部下の叱り方|マネジメントにおける叱ると指導の使い分け

部下の叱り方_マネジメント

マネジメントにおいて、どんな時に「叱る」を活用していますか?
長年マネジメントをやっていても、あまり考えたことがなかったという方が多いかもしれません。

指導の方が効果的なのに叱ってしまったり、相手やその時の気分で叱る/叱らないの判断がぶれてしまったりと、良くない叱り方をしてしまっていることが意外と多いです。
今回は、指導と叱るの使い分けについて解説します。

指導や叱るの目的|改善すべき言動を、望ましい状態に導くこと

マネジメントにおいて指導や叱るを行う目的は、メンバーを育てることです。
改善すべき言動を指摘し、望ましい状態に導くために「指導」や「叱る」という手段を用います。
す。

しかし、マネジメントの現場では、目的を考えずに叱っている場面が多々あります。
メンバーの意見を聞かずに頭ごなしに叱りつけたり、問題の原因ではなく起きた結果に焦点を当てて怒ったり、「だからお前はダメなんだ」と人間性を否定したりするのは、正しい叱り方ではありません。
メンバーを叱る際、決してマネジャー自身の怒りの捌け口や、鬱憤を晴らす目的になってはいけません。

「叱る」という行為は威圧的になってしまいがちで、適切な叱り方をしないと相手との信頼関係を崩壊させます。
また、一歩間違えると、パワハラと捉えられてしまう可能性もあり、あなたのキャリアを脅かすリスクがあります。

きちんと叱る目的を理解し、叱るべき場面で、正しい叱り方ができるようにしていきましょう。

アンガーマネジメントは大前提

「叱る」について語る際、アンガーマネジメントという言葉がよく取り上げられます。
アンガーマネジメントとは、「怒りをコントロールするスキル」のことです。
1970年代のアメリカで生まれ、当時は犯罪者の矯正プログラムとして作成されましたが、現在では一般化され、企業研修や子育てをする親など、広い用途で使われています。

怒りは心の動きであり、怒りを生まないようにするのは不可能です。
そのため、怒りの感情が生まれた際に、その感情に気付き、上手く分散することで、衝動的な行動を引き起こさないようにするというのが、アンガーマネジメントの考え方です。

実践方法として、「6秒ルール」が有名です。
その名の通り、怒りが湧いたら6秒数えるという方法です。人の怒りのピークは長くても6秒と言われており、それを超えると徐々に怒りの感情が鎮まっていきます。怒りの感情が爆発しそうな時は、まず6秒数えてみて下さい。

ここまで解説してきたように、アンガーマネジメントは自身の怒りをコントロールするというものです。
自身の感情をコントロールするのは、マネジャーに限らず社会人に必要不可欠な大前提のスキルです。
もし、急に怒ったり、一方的に叱りつけたりしてしまっている場合は、自身の怒りの感情のコントロールができていない状態なので、まずは自身のアンガーマネジメントについて考え直し、衝動的に怒るという行為を防ぐ方法を身につけましょう。

「指導」と「叱る」の使い分け

「指導」「叱る」はどちらもメンバーを育成する目的で、改善すべき言動を指摘し、望ましい状態に導く手法という点は共通ですが、それぞれ伝え方や、得られる効果が異なります。
それぞれの特徴を理解し、状況に合わせて「指導」と「叱る」を使い分けることが大事です。

<指導>
問いで考えさせ、良い方向に導く
<叱る>
非のある言動を咎め、厳しく注意
  • (+) 相手が自分で答えに辿り着くことで、学習効果が高く定着する
  • (+) 信頼関係を高める
  • (-) 問いで導く力が弱いと時間がかかる
  • (-) 相手が問いに答えられない場合も多い
  • (+) 叱られたことが強く印象に残る
  • (+) ルール違反や怠慢が原因の場合に効果的
  • (-) 相手にストレスがかかり萎縮させてしまう
  • (-) 信頼残高を消費する、信頼関係ができていないと効果がない
  • (-) 多用するとパワハラリスク

基本的に、「叱る」を使うべき場面は非常に限定的です。
上記でまとめたように、叱るは、相手に強く印象が残る一方で、ストレスがかかる、萎縮させてしまう、築いてきた信頼関係の貯金を消費する(信頼関係が悪化するリスクをはらむ)というマイナスの特徴があり、多用するものではありません。

また、メンバーとの信頼関係が築けていることが、叱るを使うための前提条件であり、マネジメントの土台であるメンバーとの信頼関係が築けていない場合は、いくら叱っても相手に響かず、信頼関係を壊すだけになってしまいます。
例えば、ある優秀なマネジャーは、初めての部下とは必ず1on1で、業績や目先の仕事に関係なく1時間くらいお互いの話をするようにしているそうです。こうした活動による信頼構築をして初めて、「叱る」というカードが使えるようになるとのことでした。

信頼関係ができている前提で、叱るが効果的なのは、以下のような場合です。

・コンプライアンスや社内ルールなど誰もが守るべきルールの違反
・本人も自覚している本人の怠慢(怠慢しなければできたことをやらなかった場合)
・一度指導した言動と同じことを繰り返した場合(ダメと共通認識がある言動)

