働きやすさとは|チームの働きやすさを高めるマネジメントの手法

あなたの組織は、メンバーにとって働きやすい環境でしょうか?

働きやすさを意識することで、そこで働くメンバーだけでなく、組織や会社にもメリットがあります。


今回は、働きやすさの重要性や、働きやすい環境を作るためにマネジャーができることについて解説します。


働きやすさとは?|マネジメントにおける重要性

まずは、働きやすさの重要性について、理解を深めたいと思います。

働きがい = 働きやすさ + やりがい

働きがいのある会社ランキングで有名な Great Place to Work®(GPTW)は、

「働きがい=働きやすさ+やりがい」とし、働きやすさは働きがいを高めるための要素と位置づけています。働きやすさが低い状態のままでは、メンバーに働きがいを感じさせることはできません。仕事にやりがいを感じている場合も、それだけでは不満は拭えず、より働きやすい同業他社があれば転職してしまうでしょう。

これは、アメリカの臨床心理学者フレデリック・ハーズバーグが提唱した二要因理論(職務満足および職務不満足を引き起こす要因に関する理論)でも、同様の理解が得られます。

ハーズバーグの二要因理論
  • 衛生要因 : 不足すると不満足を引き起こす要素(働きやすさの要素)
  • 動機づけ要因 : 満たされると満足感を得る要素 (やりがいの要素)

ハーズバーグの二要因理論を見ると、働きやすさ、やりがいにどの要素がどの程度影響するのか分かります。

基本的に働きやすさを高めるためには、衛生要因に対して改善を考えていくことになります。

ただ、図からも読み取れるように、動機づけ要因も著しく低い場合は不満に感じることがあるため注意が必要です。

ずっと同じ仕事の繰り返しで成長を感じない、細かい指示ばかりで仕事を任せてもらえない、できて当たり前と思っているのか頑張りを認めてもらえない、などの状態が続いていないか確認してみましょう。


マネジメントでは、これら衛生要因と動機づけ要因を意識し、その状態に合わせて改善の順番を考える必要があります。

組織や上司に対して不満が強い状態のメンバーを動機づけすることは困難です。そのため、衛生要因で不満が大きい場合は、まずその解消が先決です。

ただし、衛生要因はいくら高めても満足することはありません。大きな不満がない状態(メンバーに理解を得られている状態)を目指すイメージです。

そこまで実現できた時が、動機づけ要因に取り組むタイミングです。

働きやすさを低下させる要因とは

働きやすい環境をつくるには、どのような点に気を付けたら良いのでしょうか。

ハーズバーグの衛生要因を見ると、大きく以下3つのポイントが見えてきます。

マネジャーの影響しやすさが異なるため、それぞれに対してどのように取り組みのが良いか合わせて解説します。


働きやすさを低下させる要因とマネジャーの対処法
  • 人間関係
    マネジャーで改善できる。メンバーとの信頼関係はマネジメントの基礎
     
  • 勤務条件
    マネジャー要因もある。不満の原因を確認し、改善に取り組む
     
  • 制度
    マネジャーで変えにくい。メンバーに説明を尽くし理解を促す

1. 人間関係

マネジメントする上で、メンバーとの信頼関係は必要不可欠です。

信頼関係がない中でメンバーを動かそうとすると、上司という権威を使った強制になることが多く、行きすぎるとパワハラと捉えられかねません。

上司の命令は絶対というマネジメントを受けてきた方もいるかもしれませんが、もうそんな時代ではありません。

メンバー1人1人の価値観の違いを理解し、志向性や能力に合わせて仕事を任せ、適切にサポートし評価してくれる上司を望んでいます。

もし組織に信頼関係が築けていないメンバーがいる場合は、個別コミュニケーションを増やし、メンバーを理解するよう努めましょう。


メンバー同士の人間関係にも気を配りましょう。

メンバーが少ないチームであれば、マネジャーがメンバー全員の相談に乗ることもできるかもしれませんが、マネジメント人数が増えてくると不可能になります。

また、マネジャーはメンバーにとって評価者であるため、相談しづらいと思うこともあるでしょう。

メンバー同士の関係性が良いと、マネジャーの目が届かない時にも、メンバー同士で相談し合い解決することができるようになります。

先輩社員にメンターを任せたり、業務での良い事例共有などで互いの仕事ぶりを知る機会を作ることで、メンバー同士の関係性を徐々に高めていきましょう。


2. 勤務条件

ワークライフバランスや働き方改革が叫ばれ、勤務条件の良化への期待値が高まっています。勤務条件に対する不満の多くは、就業規則や制度の有無の問題ではなく、運用上の問題です。

