信頼構築に不可欠な「マネジメント姿勢」|成果を上げるだけがマネジャーの役割ではない

信頼構築に不可欠な「マネジメント姿勢」|成果を上げるだけがマネジャーの役割ではない

マネジメント姿勢とは、マネジャーの役割を果たそうする姿勢のことです。
メンバーにアンケートをとると、マネジメント姿勢が低いスコアになるマネジャーが少なくありません。自身はちゃんとマネジメントしているつもりのマネジャーでも、低くなってしまうことがあります。

今回は、マネジメント姿勢が低くなる原因やその解決策について、解説していきます。

マネジャーの役割を正しく理解しているか?

マネジャーは、単に与えられたチーム目標をクリアすれば良いというものではありません。
どんなチームにしたいか目標や方針を明示してチームを方向付ける、部下とコミュニケーションをとり目標達成のための動機づけや育成を行うといった役割も担います。
また、メンバーもマネジャーに対して、こうした役割を期待しています。

一方、マネジャーの多くはプレイングマネジャーとして自身もプレイヤーとして活動しながら、チーム目標の達成を追っています。
優秀なプレイヤーがマネジャーに上がっていくことが多いため、中にはメンバーに任せるより自分でやったほうが早いという意識から、仕事を抱え込んでしまうマネジャーもいます。

しかし、チームの目標達成のために自身がプレイヤーとして頑張るという方法をとると、メンバーをマネジメントしてチームとして成果を上げるという意識が薄れ、マネジャーの役割=チームの目標達成と狭く捉えてしまいがちになります。

マネジャーの役割が明確に定義されていない、マネジャーの評価指標がチーム成果のみで育成を頑張っても評価がアップしないなど、人事制度がそうさせている場合もあります。これは経営・人事の問題です。
ただ、制度がどうであれ、中長期視点で考えると、メンバーをマネジメントしてチームとして高い成果を出せる組織を作り上げなければ、マネジャーとしてのスキルは伸びず、さらに大きな組織を任されるチャンスを逸してしまいます。

短期的な成果ももちろん大事ですが、中長期でのマネジャーとしてのキャリアを見据え、メンバーをマネジメントすることによって成果を上げるチームづくりの意識を持ちましょう。

メンバーと対話し、より良い組織づくりを目指しているか?

マネジメントとは、人を活かして、組織として高い成果を上げることです。
人はロボットと違い感情を持つため、きちんと対話を重ねて信頼関係を築き、チームの目標達成に向けて力を発揮してくれるよう動機づけする必要があります。

マネジャーに求められる活動の例
  • マネジャーとして、どんなチームにしていきたいかチームの役割や目標を明示する。
  • メンバーの価値観や強み、希望するキャリアなどを理解し、各メンバーを動機づけする。
  • チーム目標、メンバーの強みや希望を踏まえて、個々のメンバーの目標設定を行う。
  • 目的やゴール、納期、制約条件などを明確に伝えて業務をアサインする。
  • 日々の仕事ぶりを把握し、適切なタイミングでフィードバックや承認・称賛、業務支援を行う。
  • 評価面談にて、評価が良い場合も、悪い場合も、きちんと納得のいく理由を説明する。
  • 同僚との人間関係や職場の働きやすさを気にかけ、自身が介在して働きやすい環境を整える。

上記のように、マネジャーが実際に行うマネジメント活動の多くが、メンバーとの対話によって実現できます。
対話なくしてマネジメントはできませんし、マネジャーの役割を果たそうする姿勢も伝わりません。

コロナ禍でテレワークの導入が進み、物理的な距離ができたことで、メンバーとのコミュニケーション不足に陥るマネジャーが増加しています。
コミュニケーション不足はすれ違いを生み、徐々に信頼残高を消費します。信頼構築には時間がかかりますが、信頼が損なわれるのは一瞬です。一気に不信に変わります。
そうならないうちに、メンバーと1on1で定期的に対話する場を設け、きちんと対話をしていきましょう。

顕在化した組織課題に対処しているか?

メンバーと対話をしていくと、メンバーが感じるチームの課題や問題点を伝えてくれます。
こうして顕在化した組織課題に対して、マネジャーはきちんと向き合っていかなければいけません。
対処せず放置してしまうと、組織を良くしようと取り組んでいない、意見を出しても無駄、と感じさせてしまい、メンバーとの信頼関係を損ねてしまいます。

課題の中には、社内制度の問題、事業部全体の問題など、マネジャーだけで解決が難しい問題も含まれます。
こうしたマネジャー自身だけで解決が難しい課題についても、上長や人事など関係部署に話し合い、きちんと対処していきましょう。

もちろん、話し合った結果、解決されない問題もあります。
そうした場合でも、その結果をきちんとメンバーに伝えれば問題ありません。
最終的に問題が解決できるかよりも、「問題を解決しようと取り組む姿勢」がまず重要なのです。

(参考)▶上司の歩みよる姿勢こそが組織課題を解決するカギである|600名のデータから見えた事実とは?

