マネジメントできる適正なチーム人数は何人か?|スパン・オブ・コントロール

マネジャーのマネジメント人数はいったい何人が適正なのでしょうか?

上限のようなものを設けている企業もあれば、部署によってバラバラといった企業もあります。
よくサーベイ結果を見て、あの組織長はマネジメント能力が低いみたいだ、と言われる方がいらっしゃいますが、必ずしもそうとは言えません。
なぜなら、マネジメント力が原因ではなく、マネジメント人数が多すぎることが原因の可能性もあるからです。
1社だけの結果を見ると分かりませんが、複数の企業の結果を分析している当社のような立場からすると、マネジメント人数の多さとサーベイ結果は反比例する傾向があることが分かっています。
つまり、マネジメント人数が多くなれば、サーベイの結果は悪くなるということです。
マネジャー、社員の双方が活き活きと働くためには、マネジャーのマネジメント力だけでなく、適切な人数でチームを組成しマネジメントすることが欠かせません。

今回は、マネジャーのマネジメント人数の適正値について、スパン・オブ・コントロールという言葉とともに解説します。

スパン・オブ・コントロールとは|チームの適正人数は?

スパン・オブ・コントロール

スパン・オブ・コントロールとは、経営学で使われる用語で、ひとりのマネジャーが直接管理している部下の人数や、業務の領域(範囲)のことです。
元は軍の編成・組織構成の際の考え方で、その後企業経営にも適用されるようになりました。

一般的に、スパン・オブ・コントロール(1人の上司が直接管理できる適正人数)は5~7人程度とされます。

歴史上のさまざまな文明でも、ひとつの組織単位は10名以下で構成されていたと言われています。
実際に、マネトレ利用企業においても、この人数を超えるとサーベイスコアが悪くなるという傾向が分かっています。
おおよそ5~7名くらいの人数を目安にチームをつくるべきですし、もし人数が倍以上であれば、マネジャーにとって非常にマネジメントが難しい環境下での、業務を任せていることになります。

もちろん、スパン・オブ・コントロールは具体的な状況により異なります。
例えば、部下それぞれが異なる業務を行っている場合や、上司の判断、承認が業務を進める上で毎回必要となる場合、業務がマニュアル化されており皆が同じ仕事をしている場合とでは、マネジャーの部下一人あたりのマネジメントコストも異なり、管理できる人数が変わってきます。

スパン・オブ・コントロールに影響を与える要因としては、部下の業務内容や業務レベル、権限委譲が可能かどうか、業務管理手法の効率化度合い、教育・トレーニングによる能力向上、社内制度やシステムなどがあります。

企業におけるスパン・オブ・コントロールの事例

Amazon

Amazonの創業者で先日CEOを退任したジェフ・ベゾス氏が「2枚のピザ理論(チームの最適な人数は2枚のピザを分け合える程度(5~8人)である)」を提唱しています。

Google

以前ご紹介したGoogleが実施しているマネジャーの優れている理由を特定するため分析では、影響度の高い要素とはされませんでしたが、人数の少ない(10人未満の)チームの方が人数の多いチームよりも成功しやすいという結果があります。
(参考)▶ Googleに学ぶマネジャーは本当に組織に必要か?

マネジメン人数が多すぎることの悪影響|スパン・オブ・コントロールを超えるとどうなるか?

マネジメントする人数が多すぎ、スパン・オブ・コントロールを超えてしまった組織では、メンバーや組織全体にも悪影響が生じ、チームとして成果を上げることが難しくなります。

例えば、マネジャーとメンバーひとりひとりのコミュニケーション量が減ってしまい、意思疎通に問題が生じたり、すれ違いが発生しやすくなります。
また、メンバーのフォローや教育が疎かになり、メンバーの成長が遅くなるといったことも考えられます。特に、メンバーを多く抱えているマネジャーは、「コーチングの方が適した場面がありそうしたいけれど、時間がなくてとてもできない」という悲鳴のような声がマネジャーからマネトレコーチに届くこともあります。
結果的に、マネジャーへの信頼は低下し、組織の統制が取れず、不要な軋轢やモチベーション低下が起こり、組織全体のチームワークや生産性が低下していきます。

特に、マネジャーが、プレイングで業務にかける時間を多くせざるを得ない状況や、新しくマネジャーに上がった場合は、スパン・オブ・コントロールに特に注意を払いましょう。
マネジャー経験が浅い、マネジメント能力が低い人にスパン・オブ・コントロールを超えたチームを任せると、マネジャー本人の自信喪失とメンバーの不満が同時発生し、組織崩壊してしまうことがあります。

スパン・オブ・コントロールを超えた時の対処法|マネジメントできる人数を増やすには

・ 部下の育成と権限委譲

マネジャーが持っている意思決定権を部下に委譲することで、管理者の業務負担は減りスパン・オブ・コントロールが拡大します。
この権限委譲を進めるには部下がふさわしい判断力を持っていなくてはならず、管理職の権限の一部を引き受けられる部下の育成が必要となります。 部下への権限委譲が進んでいれば、管理職からの指示や判断を待つことなく自己判断で業務遂行が可能となり、さらにスパン・オブ・コントロールの拡大に繋がります。

・ メンバー間の連携

メンバー同士の協力や助け合いが積極的に行われている組織では、管理者への負担が減り、スパン・オブ・コントロールは拡大します。
メンバー間の連携を強化するためには、お互いの目標や業務を共有することが重要です。
「誰が何をやっているのかを把握している状態」ができていれば、先輩が積極的に後輩をサポートしたり、メンバー間で業務を分担し合う、共通化できる部分はまとめてしまう、といったお互いをフォローし合う協力行動が自発的に行われやすくなります。
その結果、マネジャーが直接マネジメントする負荷を減らすことができます。

・ 業務の標準化

業務の手順や方法が定まっていないと部下が上司に指示を仰ぐ頻度が高まり、手間や時間をとられて、マネジャーが本来やるべき管理業務に割ける時間が減ってしまいます。
業務の標準化を進め、誰もが同じ方法で同じクオリティで業務を行えるようになれば、管理職が相談や指示出す頻度を減らすことに繋がり、マネジメント負荷を軽減できます。

・ 情報共有の効率化

MTGや1on1など対面での情報共有も大切ですが、ITツール(チャットツールやタスク管理ツール、SFA、CRM、業績管理システムなど)の活用により、WEB上でのリアルタイムな状態把握、報告、相談ができるようになれば、時間効率を上げることができ、マネジメント負荷を軽減できます。