早帰り推奨(残業抑制)されるが、業務が多すぎてサービス残業せざるを得ない。

上司が遅くまでいるので、先に帰りづらい。上司が休まないので休みづらい。

こういった運用上の問題は、業務の優先度づけやプロセス見直し、マネジャー自身の行動変化で改善できます。

組織の文化や風土、マネジャーとの信頼関係など、組織には様々な力学が働き、意図せずメンバーの不満を引き起こしている可能性もありますので、チームミーティングや1on1などで定期的に不満を聞いてみてください。


3. 制度

目標管理制度、評価制度、給与制度など、様々な制度やルールが存在します。

その多くは、会社全体で意図して決められたもので、マネジャーが意見をすることはできても、容易に変更できるものではありません。

マネジメントを行う上では、制度は動かせないものとして考え、制度をきちんと理解し、制度に沿った説明をしていく意識が重要です。


よくあるのは、マネジャー自身が制度の背景を理解せず、メンバーに「そういう制度だから」と伝えるだけで済ましているケースです。

期初に立てた目標を達成したが、思うほど評価されなかったと感じるメンバーに対して、「業績達成率によるデジタル評価だから」と伝えるだけで説明した気になっていませんか?

メンバーは評価制度を知りたいのではなく、マネジャーと合意した目標を達成したのにきちんと評価されない理由を知りたいのです。

これは目標設定を軽視して形骸化させてしまっている場合や、評価をきちんと説明する場を設けていない場合などによく発生します。

制度自体は動かせないかもしれませんが、それは予めわかっていることなので、その制度を前提としてきちんとメンバーが納得できる説明をしていくことが重要です。


働きやすい組織を作るためのマネジャーの心得

働きやすい組織を作るために、マネジャーは自分で変えられること、変えられないことを理解することが大事です。

そして、自分で変えられることは早々に改善に取り組み、自分で変えられないことは諦めるのではなく、上司や人事へ要望したり、上司のサポートを得て改善策を検討しましょう。


どうしても改善が難しい場合は、自身が改善を試みたこと、改善に至らなかった理由をメンバーにきちんと説明するようにしてみてください。

マネジャーに不満を伝えたのに動いてくれない、改善する気がないと思われ、信頼を損なうことは防ぐことができますし、大抵きちんと説明すればメンバーも理解してくれます。


働きやすさは、働きがいを高めるための一要素。

働きやすさを軽視したまま、メンバーの働きがいを高めることはできません。

ぜひメンバーの声を聞き、働きやすい組織づくりを進めてみてください。

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マネジャーに求められる役割、スキル、マインドセットとは?

マネジャーは英語の「manager」の発音を日本語にしたもので、日本語表記ですとマネジャー、マネージャーとありますが、どちらも意味は同じです。

役職としてのマネジャーと、実際の職務が一致していないケースもままありますが、マネジャーの本来の意味は、企業や組織においてマネジメントを行う役割ということになります。

マネジメントという言葉は、元々は経営学者のピーター・F・ドラッカーが1973年に刊行した著書『マネジメント』で定義・広めた言葉です。日本では、映画化もされたベストセラー『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーのマネジメントを読んだら』をきっかけに有名になりました。


今回は、より実務で使いやすい形で、ミドルマネジャーはどんな役割が求められ、その実行のためにどんなマインドセットやマネジメントスキルを身につける必要があるのか、について解説します。

