部下を問いで導く・コーチングを使うときに注意すべき5つのポイント

部下を問いで導く・コーチングを使うときに注意すべき5つのポイント

管理職に対するコーチング研修はとてもメジャーな研修のひとつです。ほとんどの企業で実施されているかと思います。
一方で、コーチングを使おうとする現場のマネジャーは、コーチングについて「知っているけれど使えない」「使っているつもりだけど部下から良い反応がない」という方が少なくありません。
マネジメントにおいてコーチングはあくまで一つの手法でしかなく、マネジメントの現場は研修と違い複雑です。
今回は、部下を問いで導く、コーチングを行う際に注意すべき5つのポイントについてご紹介します。

①メンバーが考えて答えにたどり着ける内容か

大前提、問いで導こうとする際には、「知識がないと分からないものではないか」という点に注意しなければいけません。
例えば、メンバーの価値観や、キャリア観について問うてみる。これは相手の中にあることを聞いているので、問いかけて聞くというコーチングは有効です。もちろん、ハッキリとした考えがないケースもあります。それでも、考えの種は本人の中に必ずあります。
また、現在行っている仕事について、あと一歩でたどり着けそうな場面、十分な知識はあるけれど判断が誤ってる場面、こうした場合でもコーチングは有効です。
問いによって別の視点を与えたり、内省を促すことで、今と違う考えや、間違いに気づける可能性が高いからです。

しかし、本人が知らない、知識がないが故に解けない、答えられないことについてコーチングをしても意味がありません。
例えば、ルール、法律、慣習、知識、過去の経緯、こういった知っているか知らないかが問題であり、絶対に自分で考えて中から答えが出てくるようなものではないものについて、コーチングしても意味がありません。どれだけ問いかけて待っても何も出てきません。
こうした場合は、知識について教えるティーチングが適しています。

②質問するだけになってはいけない

マネジメントにおけるコーチングは、研修で習ったセオリー通りにはいきません。
メンバーの成長に繋げる、納得感を持ってコトにあたってもらうためにコーチングを実施するのですが、時間は限られており、仕事も迫っています。
メンバーもコーチングを受けたいわけではなく、解決方法を教えてほしかったり、アドバイスが欲しかったりするわけです。

こうした背景から、マネジメントを行う際に、メンバーが答えられない時間が長くなると、上司は何も支援してくれないと逆に不満になります。
メンバーが上司に相談に来たり、上司が気づいたことを指摘したい場合には、たいていメンバーは考えたけれど答えにたどり着けなかった状態です。
そこでただ質問して聞こうとするだけでは、メンバーは詰まってしまいます。
メンバーが自力で正解にたどり着けるよう、ヒントや追加の質問などを織り交ぜながら、導く必要があります。

メンバー「資料が顧客に分かりにくいようなのですが、どう改善したらよいか分からなくて」
マネジャー「顧客にとって何が分かりにくいのかな?」
メンバー「当社のサービスの特徴や他社との違いは、各機能ごとにきちんと説明しているのですが、それでも説明し終わったあとに、結局どんなサービスなのかお客様にはぼやけているようで。」
マネジャー「どうしてだろう?」
メンバー「当社のサービスが他にない新しいサービスだからではないでしょうか」
マネジャー「なるほど。ではどうしたら既存のサービスにない、他とは違う新しさを伝えられるだろうか?」
メンバー「うーん。」・・・「他社と比較してみたらいいのではないでしょうか」
マネジャー「なるほど。いいアイデアだね。どうやって資料で比較を示そうか?」
メンバー「各社の特徴を並べて見るのはいかがですか?」
マネジャー「うん。それもいいけど、特徴を並べるだけだとどう違うかが顧客に分かりにくいよね。今と変わらない結果になるかもしれない。4象限のマトリックス型のチャート図を作るのはどうだろうか?各社のポジションがどこになるのか一目瞭然で分かりやすい。」
メンバー「なるほど。それはいいですね。ですが、そうした図を作るにはマトリックスの軸が肝だと思いますが、あまり作ったことがなく、自信がありません。」
マネジャー「なるほど。それならこの本がいいかな。この本のこの部分を参考に、マトリックスの軸を考えて作ってみて。できたらまた持ってきてほしい。」
メンバー「ありがとうございます。分かりました。自分で一度考えてみます。」

上記例では、前半はメンバーが考えたら答えに近づけると考えて、いくつかの角度を変えた質問によって本人が気づいていない視点を提供し、答えにたどり着けるよう支援しています。
後半部分では、メンバーに図式化する知識がないと判断し、すぐに方法を提供しました。
一方で、マトリックスの軸という重要な部分について、自ら考えるように指示し、考えるヒントとなる書籍も提供しています。

