会社と社員のパフォーマンス最大化のための新しいHRの役割「エンプロイー・エクスペリエンス」

最近のDX化の急激な進展や、従来の産業構造やビジネスモデルの急速な変化により、グローバルなHRトレンドとして、会社・社員のパフォーマンス最大化のためにHRの果たすべき役割が、「制度やプロセスの構築」から「エンプロイー・エクスペリエンス(従業員の経験価値:EX)の設計」へとシフトしつつあります。

今回は、日本でも聞くことが多くなったエンプロイー・エクスペリエンスについて、米国の事例を交えながら解説します。

エンプロイー・エクスペリエンス(EX)とは?|従業員の経験価値

エンプロイー・エクスペリエンス(Employee Experience)

エンプロイー・エクスペリエンス(Employee Experience)は、従業員の経験価値と訳されています。
エンプロイー・エクスペリエンスには、下記のようなことが含まれます。
ワークライフバランス、仕事の意義、マネジメント、社員の一体感、経営への信頼、快適な職場環境、報酬、職務適正や職務デザインなどです。
そして、それらをトータルで考え従業員の体験をデザインすることを意味します。

エンプロイー・エクスペリエンスという言葉は、顧客の体験価値の向上を示す言葉として従来から使われているカスタマー・エクスペリエンス(Customer Experience:CX)の対比で生まれました。


はじまりは米国です。先日NASDAQに上場した民宿などの宿泊予約サイトを展開するスタートアップAirbnbのHRリーダーが、自社の顧客であるゲストやホストのエクスペリエンスを向上させるための検討手法(デザイン・シンキング)が、そのまま社内のあらゆる活動にも適用できることに気づき、エンプロイー・エクスペリエンスをデザインすることに取り組んだのがはじまりです。それまでは、自社の社員のエクスペリエンスをデザインするという発想はありませんでした。

結果的に、Airbnbは、米の会社レビューサイトGlassdoorの「社員が選ぶ企業ランキング」で2015年にGoogleを抜き世界で1位になりました。

その実現方法としてエンプロイー・エクスペリエンスへの取り組みが注目を集め、エンプロイー・エクスペリエンスに取り組む企業が急速に広がりました。

欧米でエンプロイー・エクスペリエンスに注目が集まる背景

2019年のDeloitte(米コンサルティングファーム)の米国での調査によると、エンプロイー・エクスペリエンスの改善が重要なテーマであると答えた企業が84%にのぼり、そのうち28%が最も緊急性の高い上位3つの人事テーマのうちの1つと回答しています。

また、MIT(マサチューセッツ工科大学)の調査によれば、優れたエンプロイー・エクスペリエンスを提供している上位25%の企業は、下位25%の企業と比べて、2倍のイノベーション、2倍の顧客満足度、25%の高い利益率を達成しています。


エンプロイー・エクスペリエンスが重視される背景には、以下のようなことがあります。

① 優秀な人材の確保のため

エンプロイー・エクスペリエンス(従業員への経験価値)を意識して、従業員起点での体験をデザインし、その価値を向上させることが、人材市場での競争力に欠かせなくなっています。昨今は優秀な人材ほどエンプロイー・エクスペリエンスを重視する傾向があり、エンプロイー・エクスペリエンスをないがしろにすると、優秀な人材の獲得競争で勝てません。また、転職者は企業からの発信だけでなく、SNSや口コミサイトで現役社員や元社員の情報を収集しています。エンプロイー・エクスペリエンスを重視する姿勢自体が個人から評価されるとともに、企業発信以外の社員ベースの発信を好意的にすることに繋がり、採用競争力の強化に繋がります。

② 企業が「個人に選ばれる」時代への対応

個人が自律的にキャリアを考え、より良い環境を求め、以前より短いサイクルで働く場所を変えること(転職)が当たり前になり、企業の立場は「個人を選ぶ」から「個人に選ばれる」に変化しています。エンプロイー・エクスペリエンスを意識して、従業員起点でマネジメントを考えなければ、他の会社に社員は簡単に移っていってしまうため、持続的な会社の成長にとって欠かせない要素となっています。雇用が流動化すればするほど、会社は社員に選ばれ続ける努力をしなければならず、そのような背景からエンプロイー・エクスペリエンスは非常に重要な意味を持つようになりました。

③ 多様化する従業員を連携させることに注力する必要性

人材の流動性が高まることで、以前より従業員の同質化が難しくなっています。欧米には劣りますが、日本でも雇用の流動化は着実に進んでおり、新卒入社のプロパー社員だらけの状況は過去のものとなりました。

そのため、多様なバックグラウンドを持つ従業員が、お互いの強みを活かし、効果的に連携できるようにする役割が企業に期待されており、そうした連携を意図的につくるために、エンプロイー・エクスペリエンス(従業員の体験を)をデザインする意識が高まっています。

エンプロイー・エクスペリエンス向上のために考えるべき観点

では、どういった観点に注目し、エンプロイー・エクスペリエンスをデザインしていけばよいのでしょうか?