本人がダメなことと知っていながら、それに反する言動をとった場合に「叱る」が有効です。

逆に、上記以外の大半のケースでは、「叱る」が逆効果になってしまうため、問いを使って導く「指導」の方が適切です。
「叱る」が効果的な場面を理解し、それ以外の場面では「指導」を用いるようにしてみてください。

よく陥りがちな過ちは、ダメなことを繰り返したときの「叱る」の使いどころです。
「叱る」が適している場面ではあるのですが、「できなかったのか」、それとも「やらなかったのか」によって対応は異なります。
「やらなかった」は叱ってよいのですが、「できなかった」は仮に繰り返したとしても叱ってはいけません。それでは、本人のやる気を削ぎ、萎縮してもっとできなくなってしまいます。
「指導」で、どうしたらできるようになるか、ミスを発生させない仕組みを考えさす、など根気強くコミュニケーションを取り部下を導きましょう。

【超実用的】部下を成長させる指導法|パワハラにならない指導の仕方

叱るポイントと注意点|叱る対象、叱る場所

改善してもらいたい言動を叱る

叱る対象は、改善してもらいたい言動です。
叱る中でヒートアップしてしまい感情的になると、どの発言、どの行動を改善して欲しいのか伝わらなくなります。
また、「だからお前はダメなんだ」「全部説明しないとわからないのか、要領が悪いな」のように、特定の言動ではなく、人格を否定することは最もダメな叱り方です。パワハラと捉えられても仕方ありませんので、注意しましょう。

②ダメと共通認識があることを叱る

コンプライアンスや社内ルール、チームの決め事・約束事、一度指導したことなど、明確にダメと言えることだけ叱りましょう。
メンバーは多様な価値観を持っており、能力や強み、これまでに経験してきたことも異なります。あなたにとっては当たり前でも、それが全てのメンバーにとって当たり前ではありません。
共通認識ができていないものは、いきなり叱られてもメンバーは何がダメなのか理解できません。
そのため、誰もが守るべきルール以外はいきなり叱るのを控え、まずは「指導」や「ルール設定」で共通認識を作りましょう。

③場所を考えて叱る

叱られること自体ストレスを感じるのに、人前で叱られるとなると尚更です。
ストレスが大きくかかると人は正常な思考ができず、相手の成長のために叱るのに、伝えたいことが伝わらなくなります。
その上、せっかく築いてきたメンバーとの信頼を、大きく消費してしまいます。
メンバーを叱る際は、周囲を気にしない場所へ移るなど、可能な限り皆がいる前で叱らないように注意しましょう。

なお、チーム内でルールを守っていないメンバーを、皆がいる前で「指摘」するのは問題ありません。ルール違反の指摘は、チーム内の他のメンバーにも改めてルールを認識させ、守ろうとさせる効果があります。
きちんと目的を考え、場所や伝え方を正しく選択できるようにしましょう。


いかがでしたでしょうか?
今マネジャーをされている方の中には、過去の上司からの厳しい叱責を受けて育ってきたという方も多いと思います。
マネジメントについて学ぶ機会は少ないので、自身が過去に上司から受けたマネジメント手法がベースになっていることが多いです。
しかし、転職の一般化、パワハラ防止法の施行、ゆとり世代/さとり世代と言われる若手メンバーなど、環境が変化したことで、過去の次代の叱り方ではうまくマネジメントできないばかりか、上司として信頼を得ることも難しくなりました。
今の時代にあった叱り方をマスターし、マネジメントに活かしていきましょう。

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【第3回】ティール組織について徹底解説|ティール組織の経営プロセスと運用ルール

ティール組織3

2018年に日本語版が刊行された『ティール組織 ― マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現』。米コンサルティング会社のマッキンゼーで10年以上組織変革プロジェクトに携わり、その後独立したフレデリック・ラルー氏が書いたこの本は、550ページに及ぶ大作の組織論の本でありながら、12ヶ国語以上に翻訳され、世界で35万部、日本では5万部の大ヒットとなりました。
世界に対する日本での販売部数の多さから、いかに多くの日本企業が組織やマネジメントに対する悩みを抱え、それらに対する答えを求めていたかが伺えます。

現在、企業に求められるステークホルダー認識の変化や、ESG(環境・社会・企業統治)を重視する風潮の高まり、ジョブ型を推進する機運、テレワークによる管理型マネジメントの限界の露呈など、企業を取り巻く環境に大きな変化が起きています。
そのような中で、一時HR界隈で流行語となったティール(進化型)組織、ホラクラシー組織や、ラルーによる従来型の企業やグローバル企業に対する分析・考察は、改めて注目する価値が生まれていると感じます。

第3回の今回は、ティール(進化型)における、組織の経営プロセスや運用ルールについて、過去と比較しながら具体的に解説します。

▶【第2回】ティール組織について徹底解説|ティール組織の3つの特徴とは

▶【第1回】ティール組織について徹底解説|組織モデルとマネジメント

ティール組織の経営プロセス

ティール(進化型)組織
従来(達成型)組織
  • 組織構造
    自主経営(セルフマネジメントチ)チーム。必要に応じてコーチ(収益責任を追わず、管理上の権限も持たない)を置く。
  • スタッフ機能
    各チームあるいは自発的なタスクフォースが担当。ごく少数のスタッフ機能は助言のみ行ない指示はしない。
  • 経営チームによるミーティングはない。必要が生じた時にミーティングを開く。
  • 簡素化されたプロジェクト管理。プロジェクトマネジャーはおらず、プロジェクトに必要な人材は自分たちで集める。計画や予算は最小限で、自発的に優先順位付けがされる。
  • 決まった職務内容はなく、流動的で細かな役割が多数存在する。役職はない。
  • 意思決定は助言プロセスに基づき完全に分権化