いかがでしたでしょうか?
新たにリーダーを立ててチームを組成したり、マネジメントがうまくいっていないチームがある際は、スパン・オブ・コントロール(マネジメント人数)についても気にしてみてください。
本人の能力ややる気の問題ではなく、それを超えた環境による影響かもしれません。
現在スパン・オブ・コントロールを超えた人数を抱えているマネジャーの方は、ぜひスパン・オブ・コントロールを超えた時の対処法を実践してみてください。

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【超実用的】部下を成長させる指導法|パワハラにならない指導の仕方

部下を成長せさせる指導方法

先日、労災認定されたトヨタ自動車社員のパワハラ自殺についてのニュースが大きく報じられました。
今もなお多くの企業でパワハラが横行しているかといえばそうではなく、怒鳴ったり、人間性を否定する叱り方をする管理職は昔と比べ大きく減っています。
実際に、マネトレ利用企業において、パワハラが疑われるような管理職は、まったくいないわけではありませんが、稀な存在となっています。
※対象がマネジメント育成に力を入れている企業であることから、一定のバイアスがある可能性があります。

各企業で、パワハラなどのハラスメントを研修で取り上げていることや、パワハラ上司が容認されない企業風土、社員の認識、社会に変わってきていることが背景にあるのだと思います。
一方で、指導するにもパワハラと言われるのが怖い、どのようなコミュニケーションを取れば相手にちゃんと伝わるか分からない、といった部下への指導法に関する悩みや、モヤモヤを抱える管理職が増えているようです。何か良い指導の方法はないか?時間がなくてコーチングなんてやってられない、といった相談をコーチに多数いただきます。

今回は、パワハラにならない効果的な指導法の一つを紹介します。時間がない場合の短時間での指導の仕方についても紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。

「叱る」はめったに使わない、日常的に使って良いのは「指導」

大前提、「叱る」というニュアンスの行為を日常的に使ってはいけません。
というのも、叱るという行為は受け手にとって大きなストレスとなります。多用すると叱られた本人の頭は混乱してしまい、言われたことを受け止めることができなくなってしまいます。
そのため、現状を修正する、同じ過ちをしない、といった本来の叱る目的から離れてしまうので使う意味がありません。

叱るという行為は、信頼関係がないと使えない

叱るという行為は、信頼を消費する行為です。
叱ることで、多かれ少なかれ、部下との関係性はすり減ります。
つまり、「叱る」を多用するとそのうち積み重ねた信頼は無くなってしまいます。信頼関係が無く行う「叱る」はパワハラと受け取られやすいです。
また、頻繁に「叱る」行為は、叱られる本人だけでなく、周囲からもパワハラと受け取られます。絶対にやめましょう。

行為者がどう思っているのかは関係なく、相手が不快な感情を抱けばハラスメントになる

「叱る」はそもそも信頼関係がない段階では使えない行為です。
信頼関係がない人から叱られた場合、ストレスである「叱る」に対し正面から向き合おうとはしないため相手に響きません。叱られた側からするとストレス以外のなにものでもなく、反発心や心理的負荷を与えます。
基本的に日常的に使うのは後述する「指導」を用いましょう。

「叱る」と「指導」の使い分け

上司の指示は「指示待ち人間」をつくる

部下に任せてはできないからと、何でも自分で判断して指示する上司もいます。部下の意見は多少の違いであってもなんでも否定して自分の「指示」を伝える。このようなコミュニケーションで、部下に考えろというのは無理があります。部下にとっては自分で考えることは全て徒労に終わるからです。

コミュニケーションの矢印は上司➝部下の一方通行しかなくなり、いつしかそれが固定化されます。
つまり、上司を支援する、上司に対し助言するといった、部下から上司への矢印の存在そのものがないという状況が固定化されるのです。
また、頑張って考えてもすべて上司の意見に最終的に変わるなら、部下にとって自分で考えることは無駄ですし、上司の指示をあおいだ方が合理的です。
その結果、指示をひらすら待つ部下が量産されます。

指示の多用によるマイナスは、指示待ち人間を作るだけではありません。
毎回上司による修正が入るので、部下としてはやり直しが頻発します。すると、ビジネスのスピードは遅くなり、進まないのに時間はかかるのでメンバーのワークライフバランスは悪化します。
緊急時など、指示が有効な場面もありますが、日常的には「指示」ではなく「指導」を用いましょう。

効果的な指導を行なうステップとポイント

指導とは、問いで考えさ、部下を導く行為です。
部下に問いかけることで、本人の内省を促し、改善のために必要なことを部下本人に考えさせます。
単純な指摘や指示と異なり、本人の学びや成長に繋がりやすいとされます。

指導を行なう際のステップとポイント

① 「問い」を投げかける

問いが先にあり、「自分はこうしてほしい」「それはだめだ」「僕はこう思う」といった自分の考えは後にあります。
自分の意見や考えを先出しせず、問いかけを通じて本人に考えさせましょう。
どうしたらもっと良くできたと思う?といった未来形の問いかけの方が、部下の心理的な負荷は小さくなります。失敗を詰めているような形にならないように注意しましょう。

<問いかけの例>
なんでそうしたの?
どうしたらもっと良くできると思う?
なんでそれで良いと思ったの?
なんでそれをしなかったの?
どういうロジックでそう判断したの?など

なぜ改善した方が良いのか、どうすべきか、といったことは、本人が問いかけの中で気付けるならそれで良く、追認してやるだけで問題ありません。上司から必ずしもこうした方が良いと伝える必要はありません。
また、上司が考えていたことと同じでなかったとしても、前に進みそうなら部下本人の判断を承認することも重要です。

② 「問い」の時間のコントロール

問いが難しいのは、相手が答えられない可能性も多くある点です
問いを与えて考えさせる行為は、その問題の大小や重要度、前提知識を知っていることが判断の比重として大きい事項かなどによって、部下が何らかの答えを出せるのかが変わってきます。

本人のキャリアや価値観といったパーソナルな話をする際は、本人が情報を全て持っているので、待っていれば何かしら出てきます。
しかし、業務に関することは、部下が持っている知識や経験、状況認識等が、複雑に絡み合っています。
そのため、出てこない時はいくら待っても出てきません。