エンプロイー・エクスペリエンスは、ワークライフバランス、仕事の意義、マネジメント、社員の一体感、経営への信頼、快適な職場環境、報酬、職務適正や職務デザインなど、さまざまな要素をトータルで考えデザインしていく必要があるため、考えなければならない領域は多岐に渡ります。

具体的な検討事項の例
  • 会社としての存在意義・価値観の再認識
  • 存在意義・価値観との一貫性がある従業員体験の提供
  • マネジメントの変革(対話型の組織風土の醸成)
    マネジメント変革なら「マネトレ」
  • 職場におけるコミュニケーションデザイン
  • 事務作業などの効率化、自動化
    モバイル対応やクラウド化によるペーパーレス化、ロボティクスを活用した自動化など
  • 健康的な労働環境の整備
  • 評価制度の再設計、パフォーマンスマネジメント
  • 人材育成制度の再設計

エンプロイー・エクスペリエンスへの取り組みの具体例

エンプロイー・エクスペリエンスの向上に取り組んでいる企業の、先進的な取り組みについてご紹介します。

1.Airbnb
Airbnbは、2008年8月に設立され、カリフォルニア州サンフランシスコを拠点とするスタートアップで、1泊のアパート、1週間の城、1か月の別荘など、34,000を超える都市と191か国で展開する宿泊施設のプラットフォーマーです。2020年にNASDAQ上場を果たしました。同社は、米の企業口コミサイトであるGlassdoorの選ぶ「Best place to Work」にも選ばれています。
エンプロイー・エクスペリエンスを生み出し、はじめて実行した同社は、人事をエンプロイーエクスペリエンスと呼んでおり、従業員のライフサイクル全体にわたるエンプロイー・エクスペリエンスの向上に取り組んでいます。

<エンプロイー・エクスペリエンスチームの取り組み例>
・働きやすいワークスペースの設計
・コアバリューの具現化、組織文化の醸成、ダイバーシティ&インクルージョンの実現
・有給のボランティア時間
・包括的な健康保険
・システムやツールを活用したビジネスプロセスの設計
・社員と家族のための休暇制度
・年間旅行と体験クレジット
・報酬や昇給周りの制度づくり
・従業員のキャリア開発や学習の支援
・健康的な食事の提供
・退社する従業員との出口面談

2.Adobe

PhotoshopやIllustratorといったデザインツールの提供で知られる米Adobe。同社は元々はソフトウェアの売り切り型のビジネスモデルでしたが、クラウド化、サブスクリプション型に転換することで大幅な売上げアップを実現し、2015年度に47億9600万ドルだった売上は、2020年には128億6800万ドルまでに成長しています。コロナ下でも売上高が前年比15%増と堅調な業績推移を見せています。
こうしたビジネスモデルの大転換をやり遂げたAdobeは、エンプロイー・エクスペリエンスに力を注いでおり、Airbnb同様、人事をエンプロイーエクスペリエンスチームと呼んでおり、社員全員が能力を最大限に発揮して働けるようにすることで、Adobeの成功を促進することを目指しています。

<エンプロイー・エクスペリエンスチームの取り組み例>
・アドビの価値と文化を社員に伝えていく
・社員とその家族にとって重要な出来事がある場合は休めるよう休暇制度を改善
・社員のキャリアアップを支援する社員Check-in制度
・職場をよりインクルーシブなものにする社員ネットワーク構築
・社員が大切にしているものへの投資
・社員をやる気にさせる作業空間
・社員の意欲を高める制度や環境整備
・キャリアと能力の開発の支援


いかがでしたでしょうか?
日本においても、人材の流動化は進んでおり、個人が1社で勤め上げることを考えなくなってきています。また、テクノロジーやビジネス環境の変化の速さから、企業としても中途採用で自社にないスキルを持った即戦力を採用したいニーズも増えています。
優秀人材の確保、従業員や個人から選ばれるため、多様化する従業員の連携を高めるためには、エンプロイー・エクスペリエンスの観点でのHRの役割はますます重要になります。
また、それらを実行する現場マネジメントの役割もより一層重要になり、そうしたマネジメントの変革のための人材育成の投資も必要になるでしょう。
ぜひ、エンプロイー・エクスペリエンスを意識した人事チームの役割やタスクを考えてみてください。

参考:
https://careers.airbnb.com/?department=employee-experience#jobs
https://www.adobe.com/jp/careers/experience.html
『グローバル・ヒューマン・キャピタル・トレンド 2019 』Deloitte

▶ マネトレは、ミドルマネジャーを起点により良い組織を実現します。「コーチ」と「マネジメントナレッジ」を提供する新しいマネジャー育成・組織改善サービスです。

アポロリンク株式会社(出光興産グループ)
マネジメント人材の育成が組織を強くする鍵 —「自ら考え、行動する」管理職の育成

社名アポロリンク株式会社(出光興産グループ)
事業内容専門商社
従業員数229名

  • 「名選手、名監督にあらず」マネジメント育成方法に大きな課題
  • マネジメント人材育成強化を目的に導入
  • オンラインコーチによってタイムリーなコーチを受けることができる

アポロリンク株式会社は出光興産100%出資のグループ会社であり、カー用品全般を扱う会社として1961年に創業。ギフト事業、直営SS運営、介護事業等の様々な事業領域を広げながら発展してきました。