  • 危機管理において、透明な情報共有がされ、関連する人なら誰でも集団的な知性に頼ってベストの反応を得ることができる。
  • 誰でもいくらでも使うことが出来るが、助言プロセスは尊重される。
    チームの投資予算は同僚間の話し合いに基づいて決定される。
  • 組織構造
    ピラミッド型の階層構造


  • スタッフ機能
    人事、購買、財務、品質、リスク管理、安全など、たくさんのスタッフ機能がある。
  • トップから末端まですべての階層でミーティングの調整が行われる。朝から晩までミーティングをしている人材も発生する。
  • プロジェクト管理は、状況を管理し、経営資源に優先順位をつけるための重い仕組みで行われる(プロジェクトマネジャー、ガントチャート、詳細な計画)
  • どの仕事にも役職があり、職務内容は決まっている。
  • 意思決定はピラミッドの上位でなされる。どのような意思決定も組織階層の上部から無効とされる可能性がある。
  • 危機管理において、少人数で構成される経営陣や顧問がCEOのトップダウンの意思決定を補佐する。社員への共有は判断が下された後。
  • 組織内の階層に応じた限度額。
    投資予算はトップから干渉を受ける可能性がある。

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【第2回】ティール組織について徹底解説|ティール組織の3つの特徴

ティール組織

2018年に日本語版が刊行された『ティール組織 ― マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現』。米コンサルティング会社のマッキンゼーで10年以上組織変革プロジェクトに携わり、その後独立したフレデリック・ラルー氏が書いたこの本は、550ページに及ぶ大作の組織論の本でありながら、12ヶ国語以上に翻訳され、世界で35万部、日本では5万部の大ヒットとなりました。
世界に対する日本での販売部数の多さから、いかに多くの日本企業が組織やマネジメントに対する悩みを抱え、それらに対する答えを求めていたかが伺えます。

現在、企業に求められるステークホルダー認識の変化や、ESG(環境・社会・企業統治)を重視する風潮の高まり、ジョブ型を推進する機運、テレワークによる管理型マネジメントの限界の露呈など、企業を取り巻く環境に大きな変化が起きています。
そのような中で、一時HR界隈で流行語となったティール(進化型)組織、ホラクラシー組織や、ラルーによる従来型の企業やグローバル企業に対する分析・考察は、改めて注目する価値が生まれていると感じます。

第1回の前回は、過去と現在の組織モデルや組織モデルのステップ、その意味やマネジメントとの関係について解説しました。
第2回の今回は、従来の達成型組織、先進企業で進む多元型組織と比較しながら、ラルーが今後増えるであろうと予測したティール(進化型)組織の特徴について解説します。

▶【第1回】ティール(進化型)組織について徹底解説|過去と現在の組織モデルとマネジメント

達成型(オレンジ)組織とは

ティール組織について理解するには、まず過去と現在でどのような組織モデルがあるのかを把握必要があります。フレデリック・ラルーは、本書の中で過去と現在の組織モデルについて5つに分類しました。
下がそれを簡単にまとめた図になります。

ここにある組織モデルは、ある企業があらゆる面で特定の組織モデルというわけではなく、達成型(オレンジ)組織がベースだけど、一部順応型(アンバー組織)、一部多元型(グリーン)組織だ、といった複雑性を持っていることは前回説明しました。

▶【第1回】ティール(進化型)組織について徹底解説|過去と現在の組織モデルとマネジメント

組織の発展段階

組織の発展段階_ティール組織

表にある達成型(オレンジ)組織を具現化したのが現代のグローバル企業とされます。
ウォルマートやナイキ、コカコーラ等は組織の構造、慣行、文化が達成型パラダイムに導かれています。
達成型(オレンジ)組織は、業績面で比較するとこれまでの順応型(アンバー)組織、衝動型(レッド)組織とは比べ物にならない程高い水準を達成し、別次元の規模を実現しました。それを可能にしたのは、イノベーション、説明責任、実力主義、という3つの特徴です。

達成型(オレンジ)組織の特徴 ①イノベーション

達成型(オレンジ)組織では、イノベーションを脅威ではなくチャンスと捉えます。
1つ前段階の順応型(アンバー)組織にはなかった、研究開発などの部門を作り出しました。順応型(アンバー)組織は全体がプロセスを重視して活動するのに対し、達成型(オレンジ)組織を動かすのはプロセスとプロジェクトです。

達成型(オレンジ)組織は、基本的にはピラミッド構造を残しながらも、プロジェクトチーム、オンラインでつながる仮想チーム、複数の部門や職種にまたがる横断的なチーム、専門的なスタッフ機能といった方法で、厳格な部門や階層の境界を取り払うことができ、メンバー間のコミュニケーションのスピードを上げ、イノベーションを促す仕組みを持っています。