マネジャーに求められる役割

そもそも、メンバーとは異なる「マネジャーの役割」とは何なのでしょうか?役割としては、主に下記のようなものがあります。


目標の設定・共有

まずは、成果をあげるためのチームの具体的な目標を設定し、それをメンバーに共有し認識してもらわなければなりません。目標が明確になることで、メンバー全員が同じゴールを向けるようになり、チームワークの発揮や協力関係の基礎となります。

チーム全体の目標を設定した後は、その目標に紐づく形で、メンバー一人ひとりの目標も設定していきます。

プロジェクトの管理

プロジェクトや各種業務の進捗状況を把握し、管理・調整し、プロジェクトを進めていかなければなりません。また、メンバーのスキルや強み弱み、志向性や現在の仕事の状況を見極め、チームの中で最適な形で仕事を振り分ける必要があります。

人材育成・指導

企業にとって人材は重要な経営資源です。メンバー一人ひとりの成長は、チームや企業の発展に直接つながります。そのため、メンバーや部下の教育・育成も行わなければなりません。部下の状況を把握して声をかける、適切なタイミングで助言をする、場合によっては自ら率先して手本を示すなど、メンバーが成長できるように導く必要があります。

動機づけ

仕事を通じたコミュニケーションによって、メンバーを動機づけることもマネジャーの役割です。進捗や行動に対して褒めたり、認めることで、メンバーの仕事へのモチベーションを高めることが求められます。

責任者

マネジャーには責任が求められます。メンバーの責任も、マネジャーが最終的な責任を持つことになります。

意思決定者

最終的な意思決定者の役割が求められます。マネジャーが意思決定できなければ、業務は停滞し、メンバーは迷い、チームのパフォーマンスは低下してしまいます。マネジメントが行う意思決定は、組織の将来を左右することもある重要なものです。

評価

マネジャーは、一定の期間であらかじめ決められた評価指標に基づき、メンバーを評価する必要があります。人事考課の意味合いと同時に、良いところ、改善すべきところをフィードバックします。また、メンバーが組織の目標や自分の目標に対する評価指標を認識していることで、マネジャーの管理ではなく、メンバーそれぞれが自己管理を行うことができるようになります。

特に、古い時代のマネジメントしか知らない、10年以上同じマネジメントをしているという方は、業務遂行や評価に篇重しており、動機づけや育成に対する意識が弱い傾向が見られるので注意してください。マネジメントするメンバーの価値観や労働観は大きく変化しており、上記をバランスよく実行しなければ通用しなくなっています。

マネジャーが持つべきマインドセット

役割については大枠理解できたと思います。

では、役割を遂行するにあたって、マネジャーはどういったマインドセット、姿勢で臨めばよいのでしょうか。

組織で成果を出す

多くのマネジャーは、個人としての成果や能力を認められマネジャーになります。

個人として能力が高いというのはもちろんなのですが、個人でやれることには限界があります。「組織で成果を出す」という考えにシフトし、そのために自らの行動を変えていく必要があります。

メンバーや仕事に対する真摯な姿勢、リスペクト

成果を出す力だけでは、実はメンバーにとってあまり尊敬や信頼の対象になりません。例えば、どんなに仕事の能力が高かろうと、メンバーに対するリスペクトがないマネジャーへの評価は低いものです。これでは組織として見た場合に、マネジャーの役割を果たせているとは言えません。

チームをこうしたい、成長してほしいという想いであったり、メンバーに対する人としてのリスペクト。私はこうしたい、顧客や社会に貢献したい、という仕事に対する想い。こうした私心以外の考えや姿勢が、良きマネジャーには求められます。

強い責任感

プロダクトジェクトやチーム、メンバーに関する課題・問題を自分ゴトとして捉え、立ち向かう姿勢が求められます。問題から逃げたり放置してはいけません。

マネジャーに必要なマネジメントスキル|基本的な7つのスキル

マネジャーとしての役割を果たしていくためには、様々なスキルが必要になります。押さえておかなければならない基本的なスキルを紹介します。


● 現在の職務における仕事のスキル

自身の仕事に密着した専門性、スキルを高いレベルで備えていることは大前提となります。マネジャーになる方は、このスキルについてはクリアしているケースが多いです。

● テクニカル・スキル

ロジカルシンキングや、数値を使った分析力、人前で分かりやすく話す能力、基本的なPC操作のような基本的なスキルは、会社が変わっても必要なポータブルスキルであり、欠けていると大きなマイナスになります。