創業以来、「人の成長」に重きを置きながら、多岐にわたる業務がある中でも個性を生かした力を発揮し、「社会に貢献できる人」へと成長してもらうことを目指した取り組みが進められています。

現在、組織の強化に注力し、経験を積みながら着実に管理職へのステップアップができるキャリアプランを形成するため、社員に対し、様々な研修制度を導入しているそうです。プレイヤーとして確固たるノウハウを身につける機会はあるものの、一方でマネジメント人材の育成の機会や体制がまだまだ不十分であると認識し、「管理職の部下育成の経験不足とノウハウ不足」という課題に直面しています。

今回、アポロリンク株式会社 取締役 企画部部長 高濱秀年さんに、お話を伺いし、管理職主導の新たな組織づくりに挑む、同社の人事戦略について迫りながら解決の糸口を探ります。

 

組織構成の変化から求められる、人事戦略の変革。「マネジメント人材の育成」が組織を強くする鍵。

これまでに貴社が持たれていた、人事戦略や制度にについて教えてください。

元々は社員構成として、出光興産の出向者が社員のほとんどでした。しかし時代も変わり、現在では新卒・中途・転籍・派遣など、様々なキャリアを持つ社員が増えるようになりました。
そのような経緯もあり、社員自身たちで作り上げた企業ビジョンも明確にはなかったのです。又、このような歴史から「教育体制・制度は決して十分なものではない」というのが正直なところでした。
そんな中、一部の社員から、自分達の会社を自分達で創っていきたい、組織をより強化していこうという声が出始めるようになり、「ビジョン委員会」なる組織を立ち上げたり、小集団で自分達で会社の未来を創っていこう、という動きを始めました。
それと併せて人事戦略を一度整理し、階層別の社員教育や組織開発を改めて進めていこうと昨年から動き出しています。

なるほど。では、貴社の組織開発における一番の課題はどういった点でしょうか?

「マネジメント人材の育成」と「ノウハウの伝承」の2点です。
前者の「マネジメント人材の育成」ですが、「名選手、名監督にあらず」という言葉にもあるように、プレイヤーでは活躍できるのに、マネージャーになった途端うまくいかなくなるケースがあります。
役職者の後輩や部下に対するマネジメントが非常に属人化しているため、育成度合いにバラツキが生じていました。
「ノウハウの伝承」も、その結果生まれた課題で、特に営業のポイントは秘事口伝のように、良い先輩に当たれば教えてもらえるが、そうでなければ成長の機会も足りない、といった事態が起きてしまいます。
これらの課題を解決するために、「人を育てる」ことに重点を置き、組織開発を進めていきました。

マネジメント力向上には、一過性ではない継続的な「学び」の機会と実践が必要。

具体的にはどのような取り組みを行ってきましたか?

従業員の満足度を測る「やりがいアンケート」の調査や、役職者向けの研修を行いました。
さらに、企業ビジョンを改めて作ろうと、昨年にはビジョン委員会を立ち上げ、社内の役職者とNo.2を全国から集めて企業ビジョンを作成しました。
この企業ビジョンを作成し、発信したことによって、社員の目指す先が明確になり、一体感が得られたと思います。

研修に関してはどういった形で進めていかれたのですか?

次世代の役職者育成を目指したマネジメント研修を外部に委託し実施してみました。
「マネジメントとは何か?」「強い組織を作るためにマネジャーは何をすればよいのか」というような内容を講義形式で役職者に伝える、という内容でした。

その後の役職者の皆様の反応はどうでしたか?

どの研修もそうだと思いますが、感性の強弱もありますので、研修後、参加者全員が、すぐに行動が変わるということはなかなか期待できません。
行動のヒントとなる何かひとつでも持って帰ってほしいと思っていました。もちろん、パチンとハマった社員もいました。
研修は普段の業務では気づきにくいマネジメントの大切さを伝える良い機会にはなりましたが、やはり一過性のものが多くて、定着は難しいと思います。
何とかフォローできる仕組みを考えなければいけない、継続的かつ、日常的にマネジメントのノウハウを知ることができる環境が今後、必要ではないかと模索していたところ「マネトレ」と出会い、一度チャレンジしてみようと思ったのです。

異なる課題を持つ管理職に対して、パーソナライズされた育成が次なる一手

「マネトレ」が使える・面白いと思ったポイントなどがあれば教えてください。

データ分析を元に、コーチと管理職がやり取りを行なうという点が使えると思いましたね。
例えば、営業所の所長が、現場の課題やマネジメントに関して色々聞きたいことがあっても、「今さら」という気持ちもあり、私やトップ層に聞きづらいこともあると思います。
そこを気軽に自分の考えを伝え、アドバイスを的確にもらえるというのは、日々マネジメントに活かすことができると思っています。

困ったタイミングで相談できるオンラインコーチのサービスについては率直にどういった印象を持たれましたか?

まず、オンラインでいつでも相談できる研修サービスは他に聞いたことがありません。
まだこれから見えてくる良さもどんどん出てくるかと思いますが、年間を通じて、パーソナライズされたコーチをしてもらえるというのは、新しいですし、面白いと思います。

マネトレでフォーカスしている領域はピープルマネジメントと組織マネジメントですが、やはり今後も貴社にとって重要になってくるのでしょうか?