③メンバーに考えさせる時間のコントロール

ある程度時間を与えても出てこない場合は、②を適宜実施することが必要です。
ヒントや追加の質問もなく、ずっと考えることを求められると、メンバーは答えにたどり着けず何で指示してくれないんだ、アドバイスをくれないんだとマネジャーに対して不満を持ちます。
既に自分で考えて困っているから相談にきているケースでは、ヒントや追加の質問などが早いタイミングで必要になります。
マネジャーが新たに気づいたことがあり、メンバーに考えさせたい場合は、最初の問いで少し考える時間を与えて良いでしょう。

仕事における判断は、考えるという思考だけでなく、知識や経験といった情報も必要です。考えたら必ず答えにたどり着けるようなものではありません。
すぐに答えを教えてしまうのでは、メンバーの成長に繋がりませんが、メンバーが止まってしまったポイントで一人で長く考えさせることは、上司から支援や指導を受けれないという部下の不満に繋がると認識しておきましょう。

④イライラしない

メンバーからなかなか正解が出てこないからといって、イライラしてはいけません。
イライラしている雰囲気が伝わると、メンバーはプレッシャーから、集中して考えることができなくなります。問いに対して安心して考えられる状態を作る必要があります。
また、なんで分からないんだ、そんなことも分からないのか、という態度が透けて見えると、メンバーは考えることをやめてしまいます。
「どうせあなたの思う方向に動かしたいんでしょ」「時間の無駄なので早くあなたの持っている答えを教えてください」、といった姿勢にメンバーを変えてしまいます。
マネジャーのメンバーへの聞き方、メンバーが考えている間の待ち方は、コーチングにおいて非常に重要です。

⑤メンバーにとっての緊急度に配慮する

メンバーが急ぎで困っているときは、時間をかけてはいけません。いくらコーチングが有効であろうと、コーチングは時間がかかります。
緊急性が高く、メンバーが助けて欲しい時には、時間をかけずに適切に指示するようにしましょう。
メンバーがすぐに対応したい時、しなければならない時にコーチングを使うと、困ったときに適切な指示が受けれない人、頼りにならない人とのレッテルを貼られ、マネジャーとしての信頼を失ってしまいます。


いかがでしたでしょうか?
部下を問いで導く、コーチングを行う際に注意すべき5つのポイントについてご紹介しました。
今回ご紹介したポイントを押さえると、コーチングはマネジメントにおいて大きな力を発揮してくれるはずです。ぜひ本コラムを参考に、より良い部下の指導方法、育成方法について考えてみてください。

反対意見を出すなら代案もセットで、は正しいのか?|反対意見を表明する際の3つのルール

反対意見を出すなら代案もセットでは正しいのか?

ミーティングや議論における進行ルールの一つに、「反対意見を出すなら代案もセットで」というものがあります。
批判的な意見が出やすい、否定的な意見ばかりのチームにおいては、話を前に進めるためにとても有効なルールですが、実は落とし穴もあります。
今回は「反対意見を出すなら代案もセットで」という一見正しそうなルールに潜む落とし穴と、反対意見を表明する際の3つのルールについて解説します。

反対意見を出す際に代案を求める意味

誰もが会社で、自分の考えに一致しないと何でもかんでも反対する上司、やりたくないを意味がないと言い換えて反対する部下に遭遇した経験をお持ちと思います。
代案を考えるのは難しいですが、ただ反対するだけならとても簡単です。
そのため、話を前に進めたい人からすると、反対だけして代案を何も出さない人は、鬱陶しいことこの上ありません。
代案なき反対は議論を停滞させます。
ミーティングにおいて、「代案がないなら反対するな」「反対するなら代案はセットで」という考えを参加メンバーが持っている、そうしたルールが設けられたチームでは、安易な反対がなくなるため議論がスムーズです。
代案がなければ反対意見は表明できませんので、代案や建設的な意見をベースに話を進めていくことができます。

代案なき部下はマネジャーにとってやっかいな存在

代案なく反対する部下もいます。

マネジャー「今月の商談を増やすために、サイトを訪問してくれた顧客に電話をしよう」
部下「サイト訪問くらいの顧客に電話をしても無駄だと思います」
マネジャー「それはどうして?」
部下「サイト訪問くらいではまだ顧客のニーズは浅いです。サービス資料をダウンロードくらいした人でないと効率が悪い」
マネジャー「ではどうしたら商談を増やせるかな?」
部下「どうしたらいいかは分かりません。ただ、意味がないと思うんです。」
マネジャー「意見は分かった。では、今の案より効果的な策を一緒に考えて欲しい。もしより良い案があるならそれでいこう。ただ、現状のまま何もしないは無しだ。」
部下「分かりました。では、過去に失注した顧客に連絡するのはどうでしょうか。」

こんな場面に遭遇したら、上記のマネジャーのように「より良い案を一緒に考えて欲しい」とメンバーを巻き込むことはできずに、「もっと主体性を持ってくれ」「評論家になるな」とイライラして怒ってしまうマネジャーの方が多いのではないでしょうか。

代案がある部下の意見は上司にとって貴重です。しかし、代案はないけれど反対する部下は、上司にとってはやっかいな存在です。
このような場面で、マネジャーが「反対するなら代案を出せ」と言えば、言われれたメンバーはもっともな意見と感じ、納得がいかないながらも黙って従うでしょう。
「反対するなら代案もセットで」というルールは、安易な反対に対しては有無を言わせない力を発揮します。

代案がなければ反対意見は認められないのか?