マネジャーの行動はメンバーから見えづらい

組織課題を解決しようと動いているにもかかわらず、マネジメント姿勢が低くなる場合は、その活動がメンバーから見えていない可能性を疑いましょう。

自身だけで解決できないと判断し上長に相談する、人事に相談するといった行動は、日々担当業務に専念しているメンバーからはとても見えづらいです。
たとえ、人事に相談して回答待ちの状態、上長にエスカレーションして部内で検討中だとしても、メンバーに見えていなければ、何もしていないのと同じです。

チーム内だけで完結しないため関係部署と調整をしている。
部長に話を上げ、部内で検討中なので、もう少し時間がかかりそう。
制度が絡むので難しいとは思うが、こうした意見があることは人事に伝えている。

上記のように、きちんと課題として捉え、解決策を考え動いているということをメンバーに伝えるようにしましょう。
これをやるかやらないかで、マネジメント姿勢の見え方は格段に変わります。


いかがでしたでしょうか?
メンバーから見るマネジメント姿勢は、メンバーときちんと対話をし、発生した組織課題の解決に取り組むという当たり前のことを、当たり前に行うことで高まります。
当たり前のことができていない場合は、それはなぜなのか内省し、自身のマネジメント業務の改善を行いましょう。

きちんとやってるつもりだがマネジメント姿勢が低いと思われている、といったギャップがある場合は、自身の活動がメンバーにきちんと伝わっていない可能性があります。
組織における課題として捉えて、マネジャーとして解決に動いていることをメンバーに伝えてみてください。

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上司の歩みよる姿勢こそが組織課題を解決するカギである|600名のデータから見えた事実とは?

上司の歩みよる姿勢こそがわだかまりを解く|解決しなくても解決することがある

組織にはさまざまな問題が発生しますが、問題の解決を諦めてしまっているマネジャー、リーダーも多くいるかと思います。
問題の解決をしなくても部下は淡々と業務をこなしてくれて日々の業務は進んでいきますし、自身の権限では解決が難しい問題もあるでしょう。

「問題を解決しなければ、組織は良くならない」
私たちは、そのような漠然とした考えを持っているかと思います。
実際、その考えが現場のミドルマネジャーが解決が難しいと考えた場合、改善のためのアクションを諦めている原因にもなっています。
しかし、どうやらその考えは事実と異なるようです。

最近マネトレ利用者約600名のデータを分析したところ、面白い発見がありました。
それは、「全ての組織で課題の原因が解決されたかどうかは分からないが(恐らく違う)、マネジャーが解決しようと行動した組織においては、従業員のエンゲージメントスコアが上昇した」ということです。

今回は、利用者データを分析した結果と、そこから判明した事実に対する調査結果をご紹介します。

マネトレ利用者の調査結果|マネジャーが行動するとエンゲージメントスコアは上昇する

マネトレ利用者約600名のデータを分析したところ、下記のような事実が浮かび上がりました。

マネトレ利用者のデータから判明したこと
  • 組織課題の改善計画を立て行動に移したリーダー・マネジャーの74%は、メンバーのエンゲージメントスコアが上昇する
  • 組織課題の改善計画を立てなかったリーダー・マネジャーの67%は、メンバーのエンゲージメントスコアが悪化する
  • 改善計画を実行したリーダー・マネジャーの89%は、組織のポジティブな変化を多少なりとも実感する

マネトレを利用せずとも、マネジメントのPDCAをしっかりと回しているリーダー・マネジャーもいるはずです。
そのため、本当に日々のマネジメント業務で改善計画を立てていないリーダー・マネジャーの部下のエンゲージメントスコア悪化の実態は、67%よりもっと高いはずです。
マネジャーが課題に対し何もアクションを取らなければ組織の状態は悪化する、というのは恐らく皆さんの想像通りの結果かと思います。

一方、組織課題の改善計画を立て行動に移したリーダー・マネジャーの74%は、部下のエンゲージメントスコアが上昇しました。
しかし、改善計画を立てたからといって、その課題が解決できたかは分かりません。
行動したけれど解決できなかったケースも多いはずです。
コーチのサポートがあるにせよ、74%もの管理職が課題解決をスムーズに行えるマネジメント力があるのであれば、世の中の組織課題の多くは既に解決され、エンゲージメントの高い組織が大半のはずです。
分かっていてもできないのがマネジメントであり、「分かる」と「できる」には大きな壁があります。
※それを想定してマネトレではコーチとデータで長期に渡りさまざまなサポートをしています
では、なぜ74%もの管理職に改善が見られたのでしょうか?

ヒアリングから見えてきたリーダー、マネジャーの姿勢の大切さ

私たちは、実際にポジティブな変化が起きている組織にヒアリングを実施しました。
そこで見えてきたのは「問題の原因が解決されなくても、組織で起きている問題は解決されることがある」という実態でした。下記に一例をご紹介します。

<リーダー、マネジャーの視点>

若くして管理職として活躍するAさんは、経験してきたセールス領域以外まで管掌範囲が広がり、自分に知見があまりないマーケティング領域のメンバーに対するマネジメントに苦労していました。

会社としては、個人として高い成果を上げ、その後セールス組織でも成果を上げたAさんに期待しての登用でした。
しかし、自分の専門領域ではないマーケティングチームに対しては、うまくマネジメントができず、メンバーからの信頼は低く、組織のパフォーマンスも低下している状況でした。

マネトレのコーチから、サーベイの結果を分析し、原因として想定されることを複数お伝えしました。
Aさんは、それを踏まえ、どうしてリーダーとしてメンバーからの信頼が獲得できていないのかを考えました。
Aさんは、「自身の専門性が低い」「部下に弱みを見せまいとしている」ことが、マネジメントの基本であるメンバーとの信頼関係が作れていない原因と考えました。

そこで、Aさんはメンバーひとりひとりと1on1を実施し、カッコつけていない正直な気持ちを伝え対話したそうです。
その後、マーケティングチームのメンバーとの関係性は良化し、Aさん自身もマネジメントに手応えを感じているそうです。「自身の専門性の低さ」という原因は解決されていないにも関わらずです。

<メンバーからの視点>

メンバーのBさんは、マーケティング一筋の経験で、しかもAさんより年上でした。
マーケティングに関して詳しくないが主導するAさんの態度に反感を持っていたそうです。
Aさんと1on1を実施する際に、感じていた不満を伝えようと、怒りにも似た感情で意気込んでいました。
ところが、Aさんから、冒頭下記のような話があり、その感情は消えてしまったそうです。
Bさんは、これからどうしていくか、未来に向けて協力的な対話をしました。その日からAさんへの印象も、チームへのBさんの貢献も変わりました。
同じように、他のメンバーも協力的になり、Aさんへの信頼のスコアは上昇し、チームのコンディションは良化しました。