達成型(オレンジ)組織の特徴 ②説明責任

達成型(オレンジ)組織のリーダーとマネジメントのスタイルは、1つ前段階の順応型(アンバー)組織では「指揮と統制」でしたが、達成型(オレンジ)組織では「予測と統制」に変わります。
マネジャーと従業員には、創造力と才能を発揮する自由が与えられるとともに、どのようにして目標に到達したいのかを見極める裁量権が与えられました。

競争相手よりも早くイノベーションを進めるために、組織内の多くの人材のち知性を引き出すことが競争優位となります。そのため、組織内のなるべく多くの部門や人々が、自ら考えて実行できるだけの業務範囲において、権限と信頼が与えられなければなりません。
トップが全体の方向性を決め、目標や重要なマイルストーンを定めて望ましい結果への到達を目指す目標管理がキーになります。
経営計画、中期計画、年間予算、主要業績指標(KPI)などがその経営プロセスです。
達成型(オレンジ)組織では、実績評価、ボーナス制度、表彰制度、ストック・オプションなど、人々の目標の達成を促すさまざまなプロセスが作られました。
この段階のマネジメントは目標重視型で、目に見える問題を解決することに集中し、人間関係よりも業務遂行を優先させ、意味や目的を疑問視することはありません。

達成型(オレンジ)組織の特徴 ③実力主義

達成型(オレンジ)組織は実力主義という新しい考え方を導入しました。組織の階段を上がれる可能性が全員に与えられ、同じポジションに留まることが決まっている人は誰もおらず、一人ひとりの才能は開発され、誰もが組織に最も貢献できる役割を与えられるべきだという考え方です。
1つ前段階の順応型(アンバー)組織ではなかった、人的資源という概念が生まれ、実績評価、インセンティブ制度、採用計画、人材管理、研修、などの形で人的資源の蓄積と管理がされます。

実力主義では、順応型(アンバー)組織で絶対であった役職、階級、制服といった、変わることのない厳格な意味での階層構造象徴するものは排除されました。
しかし、実力主義となっても、実際は地位の象徴は生きていることが多いです。経営幹部は広い執務スペースを持ち、専用の駐車場を使い、飛行機や新幹線でビジネスクラスやグリーン車に座ることができ、十分なストック・オプションを受け取れる一方で、部下たちはエコノミークラスに乗り、通勤電車に揺られ、皆と横並びの個人用デスクに座り働く、といった形です。
こうした地位に付随した特典は、組織の成功にはリーダーが果たす影響が大きいため、与えられること自体は実力主義とは矛盾しません。

達成型(オレンジ)組織の課題

・権限委譲ができない

達成型(オレンジ)組織において、イノベーションとモチベーションを促すために、意思決定の権限委譲を進めるというのは至極真っ当な考え方です。しかし、競争に勝つことが何よりも優先されるため、実際は統制をしないことで業績が低下する恐れが部下への信頼に勝ってしまい、本来委譲すべき意思決定権を渡せないケースが多く発生します。

・人々が進んで説明責任を果たし、成果を出そうとする動機づけができない

達成型(オレンジ)組織では、社員が目標を設定する際、最初からやる気のある高い数字を設定するのではなく、低い数字を出し、目標を達成してボーナスをもらおうとする思考が働きます。
しかし、例えこのような行為があっても、上がってきた数字に対し、経営陣は株主に応えられる水準に目標を引き上げるため、部下たちはそれを受け入れるしかありません。
結果、何ができて何ができないのかを率直に議論するための本来の説明責任はなく、達成できないかもしれない不安の中で動機づけも何もなくただ数字をやり取りすることになります。

多元型(グリーン)組織とは

多元型(グリーン)組織には権力や階層はなじみません。全員に平等な権力を与え、すべての社員が平等に会社を所有し、誰もがリーダーシップの地位を独占することなく、あらゆることをコンセンサスで(あるいは必要であれば順番にリーダーシップを握ることにして)決めようとします。
1つ前段階の達成型(オレンジ)組織では、戦略と執行が絶対です。しかし、多元型(グリーン)組織で最も重要なのは、その文化です。多元型(グリーン)組織のCEOは、企業文化とシェアード・バリュー(共有価値)を育て守ることが最も重要な仕事となります。
文化を重視する活動ではHR部門が重要となり、HR部門のトップは経営チームの中で影響力を持ち、CEOの相談相手となることも多くなります。研修や文化活動、360度フィードバック、社員のモラル調査等、社員中心主義に基づいたさまざまなプロセスを導入します。Google、Salesforce、ザッポスなどが該当するイメージです。

多元型(グリーン)組織の特徴 ①権限の委譲

多元型(グリーン)組織は、1つ前段階の達成型(オレンジ)組織の実力主義に基づく階層構造を残していますが、意思決定の大半を最前線の社員に任せています。社員たちは、経営陣の承認を得ることなく重要な意思決定をすることができます。
現場にいる社員は、多数の小さな日々の問題に接しており、専門家が現場からはるか遠くで組み立てるより、素晴らしい解決策を見つけられるはずだ、と考えられ、そうした信頼を寄せられます。

