ」から、さらに良いところを認め合う「ダイバーシティ・インクルージョン」に変容し、グローバル企業を中心にして、多くの企業で積極的に導入されるようになりました。

< 日本 >

・少子高齢化による労働人口の減少・人材不足

日本では超少子高齢化による働き手不足により、企業は人材の確保が困難になってきました。そのため、従来の男性中心で新卒一括採用、年功序列、終身雇用を基本とするような雇用方針ではなく、女性や中途入社、シニア、外国人の活用などを積極的に行い、幅広く労働力を確保する必要がでてきました。
女性の労働参加を促すために、子供を持つ男性や女性自身にとって働きやすい職場環境を目指した取り組み、積極的なキャリア採用などが増えています。

・ビジネスのグローバル化

日本企業においてもグローバル化は同様に進んでいます。欧米の事例で述べたとおり、グローバルなビジネス環境(海外拠点の展開、海外とのビジネス)においては「ダイバーシティ・インクルージョン」の考え方が無ければ、現地でのマネジメント、人材の採用、ビジネスのローカライズ化等のさまざまな業務を行うことができません。

・優秀な人材の確保

優秀な人材ほど国際的に見ても多様性を重視する傾向があり(海外の調査レポート等でもその傾向は示されています)、日本においても同様です。
優秀な人材は画一的な価値観やマネジメントを嫌煙するため、「ダイバーシティ・インクルージョン」が文化として会社に存在していないと、人材から選んでもらえなくなっています。
そのため、採用においては、ダイバーシティ・インクルージョンを実現するための制度や文化の、対外的な発信が非常に重要になっています。

ダイバーシティ・インクルージョンのメリット

・社員の離職率低下

多様な働き方(雇用形態、働く時間、働く場所など)が可能な環境を整えておくことで、社員が働きやすい職場となり、離職を防ぐことができ離職率の低下につながります。

・社員のモチベーションアップ

個人の考え方や価値観が尊重され組織で受け入れられることで、自分は組織から必要とされていると感じられ仕事へのモチベーションがアップします。

・イノベーションの創出

同じ考え方を持つ人が多い組織では新しい考え方は生まれにくいですが、異なる価値観・経験・スキルを持った人が集まることにより、様々な視点から意見が交わされることで、組織全体でイノベーションを生む力が高まります。

・優秀な人材の確保

国籍や性別、年齢を問わず有望な人材を雇用し教育環境を整えることで、多様な人材にとって働きやすい職場環境となり、条件面で就業をあきらめていた優秀な人材の確保も可能になります。

ダイバーシティ・インクルージョンの具体例

・女性の活躍推進

・男性の産休・育休推進

・シニア層の活躍

・障がい者の雇用促進

・外国人の雇用促進

・LGBTQへの理解

・多様な働き方の推進
(時短勤務やフレックス制、テレワークや時間単位有休、副業・兼業の解禁など)

ダイバーシティ・インクルージョン導入のポイント

・職場環境の整備

多様な人材一人ひとりの能力が最大に発揮できる職場環境をつくることが大切です。個々の社員がよりパフォーマンスを発揮できる、働きやすい働き方を選択できるよう、リモートワークや時短勤務、フレックス制などを選べる環境が必要です。
また、法制度の整備が進んでいる育児休業制度を、女性のみならず男性も取得できるような環境、風土を作っていくことや、スキルアップを望む社員に学べる環境を提供するといったことが必要です。

・管理職の教育

多様な人材が存在する組織をマネジメントするためには、管理職への教育が欠かせません。
管理職がダイバーシティ・インクルージョンを理解・納得し、実践しなければ現場で浸透することはありません。
組織に浸透させていくために、管理職に対し必要な教育を行うことが必要になります。

・社員教育や丁寧なコミュニケーション

社員の意識改革が必要です。せっかく制度を作ったとしても、管理職やメンバーがダイバーシティ・インクルージョンを受け入れていなければ、行動は変わりません。
社員の意識を変えるための教育や、ダイバーシティ・インクルージョンのメリットや、導入する意義を理解してもらうための丁寧なコミュニケーションが必要となります。

・コミュニケーション機会の創出

多様な人材が存在する組織では、相互理解のためのコミュニケーションが重要です。
多様性が高まれば高まるほど、社員同士で意思疎通がスムーズに行えるよう、コミュニケーション機会を計画的に設計する必要がでてきます。多様な人材がいる組織において、相互理解のコミュニケーション量を軽視すると、分裂や対立が起こりやすくなってしまいます。

・サーベイで浸透具合をチェックする

定期的にサーベイを実施することで、ダイバーシティ・インクルージョンが社員に受け入れられているのか観測することが重要です。
価値観の問題は本人が自己評価をすることは難しく、本人の認識と他者からの評価や実態とで乖離が発生しがちです。
一部良くない組織があったり、メンバーとマネジャーで認識の齟齬が大きい場合は、適切に人事や上司が課題解決のために介入していきましょう。

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