そうですね。外せないです。各部署、営業所にしても7・8人の小さい組織で構成されています。
そこで不協和音といいますか、少しのズレで上手くいかないのは非常に勿体無い。ただ現時点でその組織をまとめる役職者がまだまだ成長しきれていないと考えています。
弊社では「人を育てるということ」を非常に大切にしています。
考え方、行動を成長させ、「自分で考え、自ら行動する」役職者を育てたいと思っています。マネトレがそのきっかけになると確信しています。

タイムリーな課題に対してのコーチによって、身に付くマネジメントノウハウの定着に期待。

今後のマネトレに、どのようなことを期待していますか?

組織をひとつの方向に導くために、自分で考えて、自分で行動できる役職者を一人でも多く作っていきたいと思っています。マネトレには、人だけではなく、組織として上手くいっている成功事例やうまくいっていない失敗事例を共有してもらえたら嬉しいですね。そこから、私たちらしい組織開発を確立させ、伝播させていきたいです。

では最後に、将来的にどのような組織を目指すのか、展望を教えてください。

人に無関心な組織は絶対に上手くいかないと思っています。今後もコミュニケーションがとれた組織を目指していきたいと考えています。マネトレは「お互いが“ちょっかい“を出し合う風土づくり・組織づくり」の一助として使わせていただきたいです。

高濱さん、本日はありがとうごいました!

上司と部下の対話を有意義なものにする方法|ナラティブ・アプローチの実践

1on1を導入する企業が増えていますが、対話を試みるものの、上司と部下ですれ違いが残ってしまうケースは珍しくありません。
お互いのすれ違いを埋めるにはどうしたらよいのでしょうか?
上司と部下の間の溝を埋める解決策として、ナラティブ・アプローチという手法があります。
今回は、上司と部下の対話を有意義なものにする「職場でのナラティブ・アプローチ」について解説します。

ナラティブ・アプローチとは?

ナラティブ(narrative)は、日本語で「物語」や「語る」という意味と、そうした語りを生み出す「解釈の枠組み」の2つの意味があります。
ナラティブ・アプローチは、医療や臨床心理の分野で1990年代に生まれました。

ナラティブ・アプローチが生まれる以前は、医師やカウンセラーなどの専門家が、専門家の立場で患者の問題を解決することが重要であると考えられていました。
「専門家は正しいことが分かるが、患者はそれが分からない」という前提があったためです。
しかし、そのような態度は、患者の苦しみを理解する妨げになっていることに一部の専門家たちが気づきます。
そこで「専門性を一度脇において、患者の話に耳を傾けてみよう」という新たな思想「ナラティブ・アプローチ」が生まれました。

ナラティブ・アプローチは、相手のナラティブ(物語、解釈の枠組み)に着目し、それを理解することを通して解決法を見出していくアプローチ方法です。
対話を通して、どちらかが妥協したりお互いが譲歩しあうではなく、双方の新しい関係性を構築することを目指します。

分かりあえない両者の溝を乗り越える方法であるナラティブ・アプローチは、多くの場面で応用ができます。
職場での「対話」においても非常に有益とされ、近年注目が集まっています。

誰もがそれぞれのナラティブを持っている

ナラティブ(narrative)とは物語と、その物語を生み出す「解釈の枠組み」です。

たとえば、心理療法の現場でカウンセラーが患者の話を聞く際、ナラティブ・アプローチでない従来の方法であれば、患者の言葉に耳を傾けるのは「患者の客観的な状態を把握するため」でした。

ナラティブ・アプローチでは、患者の話を聞くのは「患者の解釈」を理解するために行います。
患者が自分について語るとき、それは事実とは限りません。患者なりの解釈が多く含まれています。
解釈そのものに着目し、カウンセラーと患者で、新しい患者の解釈を構築することができれば、患者の状態が大きく改善されます。

マネジメントに置き換えて考えてみましょう。
上司は部下に対して「指導し評価する」「指示命令をする」ことを役割と認識しているとします。
一方で、部下は上司に対して「リーダーシップの発揮」「人材育成や業務フォロー」を求めています。
上司も部下も、「上司たるものこうであるべき」という暗黙的なナラティブ(解釈の枠組み)を持っている状態です。
そして、ナラティブが違う中で対話するから上手くいかず、それぞれが持っているナラティブと相手が違った言動をすると腹を立てたりしてしまいます。

ナラティブは、仕事上の役割や社会的な立場、世間的な職業規範や置かれている環境・文化によって誰しも形成されます。
自分のナラティブに立って相手を見ていると、相手が間違って見えることがあります。
しかし、どちらかのナラティブが正しいということではなく、それぞれの立場におけるナラティブがあるだけです。

対話において意識するポイント
  • 誰もが自分のナラティブを持っている
  • 相手のナラティブからすると自分が間違っているように見えることがよくある
  • 発言の根拠となる相手のナラティブを理解する