分権化と権限委譲を大規模に行なうことは難しいため、トップとミドルのマネジャー層は、権力を事実上分け合い、統率力を一定程度最初からあきらめることが必要になります。
そして、これらをうまく機能させるためにリーダーシップのあり方も変わります。多元型(グリーン)組織のリーダーたちは、達成型(オレンジ)組織のリーダーのように問題を公平に解決するだけではダメで、部下に耳を傾け、権限を委譲し、動機づけ、育てるサーバント・リーダーにならなければなりません。そして、サーバント・リーダーを育てるにはかなりの時間と労力がかかります。

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多元型(グリーン)組織の特徴 ②価値観を重視する文化と心を揺さぶるような存在目的

強烈な文化が共有されていないと、権限委譲を前提とした組織をまとめるのは困難です。現場にいる社員が、がんじがらめのルールではなく、組織で共有されているさまざまな価値観をベースに、正しい判断をする者として信頼されます。
また、権限委譲を前提に組織をまとめるため、多くの多元型(グリーン)組織は、活動の核心部分に社員の心を揺るがすような目的を設定し、シェアード・バリュー(共有価値)を明確化します。

シェアード・バリュー(共有価値)は達成型(オレンジ)組織では機能しません。
達成型(オレンジ)組織では勝利、業績が一番であり、一連の価値観を定め、オフィスの壁や会社のウエブサイトに掲げたとしても、利益の観点から都合が悪くなるとあっさり無視してしまうからです。
しかし、リーダーがシェアード・バリューに心から従っている多元型(グリーン)組織では、勝利よりも文化やシェアード・バリュー(共有価値)が優先されます。権限を委譲された社員は組織で共有される価値観をベースに、判断を下します。社員は自分たちが敬意を持って扱われていると感じ、権限を得て組織に貢献するという驚くほど生き生きした文化に出会います。

▶企業文化とは?|セールスフォースに学ぶ企業文化の重要性 創業者マーク・ベニオフ著『TRAILBLAZER』

多元型(グリーン)組織の特徴 ③多数のステークホルダーの視点を活かす

達成型(オレンジ)組織では、営利企業は、株主の視点で経営されるべきだ、という考えでした。すなわち、経営者の第一の義務は、株主の利益の最大化です。

一方で、多元型多元型(グリーン)組織では、企業は投資家だけに責任を負うのではなく、経営者、従業員、顧客、サプライヤー、地域社会、社会全体、環境に対する責任も負っている、と考え多数のステークホルダーの視点を持ちます。CSR(企業の社会的責任)もビジネスの中心として捉えます。

リーダーの役割は、相反するさまざまな条件を調整して、すべてのステークホルダーを幸福にすることです。ステークホルダーの視点は、短期的にはコストが高くつくかもしれませんが、長期的には株主も含むあらゆる関係者にとって優れた結果をもたらすと考えます。

進化型(ティール)組織とは

これまで見てきたとおり、多元型(グリーン)組織では、社員に対する面倒見の良さを重視し、リーダーとは社員に奉仕する存在だと考えました。
しかし、進化型(ティール)組織のリーダーは、社員に配慮し、奉仕する父親のような存在になる気はありません。自分たちを「生命体」や「生物」と捉え、組織を組織自身の進化の力に任せて運営します。

進化型(ティール)組織の特徴 ①自主経営(セルフ・マネジメント)

進化型(ティール)組織は、大組織にあっても、階層やコンセンサスに頼ることなく、仲間との関係性で動きます。

誰もが強い権限を持ち、無力な人は一人もいないため権限委譲自体が必要ありません。誰が誰に対しても権力を行使する立場にはなく、権力の不平等はありません。

組織図も階層もジョブディスクリプションも、肩書もありません。人々は事前に決められた仕事に無理に合わせる必要がなく、自分の仕事は興味、才能、組織のニーズに基づいて自ら選んださまざまな役割と責任によって決まります。従来マネジャーが担っていた職務は、チーム内のそれぞれのメンバー間で分担されます。

進化型(ティール)組織では、役務と職務内容は社員がそれぞれ担っている役割の組み合わせを正しく表していません。つまり、ジョブディスクリプション(職務記述書)や役職はありません。固定的な名称では組織内で流動的に変化していく職務内容を説明できないためです。
進化型(ティール)組織では、社員たちは役割を頻繁に取り換えたり取引したりします。その結果、組織に大きな柔軟性と適応性が生まれます。
任命、異動、昇進といった面倒で往々にして政治的なプロセスを経る必要もなく、個人の希望で一つの役割から別の役割に移ることができます。

これまでの組織では、役職は地位を表す一種の通貨でした。人々が一生懸命働くのは昇進して大きな肩書を得るためというのが共通認識でした。しかし、ほとんどの進化型(ティール)組織では役職はありません。注意が必要な点は、役職は無ありませんが、全員が平等で同じ仕事をするわけでもないことです。
また、大半は役職だけでなく「従業員」「労働者」「マネジャー」といった用語も廃止し、「同僚」のような上下を生まない言葉に置き換えます。