例えば、部下がやればいいという姿勢で、いつまでもEXCELがまともに使えない年配上司や、人前でうまく話すことができない上司は、メンバーから冷ややかな目で見られることはあっても、多くの場合尊敬されることはないでしょう。基本的なビジネススキルを疎かにしてはいけません。

● コミュニケーション・スキル

コミュニケーションが重要と言うと、メンバーとの接点を多く持つことや、メンバーからの不満点のヒアリングなどに着目してしまいがちですが、そうではありません。メンバーの要求を受け止めつつ、こちらの要求を理解させることが重要です。マネジメントは、一方的に相手に考えを押し付けるだけではなく、情報を共有しながらメンバーに理解をさせ、動機づけモチベートし、メンバーを動かすということが必要です。

また、チームをどういう状態に持っていきたいのかを語れず、実務に関する細かい話ばかりしていては、メンバーはついてきません。

▶関連コラム:効果的な部下との対話の方法

● リーダーシップ、影響力

いちメンバーではあまり求められなかったヒューマンスキルは、マネジャーになると重要になります。責任範囲が増えることで、周りを巻き込んで目標達成に導く必要がでてきます。また、組織が求めること、もしくは上司が求めることと現場のギャップを調整する能力も求められます。

▶関連コラム:部下や関係者の協力を得てチームを成功に導く方法

▶関連コラム:マネジャーに必要なスキルとしてのリーダーシップ

● 意思決定力

マネジメントが行う意思決定は、さまざまなステークホルダーに影響を与える重要なものもあります。重要な判断に迫られても適切な判断をくだすことができる。判断しなければならない時に、逃げたり先延ばししたりしない意思決定力が求められます。単に与えられた選択肢から判断するだけでなく、現状を理解、分析し、その結果として判断を下す能力が必要です。

● 分析力・問題解決能力

マネジメントする組織の規模が大きくなればなるほど、さまざまな問題が発生するため、課題に対する的確な分析力が求められ、さらにその問題を解決する策を導き出す問題解決能力が求められます。課題やリスクを理解し、どの様に解決していくのか判断し推進することが求められます。

● 管理・計画能力

組織で成果を上げるためには、個人で成果を上げることと異なり、複数の人が関わり複雑性が高くなります。目標達成のために必要なリソースや期間を計画しなければなりません。そして、その計画が着実に遂行されるよう、プロジェクトを管理する必要があります。

基本を押さえながら自分の強みを活かしたマネジメントを

いかがでしたでしょうか?

全てを完璧にできる人は中々おらず、多くの人は得手不得手があると思います。ただし、どれか一つだけ極端にできない、やっていないという状態は避けなければなりません。マネジメントは様々なスキルを使い分けていかなければ上手く回らないため、まったく実行できていない部分があるとそこが足かせとなり、効果的なマネジメントが行えません。

苦手な分野については、60点、70点取れるよう自己研鑽し、意識して取り組んでいきましょう。その上で、強みをベースに、自分なりのマネジメントを実行していくことが重要です。

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内省支援とは|メンバーの成長を促す振り返りの方法

マネジャーに求められる支援の1つに「内省支援」があります。

業務を進捗させる業務支援、やる気を引き出す精神支援と並ぶ重要な支援で、内省支援はメンバーの成長促進に欠かせません。

しかし、実際の現場では、高い業績目標や業務過多などの影響で目先の業務をこなすことで精一杯になり、振り返りを行っていなかったり、マネジャーからすぐに指示やアドバイスをしてメンバーの内省機会を奪っていたりと、内省支援ができていないケースが多いです。


今回は、内省の意味と、メンバーの成長を促す内省支援のあり方について解説します。

内省とは?|内省と反省の意味の違い

内省とは、自分の考えや行動などを深くかえりみることです。

近い言葉に「反省」がありますが、その違いについて理解されていますか?