「自分が皆さんをうまく引っ張っていくことができていないことを痛感しています。マーケティングに関する知識も不足しています。これまでは、リーダーとして弱みを見せてはいけないと強がっていました。今は、自分自身が変わらなければと思っています。これからチームをよくしていくために、Bさんに協力してほしい。うまく行動できていないことは認識しているので、意見があれば率直に言ってほしい。」

解決できなくてもリーダー、マネジャーが行動すること自体に意味がある

組織のほとんどの問題はコミュニケーションによって生まれています。
マネジメントはコミュニケーションによって発揮されます。
今回は対話によって前進しましたが、元をたどればリーダーの「解決しようとする姿勢・行動」によるものです。

Aさんが、問題を認識し解決しようとする姿勢を見せなければ、決してメンバーからの信頼を得ることはできなかったでしょう。
Aさんが行動を起こさなければ、チームに起きている問題は解決されませんでした。

原因自体をリーダー、マネジャーが解決できなくても、リーダー、マネジャーの解決しようとする姿勢によって、問題は解決してしまうことが多々あるのです。
上司の歩みよる姿勢こそが、あらゆる問題を解決する糸口になる。
これは、マネジメントを行う人々を勇気づける事実ではないでしょうか。
今組織にある問題の解決をあきらめてしまっているリーダー、マネジャーも、組織を良くしようとする姿勢・行動を起こしてみませんか?

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【9月更新】男性版産休について徹底解説|育児・介護休業法改正の施行日がついに決定

男性育休義務化

2021年6月3日に衆議院本会議で成立し、施行日が決まっていなかった「育児・介護休業法」の改正法ですが、先の8月30日の労働政策審議会にて男性版産休と呼ばれる出産直後の育休等の施行日が決定しました。

厚生労働省が発表した2020年度雇用均等基本調査によると、育児休業取得率は女性が81.6%、男性は12.65%と、男性が初めて取得率1割を超え過去最高となりました。
一方で、政府目標である2025年までに男性の育児休業取得率を30%に対しては、まだ大きく下回っています。
今回の改正法で、男性がより育休・産休を取得しやすくなることを目指しています。

今回は、男性版産休制度が盛り込まれた育児・介護休業法改正のポイントと、具体的な制度導入スケジュールについて解説します。

男性の育児休業(育休)とは

育児休業制度とは仕事と育児を両立し働き続ける為に定められたもので、原則として1歳に満たない子どもを養育する労働者が、会社に申し出ることで、養育する期間を休業できる、育児・介護休業法により定められた制度です。父母ともに取得が可能です。
出産当日~子どもの1歳の誕生日前日までの最長1年取得できます。
配偶者が専業主婦であっても、事業主は男性の育休取得を拒むことはできません。
※保育所に入社できない等の一定の条件の場合は、最長で2歳まで
※父母ともに育児休業を取得するパパ・ママ育休プラスを利用した場合は、子が1歳2か月まで

■パパ・ママ育休プラス
両親が共に育児休業を取得する場合、原則子が1歳までの休業可能期間が、子が1歳2か月に達するまで(2か月分はパパ(ママ)のプラス分)に延長されます。

育児・介護休業法改正の5つのポイント

育児・介護休業法改正の内容については、2022年4月以降に順次制度が導入されていきます。
育児・介護休業法改正の5つのポイントと、制度が導入されるスケジュールについて押さえておきましょう。

育児・介護休業法改正5つのポイント
  1. 男性版産休|出生直後の育児休業の取得
  2. 育児休業の分割取得
  3. 雇用環境整備、個別の周知・意向確認措置の義務化
  4. 有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和
  5. 育児休業取得状況の公表義務化

男性版産休|出生直後の育児休業の取得

出生直後の大事な時期(出生後8週間以内)に男性が柔軟に育休を取得できるよう、「対象期間・取得可能日数の追加」「分割取得の許可」「申出期限の延長(直前までの申出の許可)」がされます。

施行日:令和4年10月1日

新制度と現行制度との違い

引用:厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000789715.pdf

※1 職場環境の整備などについて、今回の改正で義務付けられる内容を上回る取り組みの実施を労使協定で定めている場合は、1か月前までとすることができます。
※2 具体的な手続きの流れは以下①~③のとおりです。
①労働者が就業してもよい場合は事業主にその条件を申出
②事業主は、労働者が申し出た条件の範囲内で候補日・時間を提示
③労働者が同意した範囲で就業
なお、就業可能日等の上限(休業期間中の労働日・所定労働時間の半分)を厚生労働省令で定める予定です。
(注)新制度についても育児休業給付の対象となります。

育児休業の分割取得

出生8週後〜1歳までと、1歳以降の育休が、それぞれ柔軟に取得(2回分割)できるようになります。
保育所に入所できない等の場合は最大2歳まで、各期間途中でも母と父で交代が可能(途中から取得可能)となります。

施行日:令和4年10月1日

改正前
改正後
  • 原則分割することはできない
  • 1歳以降に育休を延長する場合、育休開始日は1歳、1歳半の時点に限定
  • ①の新制度とは別に)分割して2回まで取得可能
  • 1歳以降に延長する場合について、育休開始日を柔軟化

1歳以降の育休では、育休取得可能なタイミングが1歳、1歳半と6ヶ月単位のため、実質的に育児休業の交代ができず、男性の育児休業取得はほとんどされていませんでした。結果、パパとママで柔軟に育休取得を調整して育児を分担・交代することが出来ませんでした。
今回の法改正によって、「開始時期を自由に変更できる」+「パパ、ママがそれぞれ2回に分割して取得が可能」になり、仕事への影響を抑えながら共働き世帯の夫婦間で育児の担当を柔軟に調整することが可能になります。

■ 分割取得が可能になるとどう変わるのか?