何も出てこない場合は、より具体的な考えるヒントを与えたり、切り上げる時間をコントロールする必要があります。
研修でコーチングを学んだ方がやりがちなのが、業務に関する指導での長過ぎる問いかけです。
長すぎる間は、受け手のストレスに変わってしまいます。考える時間が長過ぎると部下は考えている状態から、ストレスを感じている状態に変わってしまい、ストレスが大きくなると部下の頭に入らなくなり指導の効果が激減してしまいます。
問いの時間コントロールは非常に大切です。難しそうだなと思ったら、ヒントを与えたり、途中で切り上げてティーチングに移行しましょう。

③指導の目的を忘れない(感情をコントロールする)

管理職の中には、感情のコントロールが苦手で、「叱る」や「指導」の本来の「目的」を行為の最中に忘れがちになる方が一定数います。
皆さんも、指導している最中にヒートアップしてしまい、なんのために指導をしているかを忘れ、管理職が感情的になっている光景を見かけたことはないでしょうか。
叱るや指導の研修は世の中に多くあり、受けてもなかなか実践できないのは、行為の最中に目的をいつの間にか忘れてしまい、イライラが先にきてしまうことも一因です。イライラをぶつければ、部下には多大なストレスがかかり、指導をきちんと受け取れません。
現状を修正する、同じ過ちをしない、といった本来の目的を忘れずに、感情をコントロールすることを意識してください。

指導のショートバージョン|時間がない時の指導法

「 問いで導く」に固執しない

問いで導く指導は、ティーチングより時間がかかります。
忙しい業務の中で全ての指導をそのような方法でやる余裕がない管理職がほとんどでしょう。
その場合は、「問いで導く」方法に固執しなくても問題ありません。
コーチング研修を受け感銘を受け、やたらとコーチングを多用する方がいらっしゃいますが、その結果時間がなくなり業務フォローやフィードバックがおろそかになったり、適切な指示が受けられないとメンバーの不満に繋がるケースがあります。これでは意味がありません。
反対に、時間がないからといって、毎回「こうしろ、ああしろ」といった指示ばかりも適切ではありません。
指示ばかりでは部下は自分で考えることをしなくなり、成長しません。結果、いつまでも人材が育たずマネジャーの忙しい状況も一向に改善されません。

時間がない時に使える指導のショートバージョンは、「こうした方がもっと良かったと思うのだけど、それはなぜだと思う?」と、上司としての考えを指し示して、それはなぜかを考えさせる?という方法です。
こうすると、前述の「どうしたら良かったか?」を考えさせる方法よりも、短い時間で考えさせることができます。
この方法は、部下の能力がその問題に対して追いついておらず答えを考えるのが難しい場合や、問いを投げかけても何も出てこなかった場合にも有効です。

さらに時間が無い場合は、「部下が考える時間」を一人で考えてもらいましょう。
もちろん部下が考えている際に一緒に付き合えることがベストですが、具体的なヒントを与えるなどして、ある程度答えに辿り着けそうな状態であるなら、一旦部下自身で考えてもらうという形でも構いません。
ただし、その際は「考えがまとまったらいつでも声をかけて」と伝え、もし部下からの声がけが無くても、必ず覚えておいて「例の件はどう?」と自ら部下に聞くようにしましょう。

また、すぐに対応が必要だけれど今時間が取れないといった事象の場合は、一旦ティーチングで指示し、後日部下との1on1などでそれを議題に取り上げ、「どうしてそういった判断をしたのだと思う?」と問いかけを行いましょう。時間をズラしての指導でも十分意味はあります。
部下が判断の理由、プロセスを考え理解し、次回自分で判断できるように導いてみてください。

新人や初めて担当する仕事のケースなど、部下の状態によっては、問いで導くより、ティーチングの方が適しているケースも多々あります。
実際のマネジメントにおいては、教科書通りのスタンダードな問いで導く方法に固執する必要はありません。ショートバージョンも組み合わせ、最大限の「指導」を活用していきましょう。

コーチングとティーチングの使い分け

指導についてのよくある勘違い|期待を毎回最後に伝える必要はない

「指導したら、最後に期待を伝えるをセットで」というような指導法もよく目にしますが、期待を毎回最後に伝える必要はありません。現実の運用で、毎回期待を伝えるのはそもそも無理があるでしょう。
むしろ、修正して成果が出た際に覚えていて褒めてあげることの方が大事です。この点は忘れず実行しましょう。

期待がないと動けないのはマイナスでもあります。こうした方がもっと良いよね、楽だよね、その方が自分の成長やポジティブな結果に繋がるよね、と部下が思えていれば、上司の期待を毎回伝える必要はありません。
期待は一時的な効果で、内発的動機づけの方が大切です。
また、期待は嬉しい人もいれば、実はストレスを感じる人もいます。期待の乱用は期待そのものの価値を下げてしまいます。内発的動機づけに勝るものはありません。
「指導」の最後に、部下が前向きに修正に向き合える状態に導くには、部下の価値観やキャリアを理解していることがとても役立ちます。

価値観とは|メンバーのやる気を引き出す価値観理解
キャリアとは|部下のキャリアを理解し信頼関係を築く方法


いかがでしたでしょうか?

今回は問いで導く指導方法を解説しました。
ハラスメントになりかねない感情的な叱るや指導をしなくても、部下を成長に導くことはできます。
むしろ、昔ながらの叱るが多いことや、パワーマネジメントな指導は今では逆効果です。
今回ご紹介した方法は、 特別なスキルは必要なく、意識次第ですぐに実行が可能ですので、ぜひ「問いで導く」指導法を試してみてください。

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明日から使える目標設定のポイント|計画実行度を高め、振り返りの精度を高める「SMART」

半期や四半期などスパンは違えど、みなさん「目標設定」を行っていると思います。
マネジャーになると、チーム目標や評価軸とメンバーの目標を整合させる、振り返りができるように目標達成の基準を明確化する、達成のためにどんなアクションが必要か具体化する、といったメンバー個人の目標設定に対しても、アドバイスやフィードバックしていく必要があります。

メンバーがきちんとした目標設定ができないケースはイメージがつくと思いますが、実はマネジャーも自分の目標設定をしっかりできていない人が意外と多いのです。結果、メンバーにきちんとした目標の立て方のアドバイスができず、評価の納得度を低下させてしまっているケースをよく見ます。
目標設定にはコツがあります。今回は、具体的な事例も交えながら、明日からすぐに使える目標設定のポイントを解説します。