相手なりの正しさがあることを認める

「なぜ上司は自分のことをわかってくれないのか」「なぜメンバーは言うことをきいてくれないのか」そんな思いを持っている人は少なくありません。
この「わかりあえなさ」の背後にあるのは、職場における上司と部下のナラティブ(=解釈の枠組み)の違いです。対立は、「自分が正しくて相手が間違っている」という考えが前提にあり、相手のナラティブを理解しようとしていないことから生まれます。

上司も部下も、考えに至るプロセスが必ずあります。
相手のナラティブを知らずして、自分の考えをただ伝えるだけでは、お互いが異なるナラティブを持っていた場合は何も物事が進みません。
また、あの部署とはいつも意見が対立する、といったケースもあるでしょう。このような時も、両者は異なるナラティブに立って仕事をしている可能性が高いです。

自分の正しさを保留し、意見が違う相手には「相手なりの正しさがある」ことを認めることが、物事を進めるためには必要です。

ナラティブ・アプローチには「聴く」が重要

部下との対話を有意義なものとするナラティブ・アプローチでは、自分の主張をするのではなく「聴く」ことが重要です。

ここでの「聴く」というのは、相手が語っていることを受け止めるだけでなく、相手の状況も含めて相手をよく知ることを意味します。

たとえば対話をしていると、部下が言語化が難しい、まだ言語化できていないことを伝えようとしてうまく伝達できない場面に遭遇します。
その時、明確にできないでいる何かを理解しようと努め、上司はそれを言葉にしてお互いの接点をつくり、部下を理解しようとする姿勢が大切になります。

理解に困ったときは、どう理解したらいいか分からないから教えてくれと、素直に言ってみる。
相手の考え方を聴いても、自分がわからないで困っているならそのことを伝えることが必要です。
そこで違和感があるのなら、その「違和感の存在を認める」ことです。
お互いが分かっていないと同意することから対話の一歩が始まります。

「自分も同じ立場なら、同じような考えや行動をするかもしれない」と受け入れてみると、それまでと全然違ったことを自分も考え、語るようになるかもしれません。

悩みを抱えた相手へのナラティブ・アプローチでの対応方法

部下が悩みを抱えている(硬直した物語にとらわれている)ケースでは、どう対応すればよいでしょうか。

ナラティブ・アプローチでは「問題について相談する人」「解決法を教える人」という上下関係ではなく、本人の語りを出発点に、対話から、本人自身が問題を解決するきっかけを見つけ、考え方が変わっていくことを目指します。
ここでの対話とは、ナラティブに隔たりがあることを理解し、橋をかけるようなイメージです。
下記実践のポイントを参考にしてみてください。

物語の硬直性を変えるナラティブ・アプローチ実践のポイント
  • 語り手の語るナラティブを聞く/問題を抱えている人の悩みを聞き出す
    まずは相手の話をじっくりと聞きます。傾聴の姿勢で否定することなく受け止めます。
  • 問題を表に出す/本人がこだわっている点に注目する
    語られたナラティブから問題を表に出させます。問題が内在化している時は、自分を否定する方向に向かいがちなので、問題を客観視できるようにします。
  • 問を投げかける/角度を変えた質問で本人の見方を変える
  • ナラティブから外れる例外的な事柄を見いだす
    気づいていなかった例外的な事柄を自覚することで、相手は予想していなかった新しい見方を発見することがあります。
  • 新たなナラティブ、オルタナティブ(代替)ストーリーを構築していく
    新しい見方によってオルタナティブストーリー(新たなナラティブ)を構築できれば、本人が問題を乗り越える力を発揮できるようになります。

組織の中の問題は、ほとんどが対話で解決できる

いかがでしたでしょうか?
組織の中で起きる問題は、対立する意見の双方ともに正しいということはよくあります。
表向きの考えや言葉の対立ではなく、なぜお互いにそう考えるのか理解する。
そうすれば、それまでと違う考えやアイデアが生まれたり、具体的な方策が出てくるなど、必ずどこかに接点は見えてくるものです。

お互いに表面的に同意するような姿勢からは、対話は生まれません。
対話をおろそかにしては、部下のやる気は生まれず、何か問題があっても隠れてしまい、生産性は上がりません。
組織でのフラットな対話を生むために、マネジャーは部下が語れる組織風土を自ら率先して作っていきましょう。

参考:『他者と働く 「わかりあえなさ」から始める組織論』宇田川元一著

グローバルなHRトレンド「ウェルビーイング」とは|欧米での事例付き解説

ウェルビーイングとは?

Well-being(ウェルビーイング)とは、フィジカル(身体)、精神、ファイナンシャル、ソーシャル面のトータルで健全である状態を指します。

Well-being(ウェルビーイング)は、幸せと訳されますが、同じ幸せの“Happiness”とは異なります。“Happiness”は感情的で一瞬しか続かない幸せですが、“Well-being”は持続する幸せです。

日本において経営面や人事面でウェルビーイングが使われる場合には、従業員一人ひとりが心身ともに健康的な状態であることが、会社組織としてもプラスに働くという概念として「健康経営」という言葉で使われることが多いです。