育児休暇を分割して取得することが可能になることで、夫婦での柔軟な育児体制の構築や、仕事への影響を小さくし男性の育休取得がしやすくなります。

分割取得とは

引用:厚生労働省「男性の育児休業取得促進等に 関する参考資料集」https://www.mhlw.go.jp/content/11901000/000727936.pdf

改正法案では、男性は出産日から8週間の間に合計4週間分(2回まで分割可能)の取得ができるようになります。
また、妻の職場復帰のタイミング等にも柔軟に取得できるように、8週後〜子どもが1歳になるまでの間にも男性は分割して2回取得が可能となります。

また、保育所に入所できない場合、1歳以降の育児休業についても、開始時期の柔軟化(従来は1歳または1歳半のタイミングで固定)、分割して2回取得が可能になるため、妻と交代しての育児休業取得が可能となります。

つまり、男性は育休を複数回に分けて取得することが可能になるため、仕事柄「長期間休むことが難しい」「妻に負担がかかるポイントだけはサポートしたい」というような場合でも育休が取得しやすくなります。

③雇用環境整備、個別の周知・意向確認の義務化

施行日:令和4年4月1日

  • 育児休業を取得しやすい雇用環境の整備(研修、相談窓口設定等)
  • 妊娠・出産(本人または配偶者)の申し出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置

厚生労働省の調査によると、出産・育児を目的として休暇・休業を利用しなかった理由について、「会社で育児休業制度が整備されていなかったから」や「職場が育児休業制度を取得しづらい雰囲気だった」という理由が多く、会社や職場を気にして取得したいという希望を言い出せない環境が多かったことが分かっています。
その為、育休取得対象の男性に対して制度について説明し、育休取得の意向を個別に確認することが義務化されました。
会社から育休取得を働きかけることに加え、上司にあたる管理職などにも育休について研修等を通して伝えていくことが、会社や職場を気にして取得しにくいという環境の改善をより進めることになります。

有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和

 施行日:令和4年4月1日

改正前
改正後
  1. 引き続き雇用された期間が1年以上
  2. 1歳6か月までの間に契約が満了することが明らかでない
  • 1歳6か月までの間に契約が満了することが明らかでない

    ※改正前 ①の要件を撤廃し、②のみに。1年未満の勤務でも対象に。

改定前の育児休業「引き続き雇用された期間が1年以上」については撤廃され、「1歳6か月までの間に契約が満了することが明らかでない」についてのみとなります。これにより、就職や転職して間もない労働者についても育児休業の対象となることができます。​
(引き続き雇用された期間が1年未満の労働者は労使協定の締結により除外が可能)

⑤ 育児休業取得状況の公表義務化

公表内容は、男性の「育児休業等の取得率」または「育児休業等と育児目的休暇の取得率」と省令で定める予定とされています​。

施行日:令和5年4月1日

従業員数1,000人超の企業は、育児休業等の取得の状況を公表することが義務付けられます。

男性の育休取得状況について

厚生労働省が発表した2020年度雇用均等基本調査によると、育児休業取得率は女性が81.6%、男性は12.65%と、男性が初めて取得率1割を超え過去最高となりました。
しかし、男性が実際に取得した育休期間は8割以上が1か月未満となっています。
制度的には他の先進国と比べても遜色がないことから、男性が育休を取得したくないわけではなく、取得したいと言えない環境に要因があると考えられています。

男性育休の取得が進まない要因

内閣府による調査によると、コロナウイルスの影響でテレワークの実施が全国で30.8%、東京では53.5%まで進んでいるため、家事・育児時間にかける時間も感染症拡大前の2019年12月から比べると女性が43.3%増、男性にいたっても36.2%増と大幅に増えています。
しかしながら、男性の育休取得希望は、取得しないが42.2%となっています。

1か月以上の育児休暇を取得しない理由としては、職場に迷惑をかけたくないためが37.2%、職場が男性の育休取得を認めない雰囲気であるためが32.9%と、まだまだ男性が会社に育休をとりたいと言い出す環境には遠いようです。

参考:第3回 新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査 令和3年6月4日 https://www5.cao.go.jp/keizai2/manzoku/pdf/result3_covid.pdf

育休取得による仕事に対する意識変化

厚生労働省「男性の育児休業取得促進等に 関する参考資料集に掲載されたデータより、特徴的な育児休暇取得による従業員の意識変化についてまとめます。

①末子出生時に休暇・休業を取得した男性労働者のうち34.5%が「早く家に帰ることを意識するようになった」、19.0%が「仕事の効率化を考えるようになった」、17.8%が「より多くの休暇を取得するようになった」と回答。

男性育休制度を利用した休暇・休業期間が長いほど、「会社への帰属意識が高まった」「会社に仕事で応えたいと思うようになった」との回答割合が高くなる傾向。
妻のみが育休を取得し男性育休を取得しなかった場合に比べて、「会社への帰属意識が高まった」の割合は約3.5倍。「会社に仕事で応えたいと思うようになった」の割合は約4倍上昇。

③育児休業を取得した男性労働者が育休を使わず有給休暇で対応した場合、有給ではなく「育休」を利用した場合に比べて「会社への帰属意識が高まった」は約6割減。「会社に仕事で応えたいと思うようになった」と回答する割合は約5割減と、育休は社員のエンゲージメントを高める。

参考:厚生労働省「男性の育児休業取得促進等に 関する参考資料集」 https://www.mhlw.go.jp/content/11901000/000727936.pdf