自主経営(セルフ・マネジメント)組織では、自分の判断を他のメンバーに押し付けることはできず、人を雇ったり解雇したりする権利もありません。トップがいない代わりに、ひとりの管理職に対する説明責任でなく、周りに対して、仲間全員に対して説明責任が発生します。つまり、仲間全員が管理職のようなものです。
意思決定は、コンセンサスではなく、利害関係者には意見を述べる機会が与えられる「助言」というプロセスを用います。自由に意思決定を下せますが、他の人々の意見も考慮しなければなりません。

進化型(ティール)組織の特徴 ②全体性(ホールネス)

これまで従業員は、ありのままの姿をさらけ出して職場に現れると、非難されるか馬鹿にされるか、奇妙で場違いな人との印象を周りに与えかねないことを恐れていました。そこで、仕事用の仮面を持つ方が安全だと考えていました。
一方、進化型(ティール)組織では、精神的な全体性(ホールネス)が歓迎され、自分をさらけ出して職場に来てよい一貫した慣行を実践します。

従来の組織では、職場での顔と、もう一つの顔を従業員に分けることを期待していました。職場では、強い意志、決意と力を示し、疑念と弱さを隠すことが是とされます。合理性が重要であり、情緒的、直感的、精神的な部分は歓迎されません。

しかし、進化型(ティール)組織では、思い切って自分の自身の全てを職場に持ち込むことを良しとし、その結果、 職場をつまらなく、非効率にしていたものの多くが消えると考えます。
仕事ぶりを確認してくる管理職も、気を使わなければならない先輩も、いつ競争相手になるか分からない同僚も居ないので、社員は安心し、自分のしたい仕事だけに集中できるようになるといった具合です。
赤ん坊や動物を連れてくるという、仕事場とはそぐわない慣行も導入されます。理由は、人間性を仕事に呼び込むことを良しとするからです。

進化型(ティール)組織では、採用数の目標もありません。面接を行うのは将来のチームメイトであり、判断基準はその候補者と毎日一緒に働きたいと思うか、ということだけです。
研修も、自らの研修プログラムを企画・実施する責任は従業員自身にあります。研修プログラムを確定し、誰がどの研修に参加するか決める人事部門は存在しません。従業員は助言プロセスを利用し、費用が妥当と判断できれば、社内外のどの研修プログラムにも申し込めます。

進化型(ティール)組織の特徴 ③存在目的

進化型(ティール)組織は、組織自体に生命と方向感を持っているとみなされます。
組織のメンバーは将来を予測し、統制しようとするのではなく、組織が将来どうなりたいのか、どのような目的を達成したいのかに耳を傾け、理解します。

達成型(オレンジ)組織が定めるミッション・ステートメントが空虚に響くのは、自社の存在目的よりも、「勝利」を重視しているからです。
GEの元CEO、ジャック・ウェルチは、引退後に経営を通して学んだ教訓を『Wining 勝利の経営』として一冊の本にまとめ、ベストセラーになりました。たった一語ですが、勝利は達成型(オレンジ)組織の全てを動かす原動力です。
進化型(ティール)組織に転換すると、自分自身の問題としても、組織全体の問題としても、意義や存在目的が最も重要になります。進化型(ティール)組織には生き残りの執着はなく、存在目的を行動指針とし、存在目的のために全力を投下します。

進化型(ティール)組織は、トップダウンの目標を設定しません。
社員は内なる動機と相談しながら、自分たちができるベストの仕事をするだけです。
進化型(ティール)組織は、自分たちが意味があると思ったときにだけ、自ら目標数値を定めることができます。


いかがでしたでしょうか?
次回は、進化型(ティール)組織について、特徴は分かったけど評価や給与など実際ははどう運用していくの?といった組織運営における具体的な点について、事例を交えながらさらに深堀りしていきます。

参考:『ティール組織〜マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現』フレデリック・ラルー著

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【第1回】ティール組織の徹底解説|過去と現在の組織モデルとマネジメント

ティール組織

2018年に日本語版が刊行された『ティール組織 ― マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現』。米コンサルティング会社のマッキンゼーで10年以上組織変革プロジェクトに携わり、その後独立したフレデリック・ラルー氏が書いたこの本は、550ページに及ぶ大作の組織論の本でありながら、12ヶ国語以上に翻訳され、世界で35万部、日本では5万部の大ヒットとなりました。
世界に対する日本での販売部数の多さから、いかに多くの日本企業が組織やマネジメントに対する悩みを抱え、それらに対する答えを求めていたかが伺えます。

現在、企業に求められるステークホルダー認識の変化や、ESG(環境・社会・企業統治)を重視する風潮の高まり、ジョブ型を推進する機運、テレワークによる管理型マネジメントの限界の露呈など、企業を取り巻く環境に大きな変化が起きています。
そのような中で、一時HR界隈で流行語となったティール(進化型)組織、ホラクラシー組織や、ラルーによる従来型の企業やグローバル企業に対する分析・考察は、改めて注目する価値が生まれていると感じます。

本コラムでは、『ティール組織』550ページの要点を分かりやすくまとめ、組織構造やマネジメントに焦点を当てながら、数回に分けて解説していきます。

過去と現在の組織モデルについて

ティール組織について理解するには、まず過去と現在でどのような組織モデルがあるのかを把握必要があります。
著者のフレデリック・ラルーは、本書の中で過去と現在の組織モデルについて5つに分類しました。下がそれを簡単にまとめた図になります。