※昔から健康経営という言葉を掲げる日本企業はありましたが、現在の潮流である「ウェルビーイング」は、過去の健康経営よりだいぶ広い意味で使われています。


ウェルビーイングには、下記のような効果があると言われています。

ウェルビーイングの効果
  • 社員が健全な状態であることで幸福の度合が高まり、生産性をより向上させることができる。
  • そのような環境を提供している企業と社員との関係は強まり、ポジティブな企業風土の醸成ができる。
  • 従業員のエンゲージメントやリテンションを高め、雇用者としてのブランド強化につながる。

米国で毎年開かれている世界最大のHRカンファレンス「HR Technology Conference」では、既に2017年の基調講演で Josh Bersin氏(世界的に著名なHRアナリスト)が、HRトレンドとしてWell-beingについて言及しており、日本で昨今流行っているエンゲージメント中心の話題は終わり、次のステージとしてWell-beingが議論されていました。


欧米では以前より多くの著名企業がウェルビーイングに取り組んできました。

Deloitteの調査では、米国の66%の企業がウェルビーイング関連のプログラムが雇用者ブランドと企業風土に大きな影響があると考えているという結果が出ています。

グローバル向けのウェルビーイング市場は、年率平均7%で成長しており、2018年の536億ドルから、2026年には907億ドルに拡大すると見込まれています。

本コラムでは、ウェルビーイングの解説と、欧米での現状についてまとめます。

ウェルビーイング導入の背景

欧米でWell-beingが注目された背景には、下記のような理由があります。

(1)従業員の生産性、創造性を高めるための戦略

従業員の生産性や創造性が高まると言われています。ウェルビーイングがパフォーマンス向上に資するということを裏付けるエビデンスは増えつつあり、日本でも幸福学の研究で知られる慶応義塾大学教授の前野隆司氏が「幸福度の高い従業員は、生産性が1.3倍、創造性が3倍である」と述べています。

(2)企業の採用、ブランド強化の必要性から

1981年以降に生まれたミレニアル世代は、ウェルビーイングを重視すると言われており、 ウェルビーイングは給与と同じ報酬の一つとして認識されています。

労働市場の流動性が高い欧米では、SNSの発達により情報入手が容易になったこともあり、ウェルビーイングを整えておかなければ優秀な人材の獲得競争で優位な位置に立てなくなり、ビジネスに影響を及ぼすようになっています。

(3)エンゲージメントやリテンションを高める

ウェルビーイングは、業務・働き方に対する満足度や、企業・組織との一体感・信頼関係を高めるため、社員エンゲージメントやリテンションを高めることに繋がります。

(4)企業に求められる責任の変化

仕事と生活の境界線があいまいになるにつれ、身体・精神・金銭・根源的な価値観等の面でウェルビーイング向上の施策を用意することは、企業責任の一部でもあるという考え方が広がってきました。

ウェルビーイングの構成要素

ギャラップ社(米国の世論調査及びコンサルティングを行う企業)が、150か国以上を対象にグローバル調査を実施したところ、ウェルビーイングについて、5つの異なる統計的要因が明らかになりました。これらの要素は信仰、文化、国籍を越えて普遍的と結論付けられています。

① 仕事の幸福 (Career Wellbeing)

失業状態は肉親の死よりも心理的ダメージが大きく、仕事に熱意を持っていない人は持っている人よりも2倍うつになる。寿命も仕事の幸福次第で変わる。

② 人間関係の幸福(Social Wellbeing)

幸せは伝染する(逆にマイナスも伝染する)。職場に最高の友人がいる人はそうでない人に比べて7倍仕事への熱意があり、毎日6時間以上人と関わる時間があると幸福度が上がり、ストレスが下がる。

③ 経済的な幸福(Financial Wellbeing)

GDPと幸福度は相関性がある。自分が何かしたいと思ったときにそれが出来るお金を持っていることは幸福度を高める。

④ 身体的な幸福(Physical Wellbeing)

週に2日以上運動をしている人は運動していない人に比べて圧倒的にストレスが少なくなり幸せな気分で生活している。眠る前にイライラしていた人も熟睡できれば翌日は平均以上に良い気分になる。

⑤ 地域社会の幸福(Community Wellbeing)

自分が済む地域をより良くするための活動に参加することであなた自身の幸福度が向上する。お金を寄付する行為は他の人に心理的に近づいた気持ちやご褒美をもらった気持ちを起こさせる。


66%の人がこれらの分野の少なくとも1つを満たしていますが、5つ全てで満足しているのはわずか7%という結果でした。


※参考:『幸福の習慣』Tom Rath and Jim Harter

欧米でのウェルビーイングに関する新しい取り組み

フレックスタイム制や在宅勤務、休暇や育休の取りやすさ、長時間労働の是正やオフィス環境の改善といった労働環境の改善といった、従来からからある取り組みに加え、ウェルビーイングを促進するために、デジタルテクノロジーやプラットフォームへの投資を強化する会社が増えています。

ウェルビーイングに関するプログラム・福利厚生は、特に若年層の従業員にとって重要です。

例えば、グローバルでのCRMトップ企業であるSalesforceは、毎年7日のボランティア休暇を従業員に付与し、業務においても目的意識を持つことに役立てています。