諸外国との比較

他の先進国での男性の育児休業制度について日本と比較してみます。
日本の育休制度は先進諸国と比べても遜色なく、今後の法改正の内容も含めると制度的には充実しています。
男性育休の取得率がなかなか向上しないのは日本の「労働文化」にあると考えられており、厚生労働省も育休を取りづらい雰囲気が職場に根強く残っていると分析しています。

● 日本
・対象となるこの年齢の上限:満1歳まで(最長で満2歳まで)
・取得可能期間:両親それぞれ1年間(最長で2年間)
・休業中の所得保障:両親それぞれ、当初6ヶ月は給付率67%(上限額は月額30万5,721円)【非課税所得扱いのため、実質8割】。7ヶ月以降は給付率50%(上限額は月額22万8,150円)
・父親の育児休業取得促進策:両親が休業する等の要件を満たせば、満1歳2ヶ月まで延長される(パパ・ママ育休プラス)
・父親休暇:なし ※産後8週間以内に育児休業をした場合、再度の育児休業を可能とする特例(パパ休暇)あり
 

● イギリス
・対象となるこの年齢の上限:最長52週間(産前産後休業と連続)
・取得可能期間:産後2週は母親に取得義務残りの50週は両親で分割取得可能
・休業中の所得保障:産後8週間以内に1週間又は2週間の休業が可能(週151.20ポンド又は休業前賃金の9割のうち低い額)【課税所得扱い】
・父親の育児休業取得促進策:なし
・父親休暇:産後8週間以内に1週間又は2週間の休業が可能
 

● ドイツ
・対象となるこの年齢の上限:満3歳まで(うち24ヶ月は満8歳まで繰り延べ可能)
・取得可能期間:両親それぞれ3年間
・休業中の所得保障:なし
・父親の育児休業取得促進策:両親がそれぞれ2ヶ月間以上休業すれば、給付期間が2ヶ月間分延長される
・父親休暇:なし
 

● フランス
・対象となるこの年齢の上限:満3歳まで
・取得可能期間:両親それぞれ1年間(最長で3年間)
・休業中の所得保障:産後4か月以内に11日間の休業が可能(従前賃金額。ただし日額上限89.03ユーロ(約1万1000円))【課税所得扱い】。別途、出生時に3日間の休暇制度(有給)あり
・父親の育児休業取得促進策:対象となる子の年齢上限まで給付を受給するには、両親で交代する必要あり
・父親休暇:産後4か月以内に11日間の休業が可能。出生時に3日間の休暇制度(有給)あり→ 21年7月より計28日間に引き上げ
 

● スウェーデン
・対象となるこの年齢の上限:満4歳まで(うち96日は12歳まで繰り延べ可能)
・取得可能期間:両親あわせて480日(1歳半までは給付の有無にかかわらず休業可)
・休業中の所得保障:母親の出産退院後60日以内に10日間休業が可能(8割支給)【課税所得扱い】
・父親の育児休業取得促進策:父親又は母親の片方のみが休業できる期間が、それぞれ90日間ずつある(クォータ制)
・父親休暇:母親の出産退院後60日以内に10日間休業が可能

参考:厚生労働省「男性の育児休業取得促進等に 関する参考資料集」https://www.mhlw.go.jp/content/11901000/000727936.pdf

国内企業の取り組み例

積水ハウス株式会社

建設業の積水ハウス株式会社では、2019年2月以降に取得期限を迎えた男性従業員は全員1か月以上の育休を取得し、イクメン休業制度における取得率100%を維持しています。2018年9月に「イクメン休業」制度の運用を開始(グループ会社については2019年8月から)し、法定を上回る3年間(子の出生日から3歳の誕生日の前日まで)を取得可能期間として、対象の男性従業員全員に1か月以上の育児休業取得を推進しています。

出典:https://ikumen-project.mhlw.go.jp/pdf/award_company2020.pdf

双日株式会社

双日株式会社では、2017年度は23%だった育休取得率が、2019年度には56%と大幅に上昇しました。2018年に部下の仕事とプライベートを応援し、自身もライフとワークを充実させつつ組織成果を追求する「双日のイクボス宣言」を公表。2019年は毎年実施の部長研修においても、全部長が宣言に賛同。2020年は男性育休推奨について、課長研修のほか社内でも周知を徹底しました。また、社長も「男性社員も堂々と育児休業を取ってください。家庭でも相互の理解と絆を深め自身の視野も広げて下さい」というメッセージを発信。会社のトップ、管理職をはじめとする上司から、男性の育休について環境が整い始めています。

出典:https://ikumen-project.mhlw.go.jp/pdf/award_company2020.pdf

住友生命保険相互会社

住友生命保険相互会社では、男性育休取得率が年々増加し2016年60%、2019年には100%を達成しました。トップからのメッセージ発信や人事部によるメール・電話勧奨に加え、働き方改革を実施。
また、評価制度を変更し、短時間で高い成果を上げた人に高い評価がつく「生産性ポイント」を導入しました。

出典:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000017.000052805.html

丸井グループ

小売り大手の丸井グループでは、2020年度、社員約5千人のうち対象の男性社員45人全員が育休を取得し、男性の育休取得率は3年連続で100%となりました。
子どもが生まれる男性社員に対する上司の声かけが徹底されており、部下から報告を上司が受けたら『おめでとう、育休はいつ取るの?』と聞くそうです。
上司からの育休取得を促す声掛けを徹底したことが、男性の育休取得率を100%にした一番の理由のようです。

出典:https://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000218308.html

すし銚子丸

大手回転寿司チェーンのすし銚子丸では、堀地元(ほりちはじめ)常務が2020年9月から100時間の育児休業を取得し、経営幹部が自ら働き方改革の必要性を強く発信することで、従業員が働き方改革に取り組みやすい環境整備が進みました。