組織の発展段階

組織の発展段階表_ティール組織

これらは上の組織モデルから下の組織モデルに向けて発展していく、組織の発展段階を表しています。
衝動型(レッド)組織、順応型(アンバー)組織はイメージが付きやすいと思います。現代において、衝動型組織は映画の中でしか中々お目にかかることは無いでしょう。
企業経営においては、多くの日本企業は達成型(オレンジ)組織であり、一部先進的な取り組みをしている企業で、多元型(グリーン)組織を部分的に取り入れている、もしくは取り入れようと努力しているのが実情です。
多元型(グリーン)組織の代表例は、SalesforceやGoogleといった、組織開発で参考にされるシリコンバレーの先進企業はそれに該当するでしょう。

ここでは、組織モデルや組織の発展段階、複雑性といったラルーの理論の前提となる主要なポイントを理解した上で、企業人事において必要となる、達成型(オレンジ)組織、多元型(グリーン)組織、そして進化型(ティール)組織に絞って解説をしていきます。

組織モデルは優劣ではない|どの段階にも健全と不健全の面がある

個々の組織モデルについて理解を深める前に「組織モデルは優劣をつけるものではない」ということを理解しましょう。
ラルー氏は、進歩には段階があるというのは事実ですが、ある段階がその前の段階より優れているということではない、世界に対処するためのより複雑な方法と解釈する方が有益と述べています。
どの段階にも、健全な面と不健全な面があります。また、それぞれのステージは、特定の文脈によく順応しています。

例えば、多元型組織で働く人は、衝動型組織にいる人では到底できない方法で、対立する意見をうまくまとめられるはずです。
仮に内乱が起こって自分のコミュニティを守ろうとする場合は、多元型のパラダイムで動くより、衝動型のパラダイムの方が恐らくうまく対処できます。

一方で、今日の平和な社会においては、衝動型のパラダイムは、その後のどの組織モデルのパラダイムより機能しません。
軍隊や、行政機関のように、組織モデルの前半のパラダイム(順応型組織)で組織運営を行なうことに、現代でも合理性があるといったこともあります。
※パラダイム(paradigm)とは「物の見方や捉え方」のこと

発展段階はひとつに限定されるものではない、複雑性をはらんでいる

次に、「人や組織はひとつの段階に収束しているわけではなく、複雑である」ということです。
下記のような特徴があり、実際の組織や人は複雑性をはらんでいます。唯一言えることは「ある特定の瞬間に、あるひとつのパラダイムに基づいて行動している」ことです。

・どの段階であっても、前の段階のパラダイムを内包し、それを超えている。例えば達成型のパラダイムに基づいて行動するようになったとしても、時と場合によっては、順応型や衝動型のパラダイムで行動する能力を持っている。

・個人においても、多元型モデルの組織に属している場合、自分がそのパラダイムを十分に吸収していなくても、一時的に組織の影響を受け多元型の行動を取ることもあり得る。

・すべての側面が同じペースで成長するわけではない。例えば、達成型の認知能力を身につけて革新的なビジネスに取り組んでいながら、精神面では順応型ということもあり得る。

ただし、同じ発展段階のパラダイム基づいて活動している人々は、一定の認知的、倫理的、あるいは心理的特徴を共有しています。あなたの会社でも、企業文化・風土が従業員や社内の意思決定に大きな影響を与え、いちいち意思決定の理由を説明されなくても「うちの会社はこうだから」と中にいる大半の人は、そうした判断が当然、あるいは仕方なしと思っていることは、それを表しています。
もちろん、人によっては見え方が大きく異なっており、同じパラダイムであっても、異なる結論に達することもままあります。

組織の進化の難しさと発展段階の実態

人にとって、新しい段階への移行は、認知的にも、心理的にも、倫理的にも大変なことです。
ラルー氏は、コーチやコンサルタントがいくら組織のリーダーに複雑な世界観を身に着けてもらいたいと願っても、説得を通じて実現することはできない。意識の変化は強制できない。できることは、次の段階への成長に役立つ環境を作り出すことのみと述べています。

また、組織のあらゆる構造、慣行、文化は、さまざまな発達段階の中に散らばっているわけではなく、ひとつの段階の周辺に集まっています。つまり、ある段階があたかもその組織の重心のような存在となり、組織内のほとんどの慣行が決まります。

ただし、組織に発達理論を適用するときには、単純化しすぎないように十分注意する必要があります。
例えば、ある組織が達成型(オレンジ)組織という時、それは組織の重心について示しています。

しかし、その職場のあらゆる行動や交流が達成型(オレンジ)パラダイムに従っている、あるいはその組織に働くすべての人が達成型(オレンジ)の観点に基づいて活動していることを意味しているわけではありません。そのような組織はありえません。
全てではないけれど、組織の構造、慣行、プロセスの大半が達成型(オレンジ)パラダイムによって形成されている」というのが現実の組織の実態です。

また、大きな組織では、部門や地域が異なると、組織モデルもそれぞれ異なる、複雑性を持っている可能性もあります。
大規模な多国籍企業の場合、本部が達成型(オレンジ)パラダイムに従って運営され、一部の工場が順応型(アンバー)になっているケースは十分にあり得ます。
従って、単純化しすぎることには注意が必要です。