曖昧な目標設定がもたらす悪影響

目標設定は、最終的な目的を達成するために、当該期間で到達を目指すゴールや方針、行動などを具体的に設定することです。
目標はチームや個人が目指す方向性や距離を明確にし、行動の指針になる、評価の判断軸になる、といった意義があります。

自身やメンバーの目標設定はマネジメントにおいて必須のスキルであり、きちんと目標設定が行えていない場合は、いくつかの悪影響をもたらします。

すぐに実行に移せない

例えば、サーベイで信頼関係が低いという結果になったことを受け、「メンバーとの信頼関係を築く」という目標設定をした場合はどうでしょうか。
これは目標ではなく、単に課題を言い換えただけです。「信頼関係ってどうすれば築ける?」「信頼関係を築くために、具体的に何をする?」と問いを投げかけてみてください。深く考えられておらず、答えに窮することがほとんどと思います。

設定した目標が、抽象的で曖昧だったり、現実とかけ離れた希望や願望になっている場合、目標設定はしたものの行動に移せない状態になってしまいます。どんな行動をするのか明確になっていない目標設定は、その時点で達成できる可能性が極めて低いです。
何が原因と考え、解決するためにどんなアクションが必要なのか、具体的に内省した上で行動計画まで設定するようにしましょう。

きちんと振り返りができない(改善PDCAを回せない)

『定義できないものは、管理できない。管理できないものは、測定できない。測定できないものは、改善できない。』
これは、改善の祖と呼ばれPDCAサイクルを提唱したウィリアム・エドワーズ・デミングの言葉です。
計測することで可視化され、マネジメントが可能になる。具体的に数値として見えるから、改善の目標を設定できる、という訳です。
シックス・シグマという手法で業務プロセスの改善を行なうことで有名な米GE(ゼネラル・エレクトリック)では、「測定できないものは、改善できない」という考えが、製造部門からホワイトカラーまで徹底されています。

設定した目標が、具体的ではない場合や、定量的に測れない場合は、きちんとした振り返りができません。
なぜなら、具体的でなければ何をすべきなのか分からないため、行動が曖昧、または行動ができないからです。そんな状態では、行動を積み重ねて目標達成に近づくことは難しいでしょう。
また、曖昧な目標では、そもそも達成したのかどうかの判断を客観的に行なうことはできません。曖昧であるがゆえに、人によって捉え方が変わってしまいます。

改善の始まりは、目標と現状のギャップ(=課題)を把握することです。
計測できなければ、目標とのギャップが分からないため、課題把握ができません。課題が分からなければ改善PDCAを回すことができません。また、目標に近づいているのか進捗状況も分かりません。
目標は、誰が読んでもわかるよう明確に表記し、定量的に測定可能な基準を設けるようにしましょう。

評価への不満につながる

目標設定と評価は表裏一体です。
「マネジャーと合意した目標設定を達成すれば、良い評価がもらえるはず」というのがメンバーの心理でしょう。
評価制度や実運用における評価軸は、企業/組織ごとに異なるため、マネジャーが評価軸をきちんと理解し、メンバーが目標達成した際にちゃんと評価できる目標になっているかという視点で、目標設定と評価を連動させることが重要です。 目標設定が形骸化している場合や、評価軸とうまく連動していない場合は、まず目標設定を見直してみてください。

目標設定のフレームワーク「SMART」

「SMART」という良い目標にするための5つのポイントがあります。
目標設定を行なう際は、この5つの視点を満たす目標になっているかチェックをしてみてください。

① Specific(具体的か)

誰が読んでもわかる、明確で具体的な表現で書き表すことです。
「具体的に何やる?」「目的やゴールにどう繋がる?」と、自身に問いかけてみると目標を具体的に設定できるようになります。

👎 悪い例

メンバーとの信頼関係を築く。

※信頼関係を築くために何をするか具体的になっていません

👍 良い例

隔週で1on1を行い、コミュニケーション量を確保。1on1で、メンバーの価値観や希望するキャリアを理解する。
メンバーの価値観に合わせたコミュニケーションをとることで、信頼関係構築につなげる。

② Measurable(測定可能か)

目標の達成度合いが本人にも上司にも同じように判断できるよう、その内容を定量化して表すことです。
「どうなれば目標達成?」「できた/できなかったはどう判断する?」と、問いかけてみると、測定可能な目標か判断できます。

👎 悪い例

メンバーを褒めることを意識する。

※意識するだけでは、測定できません

👍 良い例

メンバー1人1人の仕事ぶりを把握し、全体への週報で各メンバーを月1回以上褒める
承認称賛を増やすために、結果を褒めることが難しい場合は、プロセス、行動、意識などを認める承認コミュニケーションを積極的に取る。
半年後の10月までに、サーベイの承認称賛結果のポイントを0.5ポイント改善する

③ Achievable(達成可能か)

希望や願望ではなく、達成可能で現実的な目標かどうかということです。
「かなり挑戦的な目標だけど達成できそう?」「自分でコントロールできる?」と、問いかけてみると良いです。

👎 悪い例

業務過多なので中途採用で人員を増やす。

※権限がなく自分でコントロールできない目標です

👍 良い例

業務過多の解消のため、上司へ増員要請
OKの場合も採用には時間がかかるため、無駄な業務、重要度の低い業務を洗い出し、やめることを検討

④ Related(ゴールと関連性があるか)

会社やチームの目標、自身の業務内容、改善したい事項に関連した目標にすることです。
「会社やチームの目標にはどう繋がる?」「どう改善に繋がる?」と、問いかけると確認できます。

👎 悪い例

チーム飲み会を実施。

※何の目的なのか、ゴールとどう関係するのか分かりません

👍 良い例

メンバー同士の業務における協力関係を促進する目的で、メンバーが互いの価値観や担当している仕事、目標を知る機会を設定する。
会話のテーマが大事なので、2回に分けて実施。自身も参加・発言して、目的に沿った話題になるようファシリテートする。
・1回目:価値観についてのワーク
・2回目:メンバーの目標設定について共有

⑤ Time-bound(時間制約があるか)