内省

自分の考えや行動などを深くかえりみること。反省。

反省

自分の行いをかえりみること。
自分の過去の行為について考察し、批判的な評価を加えること。

内省の説明文に反省があるように、基本的には「省みる」という行為で共通していますが、ニュアンスとして2つの違いが見て取れます。


批判的なニュアンスの有無

反省は、良くない言動を認識して、同じ過ちを繰り返さないようにという批判的なニュアンスを含みますが、内省には批判的なニュアンスはなく、客観的に振り返ることを意味しています。
(良い言動について、何が良かったのか振り返ることも内省です。)


振り返りの「深さ」

反省は、過去の行為について考察するのに対し、内省は「考えや行動などを深く省みる」とあるように、その言動に至った思考や感情まで含めて深く省みることを意味しています。

内省の重要性|経験学習サイクル

内省の目的は、経験を学びに変換し、次の行動に活かすことです。

振り返りをしないのは以ての外ですが、「できた/できなかった」という事実のみ確認する振り返りでは、経験からの学びがほとんど得られません。

成長実感が低い、能力やスキルが向上していないなど、成長の停滞感を感じてしまう1つの原因は、内省ができていないことなのです。


内省の重要性が謳われる背景には、組織行動学者のデービッド・コルブが提唱した「経験→省察→概念化→実践」という4段階からなる経験学習モデルがあります。

教育や人材育成の場面でも、体系化された知識を受動的に習い覚えさせる知識付与型の学習やトレーニングと区別して、実際の経験を通し、省察(≒内省)することでより深く学べるという考え方を「経験学習」と呼んでいます。

経験学習サイクル
  • 経験   :具体的な経験をする
  • 省察   :経験を多様な観点で振り返り、意味づけをする
  • 概念化  :他でも応用できるよう抽象化・概念化し、持論とする
  • 新しい試み:新しい場面で実際に試してみる(能動的に実践)

経験学習サイクルでは、経験を学びに変えるプロセスとして、省察(≒内省)と概念化が重要になります。

「できた/できなかった」の振り返りに留めず、「なぜそうなったか(原因・背景)」「どうすれば上手くできるか(持論・ルール・スキーム)」を考えることで、別の新しい場面でも応用できるノウハウ・スキルとして定着させることができます。

また、その学びを実際に試してみる機会も重要です。内省を経て学びを得た場合は、それを実際に試してみるところまでセットで考えるようにしましょう。

能力に合わせた内省支援|成人発達理論

内省は、客観的に思考や感情まで含めて深く省みることですが、メンバーの能力によっては、客観視することや、原因を深堀りしていくことが苦手で、意識させても能力不足で内省ができないことがあります。

そのためマネジャーは、メンバーの能力に合わせて内省支援を行う必要があります。


「成人発達理論」は、成人してからの知性や意識の発達を考える理論で、メンバーがどの段階か意識することで、必要な内省支援のあり方を検討するのに役立ちます。


① 利己的段階

自己中心的に、自分の関心や欲求を満たすことを考え行動する段階。
相手の立場に立って物事を考える力が不十分。
感情的になりやすく、チームワークが苦手。

<支援の方針> 二人称の視点を育てる
・ 感情的になりやすい相手に対して、自身も感情的になってはいけない
・ 客観視が苦手なので、他者・組織・会社といった視点で考えさせるよう問いかける

② 他者依存段階

組織の意思決定基準に従って行動する段階。
相手の立場で考えられるものの、自分独自の価値体系が不十分。
自分の意見を持たない「指示待ち」に近い。

<支援の方針> 自分の考えを言語化させる
・慣習的に行っている仕事について、その仕事の意味やより良い業務プロセスを考えさせる
・新しく任せる仕事について、進め方をメンバーに考えさせ、その意図を問う
・状況や結果の報告だけの場合、「それを踏まえてどうする?」とメンバーの考えを問う

③ 自己主導段階

自分なりの価値体系や意思決定基準ができ、自律的に行動できる段階。
自らに内省的な問いを発して、自分自身を合理的に律することができる。
一方で、自分の価値観に縛られ、異なる価値観や意見を受け入れにくい。