出典:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000017.000052805.html

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選択的週休3日制とは

選択的週休3日制とは

政府は、2021年6月に閣議決定した経済財政運営の指針「骨太の方針」に、「選択的週休3日制度」の導入を企業に促し普及を図ると明記しました。
これにより育児・介護と仕事の両立、ボランティア活動、リカレント教育による能力向上にも期待が集まっています。

選択的週休3日制とは

選択的週休3日制

選択的週休3日制とは、希望者が週に3日間休むことができる働き方のことをいいます。
選択的のため、全社員が統一して週休3日とするのではなく、あくまで希望者が週休3日とする制度です。

原則週休2日の会社でも選択肢として週休3日が増えるため、自身のライフスタイルに合わせて働き方を選択することが可能になります。

週休3日制になることによる労働時間と給与の変化について、下記3パターンが想定されます。パターンにより、従業員へ影響度合いが異なります。

週休3日制に伴う 労働時間と給与の変化
  1. 労働時間:減 / 給与:減
    労働時間労働時間を減らし、給与も減少。週休3日を選択した場合は、勤務日が週5日から4日に減る分、給与も減る。
  2. 労働時間:変化無し / 給与:変化無し(労働日数:減)
    労働時間も給与もそのままで、別日の労働時間を増やすことで総労働時間を減らさず給与は変えずに休日を増やす。
  3. 労働時間:減 / 給与:変化無し
    労働時間は減らし、給与はそのまま。その分生産性を挙げることが必要。

週休3日制の導入が検討される背景

日本では1947年に労働基準法が初めて制定され、労働時間は「1日8時間、週48時間」つまり「週休1日」からスタートし、多くの企業が日曜日を休日としていました。
その後、1987年に法定労働時間を「週48時間」から「週40時間」に減らすことになり、段階的に「週休2日」とする企業が増え、現在では多くの企業が週休2日制度もしくは完全週休2日制度を設けています。
※週休2日とは、1カ月の間に2日休みの週が少なくとも一度あり、それ以外の週は1日以上休みがあること。完全週休2日とは、年間を通じて毎週2日間休みがあること。
 
では、なぜこのタイミングで「選択的週休3日制」が必要なのでしょうか。

・労働力の縮小

総務省が発表する最新の2020年の生産年齢人口は6868万人と過去最低を更新。世界で最も進む超少子高齢化により、日本の生産年齢人口は2050年には5,275万人まで減少すると予想されており、今後益々労働力不足が深刻になります。
その労働力不足を補うために、多様な人材を企業間でシェアしビジネス力の低下を防ぐ必要性も言われており、週休3日になることで、その環境の構築に繋がることが期待されます。

・ワークライフバランス

女性の労働参加率の上昇に伴う共働き世帯の増加。育児や高齢の両親の介護などと仕事を両立させるために、柔軟な働き方や多様な働き方を自分で選択できる必要性が高まっており、休日が増えることでそうしたことに対する対応がよりしやすくなると考えられています。

・リカレント教育による能力向上

リカレント教育とは、義務教育や大学で学んだ後に必要に応じて「就労と教育」を繰り返すことをいい、社会人の学び直しとも呼ばれ、欧米では一般に広く受け入れられています。
令和3年4月に行われた第4回経済財政諮問会議でも、人材への投資(ヒューマン・ニューディール)が議題に挙げられ、成長性の高い分野への人材の円滑な移動の促進を進めるうえで、リカレント教育の強化が重要と言われています。休日が増えることで、週末を使った大学院で学び直す等、リカレント教育の普及の後押しが期待されます。

参考:内閣府 令和3年第4回経済財政諮問会議 https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2021/0413/shiryo_01-1.pdf

メリット

・家事や育児・介護との両立

家族と過ごす時間を増やすことができ、今までより余裕をもって家事や育児・介護に時間を充てることができます。
また政府が推し進める男性の育児参加にもつながることが期待されます。
休日が1日増えることで、これまでの週休2日であれば仕事を辞めざるを得なかった人も仕事を続けるという選択をする人が増えます。
休日が増えることで、育児や介護など、自分のライフスタイルに合わせた多様な働き方ができるようになります。

・イノベーションの促進

休日が1日増えることにより、業務以外のことに時間を充てることができる。
スキルアップを望む従業員はセミナーや勉強会等に参加し新たな知識を吸収してくるかもしれません。また、休日にしっかりと休みリフレッシュして仕事に取り組むことで新しいアイデアが生まれ、イノベーションに促進される可能性があります。

・モチベーションアップ、生産性の向上

休日が1日増え週3日の休日でリフレッシュができることで、仕事に対するモチベーションが高まります。
また、限られた時間内でパフォーマンスを発揮することが必要となるため、集中して効率よく仕事を進める意識が芽生え、生産性の向上につながります。

選択式週休3日制導入における現状と課題

・そもそも完全週休2日制の企業が1割以下

厚生労働省の調査によると、週休3日を含めて、完全週休2日制より実質的に休日が多い企業は、8.3%と1割以下にとどまっています。
週休1日制又は週休1日半制が9.2%、完全週休2日制より実質的に少ない制度が37.5%となっており、企業規模(従業員数)が小さい企業ほどその割合が大きくなります。
まだ完全週休2日制が実現できていない企業が46.7%と、実態としては週休3日制の導入には程遠い状況です。

参考:厚生労働省 令和2年就労条件総合調査 結果の概況 https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/jikan/syurou/20/dl/gaikyou.pdf