いつまでに目標を達成するか、その期限を設定することです。
「いつまでに実施?」「いつから実施?」と、問いかけると時間制約のある目標を設定できるようになります。

👎 悪い例

生産性向上のためにできることをチームでディスカッションし、インパクトの大きいものを改善する。

※いつまでに実施するのか、期限がありません

👍 良い例

・生産性向上のためにできることをチームでディスカッションし、不要な業務、改善できる業務の洗い出し。(期限:今月中)
・インパクトの大きいものを1つ以上改善に取り掛かる。(期限:来月中)


いかがでしたでしょうか。
SMARTを意識した目標設定は、計画実行度を高め、振り返りの精度を高めます。
自身の目標設定や、メンバーの目標設定のレビュー時に、ぜひ意識してみてください。

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【2021年版】リーダー・管理職研修サービス主要13社の特徴まとめ|サービス一覧表付き

管理職研修サービスのまとめ

新型コロナウイルスの影響で2020年は社員研修を控えていた企業も多かったようですが、最近は社員の学びの場の確保も正常に戻ってきたようです。
特に、テレワークと出社が組み合わされたこともあり、マネジメントに関する問題が多くの企業で発生したため、新たにリーダー・管理職向けの研修をはじめようと検討される企業が増えています。
検討の際は、対象となる社員や組織、会社にとってを実施する目的に合わせた研修を選ぶことが重要です。
今回は、リーダー・管理職向け研修の検討の参考になればと、主要13社の研修サービスについてご紹介します。
本ページの最後に、サービスの特徴や費用などについてまとめた研修サービス一覧表のダウンロードリンクがありますので、お気軽にダウンロードください。

研修サービス一覧表

リクルートマネジメントスクール

公開型社員研修サービス「リクルートマネジメントスクール」は、人材育成の分野で50年のキャリアを持つ、株式会社リクルートマネジメントソリューションズが提供する公開型の研修サービスです。
講師による講義だけではなく、グループワークや五感で学ぶゲームなど主体性を引き出す独自のプログラムが用意されていて、3時間から3日まで200コース以上から選択できる豊富なラインナップがあります。
また、管理者がチケットを配り受講者がコース選択できるチケット制サービスも導入されている為、受講者の状況にあわせて研修を受けさせることができます。

会社名:株式会社リクルートマネジメントソリューションズ
https://www.recruit-ms.co.jp/open-course/

グロービス

グロービスは、集合研修、スクール型研修、オンライン研修などの研修サービスを提供しています。
次世代リーダー育成、女性リーダー育成、事業革新リーダー育成、グローバル人材育成など、さまざまなリーダー、マネジメント向けの社員研修プログラムがあります。また、高い品質の証として「クオリティ・ギャランティー(品質保証)制度」を設けています。
グローバルに対応しており、日本語の他「中国語」「英語」などの言語での研修も可能で、オンライン研修に特化したファシリテーショントレーニングを受けた講師陣がいます。
オンラインの研修中は専任のヘルプデスクによるサポート体制がありますので、安心して研修を受講することができます。
また、検討中の企業には、グロービスのサービス理解の為の研修担当用が研修内容の一部を体験できる無料セミナーがあります。
その他、スクール型研修の中には、MBA学位を授与できる文部科学省の認可を受けたグロービス経営大学院もあります。

会社名:株式会社グロービス
https://gce.globis.co.jp/

マネトレ

マネトレは、データ分析を活用し、1人ひとりにマッチした「マネジメントナレッジ」と「コーチ」を提供するこれまでにないオンラインのマネジャー育成サービスです。
深い知識や本質の理解は、実務が伴わなければ身に付かない、人は実際に利用シーンがなければその本質を理解できない、という考えから、座学研修やワークショップといった従来の単発の研修ではなく「実務を通じて継続的に学ぶ」という新しいコンセプトを打ち出しています。
マネジメント課題の可視化や、課題に対する改善プランのレコメンド、365日いつでもコーチに相談できる、といった特徴を持つシステムを提供。マネジャーはコーチのサポートを受けながら、自らの組織のマネジメントPDCAサイクルを回すことで、実務の中でスキルを体得していきます。
実践型のため、利用するマネジャーの8割以上で行動変化が見られており、マネジメントの改善によって組織の活性化やメンバーのエンゲージメント向上も期待できます。

会社名:Paddle株式会社
https://manetore.net/

インソース

インソースは、『翌日から実践できる内容を』という考え方のもと、企業以外に自治体や官公庁にも研修を提供している会社です。
講師からの一方的な講義ではなく、研修の構成比は「講義は4割以下、演習・ワークは6割以上」を徹底した内容となっています。
すべての研修のオンライン実施が可能です。
講師派遣型研修では、ほぼ全ての研修でカスタマイズをしているというほど、企業ごとに柔軟な対応が可能です。
英語版テキスト、中国語版テキストの用意もある為、外国人が多い企業でも研修の相談ができます。

会社名:株式会社インソース
https://www.insource.co.jp/index.html

アルー

アルーは、「育成の成果にこだわる」をコンセプトに、企業のグローバル人材育成をはじめ、新人若手社員から管理職までの幅広い社員教育研修を提供しています。
グローバル人材育成 英語力向上研修では、2ヶ月間フィリピンにて合宿形式で研修を実施。海外派遣研修では現地民間企業に訪問するなど、グローバル人材育成に特化した独自の研修も多数あります。
また、オンラインセミナーは無料のセミナーもあり、公開講座の他、グローバル人材育成や組織についてのセミナーを多く実施しています。

会社名:アルー株式会社
https://www.alue.co.jp/

ラーニングエージェンシー

ラーニングエージェンシーは、300以上の研修テーマで企業人材育成・社員研修を提供しています。
Biz CAMPUS Onlineという月額45,000円からの月額定額制オンライン動画研修サービスも提供しています。
1つの研修は2時間程度で途中再生もでき、契約期間中は何度でも受講ができます。ヘルプデスクも用意されている為、オンライン研修に慣れていない企業や社員一人一人のスケジュールに合わせた研修受講が可能です。
また、受講予約~研修前後のフォローまで一括管理できるシステムがあり、受講者は予約やキャンセル、上司は受講状況やフィードバック、人事は受講状況の把握をすることができます。