<支援の方針>  既存の価値観を一度打ち壊す(アンラーン)
・相手には相手なりの価値観や論理があることを認め、自分と異なる意見の裏にある価値観や論理を考えさせる
・既存のやり方を一度崩し、別の手法を検証させる(標準化やテクノロジー活用などのミッションを与える)
・異質な他者との接点を作る(新しいプロジェクト、異業種の交流など)

④ 自己変容段階

多様な価値観や意見を汲み取り、他者と関わり合い互いの成長を促す。
他者の成長支援が自分の成長につながるという考えを持つ。
この段階に達してはじめて、人と組織の永続的な成長を促す、真のリーダーになれる。

成人の7割が②他者依存段階、④自己変容段階は1%未満と言われています(※)。

一般的な企業の人員構成では、新人〜若手メンバーが①、中堅〜ベテランメンバーが②、マネジャーや部長が③、事業トップが④というイメージです。

メンバーがどの段階にあるか把握し、それぞれの能力に合わせた支援を意識してみてください。


※参考:加藤洋平『組織も人も変わることができる!なぜ部下とうまくいかないのか「自他変革」の発達心理学』

内省支援の注意点|シングルループ学習、ダブルループ学習

組織における学習プロセスには、シングルループとダブルループの2種類があります。

振り返りを行っている場合も、その内容がシングルループ学習となり、内省を通した深い学びができていないケースが多いです。

メンバーの成長を促す内省支援では、ダブルループ学習が欠かせないため、注意してください。

シングルループ学習

行動の結果から、問題解決を図り、その過程で学習するという考え方です。

行動した結果が想定より悪かった時に、次は時間を変えてみよう、話す順番を変えてみよう、もっと行動しようなど、行動の質や量を変え、改善を繰り返すことで目標達成を目指していくイメージです。

メンバーの思考力を問わず解決策(how)が思いつけば行動できるので、業績達成目的で行う業務支援でよくみられるループです。


メンバーの学びという面では、試行錯誤する中で様々な経験を積んだり、最後は行動量担保でなんとか目標達成させたりと、行動力や粘り強さの面での成長は望めます。

ただ、経験則が活かせる同じ業務では成果が出せるものの、別の仕事になった際の応用力が身につきにくく、経験に基づき感覚的に行動しているため、言語化したり他者に教えることが苦手になりやすいです。

ダブルループ学習

結果に基づき、行動を改善して目標達成させようとする姿勢はシングルループ同様に持ちつつも、内省することで、行動の良し悪しだけでなく、目的や前提条件にまで戻って深く考え直します。

目的に照らして、
「何が問題か(what)「どこに問題があったか(where)」と問題点を特定し、
「なぜそうなったのか(why)」と原因や背景を考え、
「どうすれば解決・改善できるか(how)」と解決策を導くことで、問題解決力が磨かれます。

また、「どうすれば次(も)上手くできるか」と成功のための意識や行動・ルールなどを持論として抽象化・法則化することで、応用が効くノウハウとして定着させることができます。


いかがでしたでしょうか?


内省は、客観的に、深く省みること。

新人や若手メンバーに対する業務支援ではシングルループ学習も必要ですが、ある程度経験した中堅からベテランメンバーには、ダブルループ学習で内省を促すさせることが必要です。


メンバーの振り返りが、成長につながる内省になっているか。

自身の内省支援は、メンバーの能力にあった支援になっているか。


ぜひ一度、内省してみてください。

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明日から使える会議を活性化させるファシリテーションスキル

社内の会議で上座から席順が決まっており、発言者からの話を聞くだけで、活発な意見交換や議論が生まれない。そんな会議をしていませんか?