国際的な食品メーカーであるダノンは、Dan’Caresプログラムとして、主だった重要疾病リスクをカバーする医療保険を提供したり、育児休暇を設定しています。

● ウェルビーイング・コンテンツ

モバイルを介してオンデマンドでいつでもアクセスできるウェルビーイングに関するコンテンツ(ストレス対処法、子育て、高齢家族のケア、病気の予防・治療法など)の提供。

● カウンセラーやコーチの利用

カウンセラーやコーチに相談することができるプログラムが用意されています。社員はチャットやビデオ会議などにより、それらのリソースへアクセスします。

多くの国の労働人口の過半数を占めるミレニアル世代(おおよそ1981年から1995年までに生まれた世代)が「セルフケア」にかける金額は、ベビーブーマー世代(おおよそ1946年から1964年に生まれた世代)と比べ2倍になっています。

これにより、マインドフルネス思考、認知行動療法、オンラインのパーソナル・コーチングや、 コーチングに関するアプリケーションが急成長しています。

▶ マネジャーにコーチをつけるなら「マネトレ」

● ウェルビーイングの競争

競争の要素を取り入れ、社員のウェルビーイングに関するモチベーション向上を図る方法。エクササイズチャレンジ(例:歩行距離を競う)、マインドフルネス(例:連続で瞑想した日数を競う)など。

ウェアラブルデバイスを展開するFitbitは、米国で企業向けにエクササイズチャレンジを用いたウェルビーイングサービスを提供しています。個人による競争だけでなく、チームでの競争も取り入れ、みんなと楽しいポジティブな経験を共有出来る度合を高めるなど、工夫がされています。

● コミュニティ

社員エンゲージメントやチームビルディングを促進するために、社員がお互いに励まし合い、コミュニケートし、企業とそこで働く人々と繋がりを感じることができるようにするオンライン、オフラインのコミュニティ形成も注目されています。

また、ボランティア活動への参加といった地域社会への貢献も会社のプログラムとして取り入れられています。

日本におけるウェルビーイングの未来

ウェルビーイングは個々人に関することなので、個人のニーズが変化すれば、ウェルビーイングも進化する必要があります。

日本では日本独自のウェルビーイングプログラムの発展があり得るかもしれません。

社員に提供する報酬メニューのオプション的な要素ではなく、企業にとって取り組まなければならないテーマであることは間違いありません。

ウェルビーイングは、企業の採用力、リテンション、社員のエンゲージメント、組織の活力、生産性向上のための不可欠な要素になりつつあります。

人材獲得競争や、企業に求められる責任の変化は日本にも起こっています。

今後は日本においても欧米各国と同様に、エンゲージメント一辺倒で考えるのでなく、ウェルビーイングというより大きな概念の中で企業・人事が取り組んでいく形に変わっていくでしょう。

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OKRとは?|MBOとの違いと特徴について

OKRとは?

OKR

「Objectives and Key Results(目標と主要な結果)」の略称で、 組織が掲げる目標を達成するため、達成目標(Objectives)と主要な成果(Key Results)をリンクさせ、組織・個人の方向性の統一などを目的とした目標管理方法の一つです。

米半導体大手のインテルで誕生し、GoogleやFacebookといったシリコンバレーのIT企業が活用している事などを背景に、日本でもメルカリやfreeeといったスタートアップ企業を中心に導入されています。

日本企業の大半で使われている、ピーター・ドラッカーが提唱したMBO(目標管理制度)とは異なる、比較的新しい目標管理方法です。

OKRの設定には決まったルールはなく、柔軟な設定が可能ですが、ガイドラインがあります。今回はOKRの内容とガイドラインを紹介します。

OKRの特徴とガイドライン

OKRの特徴は、「企業の目標」「所属組織の目標」「個人の目標」をリンクさせており、企業の目標(Object)と個人の目標(Object)の方向性が一致していること。進捗管理を毎週行い、目標設定も毎月や四半期と高い頻度で振り返り柔軟に見直すこと。OKRは目標管理には用いますが、そのまま評価には使わないことです。


従来のMBOでは、会社の目標や組織の目標に関係なく、個人が個人で考えて目標を立てるため、会社や組織の目標と個人の目標は必ずしも一致していませんでした。また、期間中の目標の見直しは行わず、進捗確認・評価に関する振り返りを行うまでの期間は、半期や1年ごとと、非常に間隔が長いものでした。目標管理としてだけでなく、その達成度合いで評価にも反映されます。

OKR

・ 目標設定が組織から個人に紐づいている

まず会社全体のOKRが決まり、それに基づいてその下の事業部門のOKR、次にさらに下のチームのOKR、最終的に個人のOKRまで細分化され設定されます。

・ 達成度は60~70%で成功とする

MBOでは達成度100%を目指す目標を立てますが、OKRでは、達成度が100%にならない60%~70%の達成率になるような、「難しいが不可能ではない」ストレッチした目標を立てるのが良いとされています。

1つの目標につき、成果指標を3個ほど設定します。目標は定性的で構いませんが、具体的で誰もが理解できるものとし、結果(Key Result)は数値化できる定量的なものとし、簡単に評価できるようにします。