会社名:株式会社ラーニングエージェンシー
https://www.learningagency.co.jp/

NTTラーニングシステムズ

NTTラーニングシステムズは、企業だけではなく官公庁や学校など、法人・個人問わずに幅広く教育研修事業を行っている会社です。
「Learning Site21」はNTTラーニングシステムズが運営する教育・研修サービスサイトで、公開セミナーや通信教育、eラーニングなどにより常時2,000以上の研修が用意されています。
管理職や経営層向けの研修プログラムも複数用意されており、ピープルマネジメントだけでなく、マネジメントに必要なスキル面の強化ができる講座もあります。
オーダーメイド研修では、新入社員・階層別研修やヒューマンアセスメント、営業力強化研修の他、コンタクトセンタ人材育成研修やショップスタッフ育成研修など、幅広い内容の研修プログラムをオーダーメイドで提案してくれます。

会社名:エヌ・ティ・ティラーニングシステムズ株式会社
https://www.nttls.co.jp/

マイナビ研修

マイナビは、40年以上にわたって求職者の就職活動/企業の採用活動を支援してきた実績とノウハウをもち、「強い組織づくり」のサポートをコンセプトとしています。
全国に800人ほどの講師が在籍し、専門分野や領域も多種多様で研修テーマに応じたプロフェッショナルな講師が公開型研修を行っています。
マネジメント向けには、グローバル組織コンサルティングファームのコーン・フェリー・ヘイグループと共同開発した、管理職が知っておくべき基本的な役割・スキル・心構えなどについて総合的に学習できる管理職研修を提供しています。

会社名:株式会社マイナビ
https://hrd.mynavi.jp/

パーソル総合研究所

パーソル総合研究所は、パーソルグループの一つで社員研修の他、人材開発・教育支援、人材開発などを行っている会社です。
管理職研修として、新たな時代に求められるマネジメントの役割や行動に向けて、マネジメントの原理原則を実践的に学び、具体的な行動変容を促進するプログラムを提供しています。マネジャーへの移行期から、マネジャーの経験者まで、さまざまなタイミングの管理職向けの研修があります。
公開セミナーの中には、『リーダーシップ&マネジメント研究会』や『営業組織の本質的な課題」について考えるセミナー』『日本で働くミドル・シニアを躍進させる「RCPプログラム」』など、参加費無料のセミナーも多数開催されています。

会社名:株式会社パーソル総合研究所
https://rc.persol-group.co.jp/

SMBCコンサルティング

SMBCビジネスコンサルティングは、SMBCのグループ企業として30年以上企業の人材育成をサポートしてきた豊富な実績があり、1名から参加できるSMBCビジネスセミナーでは年間3,000本以上の公開講座を行っています。
月額の定額制クラブでは、社員数に応じた定額の月会費でセミナーを何度でも受講することができます。階層別・職種別・目的別に分かれているコンテンツが400本以上あり、年間の開催スケジュールが明確なので年間の研修予算と受講計画が立てやすいのも特徴です。
また、階層別の中には管理職や新入社員といった階層の他に、女性社員の『キャリアアップ』『リーダーシップ』といったカテゴリーがあり、「女性社員 私らしく働くためのキャリアアップ講座」や「女性社員のメンタルヘルス」など独自のセミナーが特徴です。

会社名:SMBCコンサルティング株式会社
https://www.smbc-consulting.co.jp/

富士通ラーニングメディア

富士通ラーニングメディアはパソコンやIT機器などの大手メーカー富士通のグループ会社で、ヒューマンスキルからITテクニカルスキル、リーダーシップやマネジメントといった階層別に必要な内容まで、約1,500コースカリキュラムを提供しています。
ネットワークの基礎やデータベース基礎、プロジェクトマネジメントの基礎といった基礎研修が人気で、ネットワークやデータベース、クラウドといった他にはないITカテゴリも充実しています。
定額制受け放題のeラーニングサービスもあり、コースも3コース用意されている為、企業や受講者に合った研修を定額で好きなだけ受講することができます。

会社名:株式会社富士通ラーニングメディア
https://www.fujitsu.com/jp/group/flm/

ANAビジネスソリューション

ANAビジネスソリューションは、ANAグループのノウハウを活かした接遇&マナーのほか、ANAコミュニケーション、医療現場での接遇、ヒューマンエラー対策、ダイバーシティなど、独自の研修の種類が豊富です。
ANAで長年勤務し人財育成に豊富な経験を持つOB・OG、あるいは現役社員の講師が研修を担当しています。
マネジメント向けに、組織力は、「個人の能力」・「チームワーク」・「モチベーション」の3つの要素から構成されているというコンセプトの「リーダーシップ力」「チームビルディング力」の向上を目指す組織マネジメント研修も実施しています。

会社名:ANAビジネスソリューション株式会社
https://www.abc.jp/

JMAマネジメントスクール

JMAマネジメントスクールは、70年以上人材育成事業を行う一般社団法人日本能率協会(JMA)が、公開講座や講師派遣研修などを提供しているサービスです。
階層別研修では、課長向け、部長向け、経営幹部向け、と細かく分かれた講座が多数用意されており、対象に合わせた柔軟な研修の選択が可能です。
また、ものづくりソリューションという研修サービスでは、ものづくりに関連した研修が『開発・設計・技術編』『生産編』『購買・調達編』などのカテゴリーに分けて用意されており、ものづくり関連資格の対策研修もある為、他の研修会社ではあまり見ないものづくりに特化した研修を受けることができます。

会社名:株式会社日本能率協会マネジメントセンター
https://www.jmam.co.jp/

Schoo(スクー)

国内最大級のオンライン研修サービス Schoo は、6,200本以上の授業が1ID月額1,500円で受け放題とコストを抑えてオンライン研修をしたいという企業におすすめなサービスです。
階層別や職種別になった100種類以上の研修パッケージが用意されている為、手間のかかる研修設計の時間が短縮できます。
IT業界・ビジネスシーンの変化に対応し毎月50本の動画を追加している為、最新の情報が得られます。
また、動画をSchooアプリ上にダウンロードできるので、スマホで受講の人も通信制限などを気にせず気軽に受講することができます。

会社名:株式会社Schoo(スクー)
https://schoo.jp/biz/

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ジョブ型雇用のポイント解説|よくある勘違いへの回答付き

ジョブ型雇用という言葉を最近よく聞くようになりました。
ジョブ型雇用とは、日本の働き方と欧米の働き方を分かりやすく説明するために日本で作られた言葉で、欧米の働き方を表す際に使われています。
ここ1,2年で、大手企業でジョブ型雇用を導入といったニュースをよく目にするようになりました。
今回は、そもそもジョブ型雇用とは何なのか?そしてよくある勘違いと日本での実態について解説します。

そもそもジョブ型雇用ってなに?