マネジャー、リーダーになったものの、そんな会議の経験しかないため、会議進行のスキルを持ち合わせておらず、チーム内の仕事に関するコミュニケーションや、同僚への信頼が高められない方は非常に多いです。

メンバー個人に対するコーチングは研修等で学ぶ方も多いのですが、それだけではチームの関係性を高めることはできません。

そこで有効なのが、ファシリテーションスキルです。

今回は、ファシリテーションについて学んだことがない方に向けて、明日から使えるファシリテーションスキルについて解説します。

ファシリテーションとは個人ではなくチームに対して影響力を発揮するもの

会議やプロジェクトをスムーズに進行させる能力をファシリテーションスキルと言います。

プロジェクト進行に必須のスキルとして学ぶコンサルティングファームの方を除くと、あまり馴染みのない言葉かもしれません。

コーチングが「個人」に対して行うものに対し、ファシリテーションは「チーム」に対して行うものです。

管理職研修等で、コーチングについてはある程度学んでいる、知識がある方が大半ですが、ファシリテーションスキルについては、特段知識を持ち合わせていないという方がかなりの数いらっしゃいます。

マネジャーとメンバーの間の信頼関係を構築した後は、チームとしての信頼関係を作っていく必要がありますが、ここで多くの方がつまずいてしまいます。ファシリテーションスキルは「チーム」の関係性を高めるためになくてはならないものなのです。

コーチング

個人に対して、考えや行動を振り返ることで得られる本人の気づきにより自律的な問題解決を促す

ファシリテーション

チームに対して、メンバー同士の相互作用から得られる気づきにより自律的な問題解決を促す

ファシリテーションスキルとは?|基本的な4つのスキル

ファシリテーションスキルには、基本的な下記4つのスキルがあります。

基本的な4つのスキル
  1. 場のデザインのスキル : 場を作り、繋げる
  2. 対人関係のスキル   : 受け止め、引き出す
  3. 構造化のスキル    : かみ合わせ、整理する
  4. 合意形成のスキル   : まとめ、共有する

1. 場のデザインのスキル

会議やプロジェクトの場を作り、メンバーの対話を促進するためのスキルです。単に人が集まってもチームにはなりません。

目標の共有からチームワークの意識の醸成といった、基礎となるチームビルディングが大きく影響を与えます。

実際の現場では、それだけでは不十分で、雰囲気を作ったり、議論を活性化させるための場の仕組み・配慮が必要です。マネジャー、メンバー、ベテラン、新人とプレッシャーの度合いが大きく異なります。


具体的には下記のような活動です。

① なにを目的にして、誰を集めて、どういうやり方で議論するのか、といった話し合いの前提の設計

② 論点の整理と、メンバーへの共有

③ メンバー同士の関係性を適切にデザインし、話しやすい場をつくる


特に、③の場のデザインについての知識を持っておらず、議論が活発にならないケースが良く見られます。人は環境によって振る舞い方が大きく変わるため、場をデザインするだけでも会議は変わります。

2. 対人関係のスキル

相手の意見を受け止めたり、アイディアを引き出すためのスキルです。

できるだけたくさんの意見や考えを出し合うには、参加者の心理的障壁を取り除き、しっかりと意見を受け止め、発言者を勇気づけ、本当の考えを引き出していかなければなりません。

3. 構造化のスキル

異なる意見をかみ合わせたり、出てきた意見を整理するスキルです。

議論の全体像、個々の意見を分かりやすく整理して、議論すべき論点やどれを採用するのかを絞り込んでいきます。ここではロジカルシンキングのような思考系スキルや、物事を構造化するフレームワークを知っていると、効率よく議論が展開できます。

4. 合意形成のスキル

参加者みんなが納得する形で意見をまとめるスキルです。

どのアイディアを採用するのか決めることはもちろんのこと、参加者全員が程度の差こそあれど納得している状態を作ることが求められます。

この時に避けて通れないのが意見の対立です。なにを基準にして最適な選択肢を選ぶのか、異なる意見をどうやって融合させるのか、決め方の認識を合わせることがファシリテーターに求められます。合意形成がきちんとできると、メンバーの腹落ち度、チームの結束力も高まります。合意ができれば、結論やネクストアクションを明確にします。

明日から使えるファシリテーションスキル|場のデザインのコツ

ここまでファシリテーションスキルについて理論的な部分についてまとめましたが、実際に明日から使えるコツについていくつかご紹介します。

■ 始めに参加者に自分の意見を紙に書かせる

会議が始まって全体に発言を求めると、発言力のある人を中心に会議が進んでしまいます。そのため、まず参加者に自分の意見を紙やポストイット等に書き出してもらうようにし、次にその書かれたことを全員が発表するような進行にします。