実は、チームにとって反対意見が出ることは何ら悪いことではありません。むしろ、反対意見が出ないこと、メンバーが上司や周りに対して忖度する状態こそ問題です。
心理的安全性の低いチームでは、当然ながら立場の強い人に対する反対や否定は出なくなります。
実は、心理的安全性がある中で、代案がなくても反対ができるという状態は、よい状態とも言えるのです。
代案なき反対を許さない状態がいきすぎると、チームにとって不都合なことが起こります。
それは、本当に善意で「やめた方がいい」「もっといい案があるはず」と、メンバーが感じた違和感が放置されてしまう点です。

例えばある会議で、プロジェクトの進め方について発表者からある方向性が示されました。

マネジャー「それでは、本件は時間もないので、いつも依頼しているA社にお願いして進めようと思います。」
Bさん「ちょっといいですか。」
マネジャー「なんだい?」
Bさん「今回のプロジェクトは、A社にすべて任せるのは違う気がしています。今回の趣旨からすると、もっと良い方法があるのではないでしょうか。」
マネジャー「具体的にどうしたらよいと思うの?」
Bさん「すみません。分かりません。ただ、A社に任せるというのは安直過ぎると思うのです。もっと良い方法があるんじゃないかと。。もう少しみんなで考えませんか?もし何もよい案が出なかったらA社に任せるという形はどうでしょう。」
マネジャー「わかった。Bさんの言うことも一理ある。みんなどうかな?」
Cさん「確かに今回の内容からすると、A社とはちょっと違う気もします。こういう方法もあるのでは?」
マネジャー「それいいね!○○チームにも協力をお願いすれば、ある程度自分たちでできるかもしれない」

この時、「代案がなければ反対できない」というルールが徹底されていたとすると、今回Bさんが感じた違和感は表明されることはありませんでした。
違和感を取りこぼしたことにより、チームで生み出されたより良い代案にたどり着くチャンスを失っていたはずです。
「代案がなければ反対できない」というルールにより失うのは下記のような点です。

・善意からの反対や違和感を見逃す
・集団の知で解決できること、より良い代案にたどり着けない

前者は先に述べた通りですが、後者の「集団の知で解決できることを見逃す」も重要な視点です。
反対を表明した個人では解決・代案までたどり着けないけれど、チームでならたどり着けることがあります。
違和感や間違っていることを感じることより、代案を考える方が難しいです。
そのため、「代案がなければ反対できない」ということになると、善意の反対まで無くしてしまいます。それは、チームとしては大きな損失です。

反対意見を表明する際に必要な3つのルール

一方で、マネジャーとしては、代案のない反対意見や否定的な意見ばかりの状態を放置するわけにはいきません。
そうした場面でマネジャーに必要なのは、「前向きな反対意見」なのか、「後ろ向きな否定・単なる批判」なのか、を見極める姿勢です。

では、前向きな反対意見とするためには、どうしたら良いのでしょうか?
前向きな反対意見を行うには、発言者の発言の仕方が重要になります。

代案のない反対意見を表明する際に必要な3つのルール
  1. 反対する際に、相手の意見を全否定しない
  2. 前向きな決断としての反対であることを示す
  3. 一緒により良い代案を考える姿勢を示す

先の事例のBさんは、上記3つのポイントをしっかり抑えていました。
この3つのルールを守れば、単なる批判や否定でなく、前向きな反対意見を伝えることができます。
マネジャーとしても、3つのルールを守った反対意見であれば、たとえ代案がなかったとしても前向きな発言として耳を傾けることができます。
前向きな反対意見では、不毛な議論の停滞は起こりません。
マネジャーは、この3つのルールを守れば反対意見を表明して良いとメンバーに理解させること(逆にルールから逸脱した反対意見は認めない)、ルールに則った発言には耳を傾けることが重要になります。

反対意見を出すなら代案もセットで、はほどほどに

いかがでしたでしょうか?
代案のない反対意見はたしかに議論を停滞させます。
批判や否定ばかりして、建設的な意見を言わない人もいるでしょう。
しかし、全て一律で「代案なき反対」を否定しては、必要な反対意見を黙殺してしまいます。
反対意見をするなら代案もセットで、はほどほどにした方が賢明です。
今回取り上げた3つのルールをチームの共通認識とすることで、チームのコラボレーションを最大限発揮していきましょう。