日本の従来の働き方(メンバーシップ型)に対し欧米の働き方を指す言葉が「ジョブ型」

欧米で「ジョブ型」という言葉はなく、日本の働き方と欧米の働き方を分かりやすく説明するために日本で作られた言葉

最も大きな違いは、人に等級をつけるか(職能給)、ポストに等級をつけるか(職務給)ということ。

ジョブ型は職務記述書(ジョブ・ディスクリプション)を詳細に定めることが本質ではない

日本では、内定通知書などに「あなた」のグレード(等級)はG4です、といった具合に記載がある。一方、欧米では「ポスト」に対し、グレードのG4が記載される。
 

働き方の特徴

ジョブ型
メンバーシップ型
  • 職務給(職務価値の大きさによってポストを格付け)
  • 社外の視点(転職市場での価値)も考慮して給与を決める
  • 市場価値が高い職種ほど報酬が高い。社内の報酬の横並びはない
  • 解雇ルールあり/随時離職
  • 実力主義
  • 通年採用
  • 勝手な異動なし
  • スペシャリスト
  • 職務によって、等級が上がることも下がることもある
  • 職能給(職務遂行能力によって人を格付け)
  • 社内の論理で給与を決める
  • 同じ役職であれば職種による報酬面の違いはなく横並び
  • 終身雇用
  • 年功序列
  • 新卒一括採用
  • 異動は会社の自由
  • ジェネラリスト
  • 等級は上がることがあっても基本下がることはない

ジョブ型雇用の主なポイント

  1. 等級(グレード)を「人」ではなく、「ポスト」につける(職務給)
  2. ポストの数は計画で決まる(等級の人数でポストの数は決まらない)
  3. ポストは定員制である(ポストがなければ能力があっても上がれない)
  4. 企業は社員を自由に異動させられない(人事権がない)

賃金制度:職務給(欧米)と職能給(日本)の比較

■ ジョブ型(欧米):職務給

① 職務等級(グレード)=ポスト。平社員はG1、リーダーはG2、課長はG3、部長はG4といった形になる。つまり、ポスト= 等級 = 給与という形で連動する。
年齢や勤続年数にかかわらず、責任や難易度が同じ仕事に取り組んでいれば、同一の賃金が支払われる。

② ポストを管理する。経営計画から必要なポストを定め、人員構成を決める。ポストが先にある。
そのため、ポストに必要な人材が不足していれば適宜中途採用で調達し、スキルのない新卒を積極的に採用するようなことはない。
また、ポストがなければ、仮に能力が上がっても昇進できないため、社員はキャリアアップしたい場合は他社のポストに転職をする。

● メンバーシップ型(日本):職能給

① 職能級(グレード)=人。平社員の中にG1とG2、G3、課長の中にG4とG5といった形で、同じ職務・役割で外からは違いが分からなくても異なる等級が混在する。つまり、人 = 等級 = 給与という形で連動する。

② 人を管理する。必要なポストに関係なく新卒を中心に基本「仕事・勤務地を無限定」で採用活動を行う。能力評価における実態は、仕事に取り組んだ経験を評価することが多く、新卒は年齢や勤続年数で等級が上がっていく。
事業成長でポストが必要といった合理性がなくとも、社員の成長にあわせてポストをつくる(増やす)。
そのため、事業成長が横ばいや下降となれば新たなポストは実際は必要ないので、部下なし管理職や、仕事の内容は平社員なのに役職がつく人が発生する。

解雇や採用の比較

■ ジョブ型 (欧米)

経営計画から必要なポストを定め、人員構成を決める。ポストが先にあり、ポストは厳格に定員管理され、ポストがなければ採用はできない。
そのため、業績不振による事業の縮小、事業の撤退などでポストがなくなった場合、解雇される可能性があり、ポストで採用しポストがなくなったのだから解雇する、ということは合理的であり認められる
欧州各国では労働者が不利にならないよう、解雇予告期間や解雇の際の金銭解決ルール(金銭的保証)が決められている。

職務遂行能力が足りない場合、業績改善プログラム(PIP:Performance Improvement Program)を行い、それでも改善が見られない場合は解雇される。
これはポストを管理しているため、ポストに見合う能力がなければ解雇することが合理的とされ認められる。

ポストがなければ昇進ができない、解雇も頻繁に発生するため、転職が活発である(米国ではひとりの平均転職回数は10回以上)。

● メンバーシップ型 (日本)

人に等級をつけ、人で人事を管理しており、ポストに連動した採用を行っていないため、ポストが無くなろうと合理的な理由とならずそのような理由で解雇することは認められない。

ポストのために人を採用していないので、もし与えられた職務遂行の能力が著しく不足していても、チームや働く場所を変えたり、職種を変えたりして、社員の活躍の場を別に求めなければならず、能力不足による解雇は、勤務態度の不良等のよほどの場合を除き合理的とみなされず認められない。

ポストがなくても能力が上がれば昇進できる。実態として、能力は経験によって上がっていくとみなされるため、勤続年数に伴い昇進する。そのため、欧米のように必要に迫られて転職するといったことが発生しにくい(日本ではひとりの平均転職回数は2回以下)。
また、人に等級がつくため、出世コースから外れて簡単な職務になったり、自分が経験のない職務に手を挙げて異動し平社員レベルの仕事しかできなかったとしても、給与は下がらない。
これは、異動したとしても人に紐づく能力はなくならないためで、等級を下げる=給与を下げる合理的理由にならない。こうした背景もあり、転職は欧米に比べ極めて少ない。

異動や人事権の比較

■ ジョブ型 (欧米)

① 会社と社員は、合意して契約した限定されたポスト(職務)で繋がっており、会社と社員が繋がっているわけではない。したがって、ジョブ型では、会社に人事権はなく、その人のポストを会社の都合で勝手に変更する、異動を命じることは認められない。
会社都合で配置転換が出来ないため、勤務地の変更はもちろんのこと、職種・職務の変更もできない。マーケティングの人を広報に、営業を営業企画に、採用担当を人事制度設計に、経理を財務に、といった職種転換、職務内容の変更でも本人同意が必要。
そのため、空きポジションについては社内で公開されており、社員自らが希望する形を取ることが一般的。