こうすることにより、無理なく全員の意見を全員で共有する会議となります。

一度紙に書き出された意見は、誰が言ったかではなく、ひとつの意見として検討されていきます。この方法を使えば、普段、会議においてほとんど発言できない人でも、自分の意見を会議のテーブルに乗せることができ、先輩や偉い人の意見とも平等に検討されます。

■ 上座、下座といった席順にしない

上目の者から席順が決まっている文化の場合は、それをマネジャー自らが崩してしまい、メンバーが座る位置をランダムにしてしまうのも効果的です。そうした理由での位置の固定は若いメンバーを傍観者にしやすく、発言者の偏りを生んでしまいます。場の力はあなどれません。

■ 参加者に意見を整理させる

ファシリテーターが自分で整理するのではなく「参加者に整理させる」のもひとつの方法です。

ファシリテーターは、意見がある程度出てきたら 「皆さん今出された意見を整理するとどうなりますか?」と問いかけます。

参加者が出された意見を整理するのはファシリテーターの仕事と思っている場合、ファシリテーターの動きを期待し、参加者に主体性が生まれません。前段できちんと全員の意見が出せているのであれば、心理的な障壁は無くなっており、整理することにおいても、参加者からどんどん意見が出てくるはずです。参加者の主体性を引き出すためには、ファシリテーターがやってしまわないで、我慢して参加者が整理していく姿を見つめることも有効です。

■ 反対意見を問う言い方をしない

「今の発言に対して意見はありませんか?」と問うてはいけません。この言葉は対立を生んでしまいます。対立的になるのは参加者の仲が悪いせいではなく、会議の進行そのものが、対立を生むようになってしまっているためです。

「他の意見はありませんか?」という聞き方をしましょう。この聞き方では、反対意見を集めるのではなく、できるだけ多様な意見を聞こうとしています。

「今の発言に対して意見はありませんか?」と「他に意見はありませんか?」では、会議の雰囲気が大きく違ってきます。

■ 意見を選ばせるのではなく、ひとつにまとめさせる

意見を整理し、何らかの結論を出すタイミングで、ファシリテーターが意見を選ばせる代わりに、「整理されたものを、ひとつの意見にまとめてください」と言うことは参加者の納得感の醸成に非常に有効です。

「いい意見を選んでください」ではなく、「ひとつの意見にまとめてください」と言うことで、個人の考えた意見から選ぶのではなく、みんなの意見を参考に個人で考えた以上の意見をみんなで考えるという形にすることができます。これは、対立ではなく「共同」を生む進行となり、会議の雰囲気に大きく影響を与えるとともに、参加者の対立を排除し、納得感を作ります。

■ 書いて残す

会議では必ずホワイトボードを使いましょう。オンラインであれば、参加者共通のファイルで書きながら進めましょう。

書いて見える化しなければ、参加者で同じ認識が持てず、食い違った理解のまま話し合いをしているということが起きやすくなります。また、たくさんの出た意見も忘れてしまいます。可視化されていない状態では議論は的を得ず、お互いの言いたいことを理解し合うには圧倒的に効率が悪くなります。

■ 完璧を求めない

合意形成においては、多数決で決めても構いません。多数決で決めても文句が出ない(少ない)状況を目指しましょう。

「合意」の理想とは、「最善の策に全員が納得すること」です。ただし、これは現実的にはかなり難しいと言えます。

「全員で十分に意見を出し合ったのだから、最善の策ではないかもしれないけれど、とにかく全員で一度やってみよう」という合意で良いのです。70%の策かもしれないが、とにかく全員が一致して一度は取り組んでみることができる組織は、お互いを尊重することができ、実行力のあるチームです。

全員が「ここまで話したのだから多数決で決めるしかないな」と納得していることこそが大切です。

早速ファシリテーションスキルを使ってみよう

いかがでしたでしょうか?

ファシリテーションにおける場のデザインは、方法やコツを知ればすぐに実行に移すことが可能です。

チームの関係性を高めるファシリテーションを、早速明日からはじめてみてください。

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