報酬における発達段階の例
  • 社長が思いつきで給料を上げたり下げたりできる ➝ 衝動型(レッド)
     
  • 組織における階級によって固定給がきまる ➝ 順応型(アンバー)
     
  • 個人ごとに目標を設定し、達成すれば報酬アップで報いる
     ➝ 達成型(オレンジ)
     
  • チーム単位の成果によるボーナスを重視する ➝ 多元型(グリーン)

組織の発達段階はリーダーによって決まる

組織の発達段階は、リーダーによって決まります。
なぜならリーダーは自らが合理的だと考える組織構造、慣行、文化を整えるからです。あるいは、リーダーがどの段階のパラダイムを通して世界を見ているかによる、とも言えます。
数年単位で変わるサラリーマン社長で、これまでを踏襲する経営を行ない、なんら変化がない場合は、その社長の持っているパラダイムは、前任と変わらないということです。
つまり、どんな組織もリーダーの発達段階を超えて進化することはできません。これは、会社、部門、チーム、どの単位についても言うことができます。

例えば、最近は価値観やミッションステートメントの再設定が流行りです。各社これらに積極的に取り組んでいますが、リーダー(組織)が、多元型(グリーン)パラダイムに達していないと、価値観とミッションステートメントの策定にどれだけ力を入れても実際の組織行動は変わらず意味がありません。
なぜなら、ひとつ前の達成型(オレンジ)組織における意思決定の基準は、成功するかしないかだからです。

達成型(オレンジ)組織では、仮にリーダーが、価値観やミッションステートメントを策定したとしても、利益か価値観かを選ばなければならない局面では、利益を選びます。
そのリーダーは達成型(オレンジ)のパラダイムを持っているため、次の発達段階で生まれる慣行や、文化を重視する姿勢を支えられません。
逆に、リーダーが組織の構造、慣行、文化を整えると、そこで働く従業員は今持っていないパラダイムから次の段階へ自然に行動を取るようになります。

企業文化とは?|セールスフォースに学ぶ企業文化の重要性 創業者マーク・ベニオフ著『TRAILBLAZER』

リーダーに変化をもたらすなら『マネトレ』

例えば、順応型(アンバー)のパラダイムを持つマネジャーがいるとすると、そのマネジャーは上意下達の傾向が強く、事細かに指示するはずです。

しかし、ある時トップが交代し多元型(グリーン)組織に変わると、状況は一変します。
部下への権限委譲が求められ、年に2回360度フィードバックの評価を受けるようになります。
これまで経験したことがなかった直属の部下から評価され、色々と指摘されます。
半年ごとに、チームメンバーと膝を突き合わせ会社の価値観に沿った行動ができているか対話することを求められます。
すると、周囲の環境にマネジャーの意識は引き上げられ、多元型(グリーン)パラダイムのスキルと行動をある程度取るようになります。
時間が経つと、その環境のおかげで新しいパラダイムの中に心から溶け込めるようになります。
これこそが組織の神髄で、人々をその気にさせ、実力以上の能力を引き出し、自分だけではできなかったはずの結果を成し遂げさせるパワーなのです。

組織の段階を考慮せずマネジャーにだけ変化を求めても意味がない

ここまで組織の発展段階についてみてきましたが、我々の組織はどの段階にいるのか?と疑問が浮かんだ方も多いかと思います。
日本企業が陥りがちな問題は、組織(リーダー)のパラダイムは達成型(オレンジ)なのに、マネジャーにだけ多元型(グリーン)のマネジメントを求める姿です。

さまざまな研修を施し、マネジャーに変化を促すものの変化が見られない。いつまでたっても権限委譲は進まず、上意下達のマネジメントだ。そんな悩みを抱える企業人事や経営者からのご相談は非常に多いです。
しかし、これまでの内容を踏まえよく考えてみてください。そもそもあなたの会社のリーダーは多元型(グリーン)のパラダイムを身に着けているのでしょうか。トップダウンの組織運営をしていませんか?リーダーが移行できていないパラダイムをマネジャーに求めても、変われないのは当然です。

トップが変えたいと考えて会社を変えようとするなら、マネジメントだけでなく、組織の構造、慣行、文化も同時に変えにいかないと現場レベルに変化は起きません。

個人の価値観の変化、社会の企業に対する要請の変化。企業に求められる組織の形が、多元型(グリーン)組織以降の段階に向かっているのは明らかです。企業が今後も競争力を保ち、優秀な従業員を惹きつけるためには、次の段階に組織を変えていかねばならないことは、多くの経営者、人事が感じています。
そうであれば、中間管理職のマネジメントだけを変えようとするのではなく、それ以外の環境を組織段階に合わせて変えていく組織開発の戦略も同時に必要になるのです。


いかがでしたでしょうか?
次回は、企業人事において必要となる、達成型(オレンジ)組織、多元型(グリーン)組織にフォーカスし、そしていよいよ進化型(ティール)組織の詳細について解説していきます。

参考:『ティール組織 ー マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現』フレデリック・ラルー著

NEXT:【第2回】ティール(進化型)組織について徹底解説|ティール組織の3つの特徴とは?

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