・ フィードバックのタイミングが短い

目標(Object)を設定し、1カ月に一度、あるいは四半期に一度といったタイミングでフィードバックを行ます。その時々の状況で目標自体も柔軟に変更を行います。

また、設定した成果(Key Result)に対する進捗管理は毎週行います。1on1などを通して、どのぐらい達成したか、プロセスはどのくらい進んでいるか確認し、都度フィードバックを行います。

・ 評価にOKRをそのまま用いない

OKRを従業員の評価にそのままは用いません。OKRはあくまでも組織の成長、プロジェクトの管理のための目標管理制度として利用します。

理由は、OKRを評価制度としてしまうと、高いレベルでの目標設定ができなくなり、社員が簡単に達成できる目標ばかりを設定するようになるためです。逆に野心的な目標を掲げたが故に、あまり進捗が芳しくない場合、その人は自分の評価が低いと不公平感持つことになってしまいます。

OKRの導入企業の実態としては、OKRは組織が決めた目標なので、人事評価と関連しないわけではありませんが、OKRは評価制度と切り離し、別の評価制度を導入する。OKRを定量評価のベースとするものの、定性評価は別で行うといった形で、OKR自体を評価制度とはせず運用されています。

OKR導入によるメリット・効果

・ 生産性向上

OKRでは、公開された目標を全社員で共有し、目標達成度指標(Key Results)を意識しながら、日々の業務に取り組みます。目標に対する優先事項を明確になるため、日々の業務で目標から外れている無駄やコストを省くことに繋がり、生産性が向上します。

・ メンバー同士のチームワークの向上

社員ひとり一人の目標と結果が共有されるため、チームや個人間の意思疎通を容易にする効果があり、結果としてコミュニケーションを活性化させ全社的な相互連携を生むことに繋がり、社員同士のコミュニケーションを促進します。また、同じ課題感を持っていたり、同じ取り組みをしている同僚が分かり、周囲からのサポートやアイデアが生まれやすくなります。

・ 個人と組織の整合性

OKRでは、会社や組織の目標に紐付いて自分の目標を設定するため、一人ひとりが会社や組織の目標を理解し、どのような行動・成果を期待されているかを理解することで、「社員の向かう方向を一致させ、企業と社員の信頼関係が深まる」といった効果が期待できます。

また、組織の目標と従業員の個人目標を連動させるため、個人が自社にどのように貢献しているかが可視化されやすく、従業員の企業や組織に対する貢献意欲を高められます。

さらに、MBOとは異なり、月1回から四半期に一度の振り返りが実施され、従業員は企業に対する貢献度や業務の納得度を都度確認できるので、従来の目標管理方法と比べても相互的な信頼関係を強化できます。

・ 目標達成率の向上や大きな目標設定が可能

企業として大きな目標を達成しやすくなるという効果も期待できます。OKRでは、目標達成の期待水準が60~70%が良いとされており、もともとの目標が高く設定されています(期待水準100%達成の目標がダメな訳ではない)。

目標の難易度の高さは「企業」「チーム」「個人」全てのOKRで共通しているため、OKRを実施することにより組織全体で高い目標を追い掛けることができ、その結果、期待以上の成果に到達しやすくなるというメリットが期待できます。

OKRとMBO・KPIの違い

OKR以外の目標管理ツールとして、MBO(Management By Objectives(目標による管理))やKPI(Key Performance Indicator(重要業績評価指標))があります。


OKRとMBO、KPIの特徴まとめ

・ MBO(Management By Objectives(目標による管理))

日本企業の多くで以前より使われてきたMBOは、より「評価制度」としての意味合いが強いものです。MBOは報酬の決定にも使われ、定量的・定性的ともに考慮します。目標設定の頻度や進捗管理は、半年〜1年に1回と長いです。

会社や組織といった指揮命令系統によるマネジメントではなく、本人の自主性や自己統制に基づいて目標を設定・達成する点に、大きな特長があります。本人が自分で目標設定を行うため、MBOでは会社や組織の目標と個人の目標は必ずしも連動しません。

・ KPI(Key Performance Indicator(重要業績評価指標))

KPIは、最終目標(KGI)達成にいたるまでのプロセスをチェックする中間指標です。KPIを達成することで最終目標が達成される設計となっているため、100%以上の達成が求められます。

導入の背景

・ ビジネス状況の変化が激しく、マネジメントもそれに対応する必要がある

ビジネス環境の変化のスピードは早く、それに対して企業も柔軟に変化する必要があります。その結果、マネジメントも以前より早いスピードで変化に対応していかなければならなくなりました。そのような背景から、現場では半年前に設定した目標や成果は意味が無くなるということも頻繁に起こるようになりました。

OKRなら従業員と企業の目標のすり合わせや、方向性の統一をした上でビジョン(目標)とミッション(タスク)を柔軟に変化させることができます。

組織の目標が変化した場合、組織・個人の目標と結果も連動して変更可能となります。変化が激しい時代において、その時々の状況に応じて柔軟に目標設定を見直し、タイムリーなフィードバックでメンバーとのズレを修正し、納得感を持って働いてもらうことが可能になる方法なのです。

皆が共通のビジョンに向かって走る必要があり、変化が激しいスタートアップ企業でOKRの導入が相次ぐのは、非常に理に適っているといえます。

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