・保育園の入園問題

多くの自治体では保育園の入園の際には点数制を採用しており、点数の高い子どもを優先的に入園させる仕組みとなっています。点数の計算には、両親の労働日数や時間が主な基準となっており日数や時間が多いほど点数が高い計算となります。
その為、待機児童のいる自治体においては、親が週休3日制となった場合点数が減ってしまい、保育園に入れなくなる可能性があります。
共働き家庭が育児をしながら仕事を続けていくためには、保育園に入園できるかどうかは大変重要です。

・給与の減少

上記に、労働時間と給与の変化について3パターンを記載しましたが、パターンにより従業員へ影響度合いが異なり、給与が減る従業員は副業や兼業を行うことが想定されます。
これでは、労働時間は週休2日より逆に増えてしまう可能性があり、そもそも週休3日にするメリットがなくなってしまいます。
また、給与が減ることで年金等の社会保険給付に影響が出ます。
給与が減ることで毎月支払う保険料も減りますが、その分将来受け取る年金が減少することになります。

取り組み企業事例

・株式会社ファーストリテイリング

ユニクロを運営するファーストリテイリングでは、「1日10時間×土日を含む週4日の勤務」を導入。1週間での労働時間は40時間となるため、通常の週休2日制フルタイム勤務(1日8時間×5日=週40時間)と同額の給与を支給、休みの日は平日に週3日としている。

・日本マイクロソフト株式会社

日本マイクロソフトでは、2019年夏に「週勤4日&週休3日」トライアルを軸とした「ワークライフチョイス」という自社プロジェクトを実施。週休3日として8月の全ての金曜日を休業日にし、特別有給休暇を取得。
労働時間を減らして給料維持をするために、会議時間を30分とすることやMicrosoft Teamsの利用を徹底し会議をせずにチャットにすることなどで、効率があがり生産性が向上した。

・ヤフー株式会社

ヤフーでは、福利厚生の一つとして、育児や介護などサポートが必要な家族がいる従業員を対象に土日の休日に加え、1週あたり1日の休暇(無給)を追加できる「えらべる勤務制度」を導入。
この制度の特徴として、月単位で働く曜日の変更や週休2日制への復帰を行える為、例えば子供が夏休みの間だけ週休3日を選択することもでき、従業員の家庭事情に合わせた柔軟な働き方ができる。

・株式会社みずほフィナンシャルグループ

みずほフィナンシャルグループでは、従業員本人の希望により週休3日制、または週休4日制を導入。
利用にあたっては土日に加え毎週決まった曜日を休みとし、給与は週休3日制の場合は従来の8割、週休4日制の場合は従来の6割とする。

・600株式会社

「無人コンビニサービス」を運営する600は、2017年の創業時から土日の他に水曜日を休みとした全員週休3日制を導入。水曜日を休みとすることで、「月曜日と火曜日」「木曜日と金曜日」と2日間単位で仕事のスケジュールが立てられ、何等かのトラブルが起きた時も2日間の中で優先順位を立て直し、仕事をスムーズに進められるという。
同社の働き方の工夫として、3つのポイントがある。
一つ目は、優先順位を明確にすること。立場に関係なくCEOからインターン生まで全員が優先順位を決めるための議論に参加し、OKRに対する目線を揃え徹底的に無駄を削っている。
二つ目は、意思決定のプロセスが明確であること。あらゆることに対して「意思決定者」と「承認者」を決めた。
三つ目は、エンプロイー・エクスペリエンス(EX)。従業員の生産性と働き方・満足度の最大化を担っているEXという部門を設け、執行役員が承認しないと水曜日には働けないルールや、必要に応じ容易に代休を取ったりできる仕組みの構築をしている。このような工夫により、業務時間内で最大限のパフォーマンスを上げている。

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みんなの前で叱ることは悪なのか?|注意や指導でもNG?

みんなの前で叱ることは悪なのか?

「メンバーの自尊心を傷つけるので、みんなの前で絶対に叱ってはいけない。叱るときは個別に」と研修等でよく耳にすると思います。
一方で、実際に実行してみると、「叱るではなく指摘や注意、指導といった日常でよく使うものまで周囲に人がいる場ではだめなのか?」と疑問に思うケースも多いようです。
あらゆる場面で個別対応をマネジャーが実践すると、メンバーの間に不満が溜まったり、リーダーに対する信頼を損ねることに繋がりかねず、逆にチームのコンディションを悪化させてしまうことがあります。
人前で「叱る」ことはデメリットが大きく、やめるべきというのは確かにその通りなのですが、通常の指導や注意においていつも当てはまるという訳ではありません。
あまり多くはありませんが、「人前で注意や指導をする」方がむしろ良いケースがあります。
みんなの前で注意や指導しないことでチームに悪影響を与えることもあるのです。
今回は、みんなの前で注意や指導すべき事象と、その理由について解説します。

(参考)▶マネジメントにおける叱ると指導の使い分け|叱るはめったに使わない

みんなの前で注意や指導することによるデメリット

人前で注意や指導することのマイナスはイメージしやすいと思います。
叱るというような厳しいものでなくとも、場合によっては本人の自尊心を傷つけてしまう可能性があることです。
また、本人の反発心を生んだり、ストレスにも繋がる恐れがあります。

たまに周囲へ檄を飛ばすことを目的に、人前で叱責や怒りをあらわにしたり、トラブル時の回避方法として部下を客前でこっぴどく叱るといった形で、意図的に怒りや叱責を使う方いますが、こうしたマネジメント手法は時代遅れの自己満足であり、すぐにやめるべきです。もっと良い方法がたくさんあります。

今はだいぶ変わりましたが、日本には人前での怒りや叱責も許容されているような文化・空気があります。しかし、これは世界で見るとかなり特殊です。
欧米ではそうした行為はパワハラになりますし、叱る側が自分をコントロールできない未熟な人間だと評価を下げることになります。
東南アジア圏ではメンツを非常に重視するため、人前で叱責することはタブーとされており、叱責しようものなら恨みを買います。周囲のメンバーからも総スカンを食らうでしょう。
国による違いはあれど、人前での叱責や怒りを良しとしない方向に日本も進んでいることは確かであり、怒りや叱責を利用したマネジメントは通用しないと考えるべきです。

みんなの前で注意、指導することで起こるマイナス面
  • 自尊心を傷つける
  • 反発心を生む
  • 過度なストレスになる
  • チームのメンバーが失敗を恐れ挑戦しなくなる

みんなの前でも指導すべきケース① 
会社やチームの方針、価値観に背くような言動

では、周りにチームメンバーがいる環境で「注意」や「指導」しないことのマイナスはないのでしょうか?