ジョブ型での会社と社員のポストでの契約は、社員は自身のやりたい仕事(合意した仕事)ができ、会社都合で異動させられることがない反面、仮に仕事で高い成果を出していたとしても、会社や事業の状況でポスト自体が無くなれば会社都合で契約を終了すること(解雇)が合理的と判断される。

労働者は職務を自分の意志で選び会社と合意することができるため、自身が伸ばしたい専門性を磨くことができる。

● メンバーシップ型 (日本)

採用の際に職務や勤務地を限定しない無限定での契約のため、メンバーシップ型では会社と社員が繋がっている。
もともと職務や勤務地を限定していない契約であるので、会社の都合で社員の仕事内容や勤務地を自由に変更することは合理的として認められており、人事異動・勤務地変更をすることが可能で、社員は拒否することはできない。
過去の判例でも、無限定で採用した社員が異動を拒否したケースでの解雇が認められている。

無限定で雇用契約を結んでいるため、人員の不足を企業の意思で異動によって柔軟に補うことが可能な反面、「今やっている仕事がなくなった」「今やっている仕事ができない」といったことで解雇は認められず、他の機会を与える必要がある。

ジョブ型の社員が希望する仕事(合意した仕事)での契約と異なり、無限定で企業が自由に人員配置ができるがゆえに、社員のキャリアの希望やキャリア形成に対して企業は責任を持たねばならず、社員が企業内で望むキャリアが形成できるようサポートする必要がある。

よくある勘違い①:厳密な職務記述書(ジョブ・ディスクリプション)作成こそ重要

■ 実態として欧米では職務記述書(ジョブ・ディスクリプション)は厳密に規定されていない

事前に勤務地、報酬、職務の内容などの労働条件を細かく定め、その内容を職務記述書(ジョブ・ディスクリプション)にまとめ、企業が労働者と合意して雇用契約を締結する、というのが一般的なジョブ・ディスクリプションのイメージです。
しかし、実際の欧米企業のジョブ・ディスクリプションは、細かく厳密に職務を規定しているわけではなく、幅広い業務に対応出来るよう、抽象度が高く書かれています。仕事を行う中で柔軟に対応できるよう、職務の大枠と責任範囲を規定したものが一般的です。

詳細な職務記述書があることよりも、むしろ前述した職務給、職能給の違いから生じるさまざまな違いが、ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用の大きな違いであり、制度におけるメリットを生み出しているといえますが、日本での実態としては、ジョブ・ディスクリプションは作成するものの、ポストや職責が「人」に属する「職能給」のまま運用されているケースが現状多いです。

■ 職務記述書(ジョブ・ディスクリプション)は重要でない、という新しい考え方もある

2018年に日本語版が刊行された『ティール組織 ― マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現』。
米コンサルティング会社のマッキンゼーで10年以上組織変革プロジェクトに携わり、その後独立したフレデリック・ラルー氏が書いたこの本は、12ヶ国語以上に翻訳され、世界で35万部、日本では5万部の大ヒットとなりました。

その本の中で、次世代の組織として解説されたティール(進化型)組織では、ジョブディスクリプションや役職はないことが特徴として挙げられています。固定的な名称では組織内で流動的に変化していく職務内容を説明できず、進化型(ティール)組織では、社員たちは役割を頻繁に取り換えたり取引したりすることで、組織に大きな柔軟性と適応性が生まれるとしています。

よくある勘違い②:解雇が容易になる

■ ジョブ型にしたら急に解雇が認められるわけではない

・転勤や異動といった人事権を企業が持つ運用を続けている場合は、仮にジョブ型の制度を導入していたとしても、実質無限定での雇用であるとして、解雇が認められない可能性が高い。

・労働協約等で解雇のルールを定めていない場合、同じような状況である人は解雇され、ある人は解雇されないという場合には、差別とみなされ無効となる可能性が高い。
現状でも例えば業績不振による整理解雇等の際に、企業が客観的かつ合理的な理由無しに自由に残す社員と解雇する社員を決めることは認められておらず(Aさんの方が優秀だからといった曖昧な理由では認められない)、希望退職等の差別の余地がない方法を行っている実態がある。

・解雇をする会社だとみなされれば、日本においては採用競争力でマイナスの影響が出る可能性が高い。雇用が不安定であれば、欧米企業並みに給与水準を引き上げるといった別の対応もなければ優秀な人材の獲得競争で負けてしまう。


いかがでしたでしょうか?欧米と日本での雇用に関する違いがよくお分かりいただけたかと思います。
ここまでジョブ型について解説してきましたが、グローバルで統一の人事制度を作るといった目的がなければ、日本企業が焦って導入をする必要があるかは疑問です。
採用から人材育成、給与に至るまで抜本的な変更が必要で、そのマイナス面も無視できません。完璧な制度というものはなく、メリット・デメリットがあります。

現在、日本でジョブ型雇用を導入したとPRしている企業の実態は、欧米のジョブ型とは大きく異なり、人事権や職能給はそのままで、ジョブ・ディスクリプションを作成する、新卒で職種別採用枠を設ける、ジョブの明確化により名ばかり管理職を廃止する、等級と職務が一致していない中高年層のグレードを下方に調整する、といったものです。
メンバーシップ型の放置されてきた悪い部分(組織の活力を損ねる部分)にジョブ型の要素を一部取り入れてジョブ型だと言っているものがほとんどであり、実態はジョブ型ではなく「職能給」と「人事権」というジョブ型にはないメンバーシップ型の核となる要素は残したままです。
つまり、メンバーシップ型の修正です。

昨今はジョブ型という言葉やニュースであふれているため、検討を迫られる人事の方も多いかもしれませんが、過度にジョブ型に寄せて制度設計する必要はありませんし、実際そのような日本企業はごく少数しかないという点を認識していただければと思います。
ジョブ型の機運を、欧米のジョブ型を正解として急速に移行させるのではなく、現状のメンバーシップ型の人事制度の悪い点を改善していくきっかけとすることが最善と思います。

先に述べたとおり、メンバーシップ型の悪い点は、長年の制度運用で既に明らかになっています。日本企業が世界でプレゼンスを落とした要因のひとつであることは紛れもない事実でしょう。
ジョブ型の良い部分を取り入れつつ、新しい人事制度を検討していく時期に、日本企業がきているのは間違いありません。

▶ マネトレは、リーダーやマネジャーのマネジメント活動をサポートし、成長を支援します。「コーチ」と「マネジメントナレッジ」を提供する新しいサービスです。