みんなの前で注意、指導しないことで起こるマイナス面
  • 価値観や重視することが、本当は重要ではないという誤ったメッセージを与える
  • メンバー間で言いたいけど言えない不満が蓄積し、チーム内の関係性が悪くなる

チームをマネジメントする上で、あなたは上司として様々な場面で、会社の方針やチームの方針、重視する価値観、許されない行動や態度、そうしたチームの構成員が共通して持っておかなければならないことを伝えてきたと思います。
それは発言の一貫性だけでなく、一貫した態度でも示す必要があります。そうでなければ、チームのメンバーはあなたの発言は口だけだと思い、それに則った姿勢や行動を取らなくなります。

例えば顧客満足度No1を掲げており、顧客には常に「様」をつけて呼ぶことをルールにしているチームがあるとします。そこで、ある顧客を呼び捨てで呼び、顧客へのリスペクトがない発言をしているメンバーをあなたが見かけた場合、周りに他のメンバーがいようと、あなたは即その場で注意しなければなりません(当人に配慮しながら注意していることが周囲にわかるように、その場ですぐに個室に呼び出すでもOKです)。
チームの方針や価値観に背く行動をしたメンバーがいた際に、それを当人に配慮して「後で」個別に指摘をすると、周囲のメンバーにはその行為が見えません。
メンバーにとって見えていないということは、メンバーから見ればやっていないことと同じです。
これは、マネジャーが不適切な言動を黙認したと見られてしまい、一貫した態度から離れてしまいます。

結果、あなたはきちんと当人に指導しているのだけれど、他のメンバーからは、チームの方針や価値観は口だけなんだとなってしまい、リーダーとしてのあなたの発言は力を失います。
チームに共通する大切なことは、すぐにその場で注意、指導しなければなりません。
それは、周囲に他のメンバーがいてもまったく問題なく、一貫した態度を示すために必要なことなのです。

みんなの前で指導すべきケース② 
誰かがチームに迷惑をかけている事象

上司はメンバーに対して指摘したり注意したりできますが、メンバー同士はそうもいきません。周囲に迷惑な行為をしている人がいて嫌だと思っても、直接本人に言いづらいのです。注意することによって、関係性が悪化することを恐れたり、面倒は避けたいと思い我慢してしまいます。
すると、そうした不満が積み重なり、次第にメンバー同士の関係性がギクシャクしてきてしまいます。一度関係性が悪化してしまうと、それを元通りに戻すのは大変です。
多くの場合、目に見える大きな出来事がきっかけで関係性が悪くなるよりも、日々の小さな軋轢やズレが積み重なり、チーム内の人間関係は徐々に悪化していきます。

例えば、咳をしているのに会社で仕事をしているメンバーがいるとします。本人はどうしてもやりたい仕事があり、頑張ろうと思ってその場にいます。
ですが、周囲のメンバーからすれば、迷惑以外の何ものでもありません。風邪を移されたらたまったものではありません。個の視点でなく、チーム全体の視点で見れば、最低でもリモートワークさせることに異論は無いでしょう。

こうしたケースでは、メンバーは体調不良で会社に来ているメンバーに大丈夫?帰ったら?とまでは言えるかもしれませんが、迷惑だから帰れとは言えません。
「いえ、大丈夫なのでマスクをします」「ここまでやってから帰ります」と答えられたらメンバーにはもう手の打ちようが無いでしょう。
このような場合は、リーダーが当人にどうしてダメなのかをきちんと伝え、「帰りなさい」と注意すべきです。周りが言いたくても言えない不満を、リーダーが代弁する必要があるのです。
そうすることによって、メンバーから当人に対する不満や怒りはなくなります。
こっぴどく叱られてている姿を見て同情心が湧き、不満が心配に変わり、体調不良で出社していた当人をフォローしだすかもしれません。それでいいのです。
もし、リーダーが注意しなければ、メンバーは不満を抱えたまま仕事をすることになります。言えない不満は大きくなります。そして、注意しないリーダーに対しても不満の矛先が向いてしまうことになります。

みんなの前で注意や指導することがすべて悪ではない

いかがでしたでしょうか?
叱責は使える場面がとても少なく、めったに使わないこともあり、人前で叱らない方がよいことは感覚的に理解できると思います。
実態として、日常的に使われる指導や注意は自席で行われることが普通でしょう。毎回個別に対応していては、オフィス環境にもよりますが、マネジメント業務が回りません。
そうした中で、叱責まではいかなくとも厳しめの注意や指導を行う際だけ、場所を移すといった配慮をされている方もいると思います。

今後、どうすべきか迷われる場面があれば、ぜひ今回の基準を参考に判断してみてください。
人前で注意や指導した方が良い場面は、先に挙げたように極めて限定的です。ですが、時にそれはとても重要になります。

本人を傷つけたり、失敗やミスを恐れさせたりすることがないようにリーダーは注意すべきです。
しかし、言うべき時にはっきりと言うことはリーダーシップを発揮するために必要になります。
うまく使い分けていきましょう。

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