コンプライアンスとは|法令遵守だけではない

あなたはコンプライアンスについて、どの程度意識をしてマネジメントしていますか?

「法律には触れていないから大丈夫」「大きな問題にはならないから大丈夫」という甘い意識が、思いもよらない問題になることもあります。

今回は、組織のマネジメントに視点を置き、マネジャーが意識すべきコンプライアンスについてまとめます。

法令遵守だけではないコンプライアンスの広がり

コンプライアンスとは、企業が法律や規範等の基本的ルールを守って活動することを指します。

様々な企業の不祥事を背景に、企業は厳格なコンプライアンスを求められるようになり、今日では、自主的、積極的にコンプライアンスに取り組む企業が増えました。

こうした背景から、本来コンプライアンスが持つ「法令遵守」以上の意味を含むようになっています。

法令の遵守はもちろんのこと、社内の規定や規則の遵守、さらには、社会規範(倫理や道徳)、企業倫理(企業理念やCSR)なども含めた広い概念です。



SNSの広がりもあり、自身の不用意な発言や行動が、思いもよらぬ形で炎上したり、非難を浴びるという事例も増えています。

社会の目も厳しくなっているため、これまでは大丈夫だった、法律には触れていないという意識で看過していたグレーゾーンがある場合は、早期に見直しが必要です。

チーム運営におけるコンプライアンス意識の重要性

チーム運営におけるコンプライアンス意識は、不祥事や問題を防ぐだけでなく、メンバーの働きがいにも影響します。

「働きがいのある会社」ランキングを発表しているGreat Place to Work Institute Japan(GPTWジャパン)では、働きがいの要素として「信頼」があり、リーダーへの“信用”、従業員の“尊重”や“公正”な扱い、そして仕事への“誇り”と仲間との“連帯感”の5つが重要としています。

コンプライアンス意識の欠如は、メンバーからの信用を低下させたり、仕事への誇りが持てなくなったりと、働きがいを低下させる要因になります。

メンバーと信頼を築き、誇りをもって仕事に取り組んでもらうためにも、コンプライアンスを守る意識は軽視できないと言えるでしょう。


マネジャーは、チームメンバーがコンプライアンスを遵守することを求められますが、他人の言動をコントロールするのは、自分の行動をコントロールする何倍も難しいことです。

コンプライアンスの概念も多岐に広がっているため、1つ1つこれはOK、これはNGと説明するのは難しいです。

そのため、本質を理解し、メンバーが正しく判断して行動できるような意識づけすることが重要です。


コンプライアンス違反が起きるのは、会社のため、組織のため、個人のためなど、利己的な思考が背景にあることが多いです。

「顧客志向」「プロフェッショナリズム」「誠実」などを企業理念にしている企業も多いですが、これらに照らして、「それは顧客のためか?」「プロの仕事か?」「誠実な対応か?」と利他的な視点で判断するようにしてみてください。

組織内でこのような問いかけがされていれば、メンバーもコンプライアンスを意識して正しく判断できるようになってきます。


また、マネジャー自らがルールを守ることも非常に大事です。

役職があがれば、使える予算枠も増え、裁量や影響力も大きくなります。

たとえば、明らかに社内の飲み会なのに領収書をもらう姿を部下が目にしたら、それなら自分もと思ってしまいます。

小さいことかもしれませんが、日頃からマネジャー自身がルールを守っている姿を見せることが何より重要です。

マネジャーが気をつけたいコンプライアンスのポイント

以下では、マネジメントをする中で陥りがちなコンプライアンスの問題についてご紹介します。

何気なく、むしろ良かれと思ってやっていることが、リスクを孕んでいる可能性があります。


① いきすぎた成果主義/高い業績責任

「成果を出せば多少のルール違反は構わない」という考え方で、これは営業組織に起こりがちです。

東芝の不正会計騒動で話題になった「チャレンジ」も、この考え方の弊害の1つです。

マネジャーから明確な指示をしているわけではなくても、高すぎる目標(ノルマ)を設定していたり、成果に応じて給与が変動する場合は、相対的にコンプライアンス意識が下がってしまいます。

問題が起きた際に責任を追及されるのはマネジャーなので、自分の身を守るためにも、ルールをきちんと守った上で目標達成できるように導くことが大切です。


② 安全配慮義務を意識した正しい労務管理

残業が多い、休みが取りづらいという状況も、放置をしていると問題になる可能性があります。

労働契約法では、「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。」という安全配慮義務を定めており、「生命、身体などの安全」には、心(メンタル)の安全や健康も含まれるとされています。

また、2019年から施行された働き方改革法案では、有給消化5日未満の従業員に対して、会社が取得するべき日を指定することが義務付けられています。

人手不足や採用が難航しているなど、マネジャーだけが原因ではないかもしれませんが、上司が休まないから休みづらいといった原因もあります。

いずれにしても、36協定を超えた残業過多や、休日出勤の常態化、有休が取得できない状態があるならば、部長や会社を巻き込み早期に改善策を検討しましょう。


③ パワハラリスクの高まり

2020年6月に「パワハラ防止法」が施行となり、これまで以上にパワハラを指摘されるリスクが高まっています。

パワハラは完全にマネジャー個人に起因する問題であり、自身の行動を見直せば改善できるものです。

セクハラも同様ですが、相手の受け取り方がポイントになるため、疑わしい言動は見直すのが賢明です。

役職のパワーを使ってメンバーを動かすのではなく、メンバー自らが動きたくなる気持ちを起こさせるのが正しいマネジャーの影響力です。

詳しくは、以下のコラムでまとめているので参考にしてみてください。

▶ マネジャーの影響力とは?|部下や関係者の協力を得てチームを成功に導く方法

いかがでしたでしょうか?

コンプライアンスは、法令遵守の枠を越え、社会規範や企業倫理など広い概念として社会的責任を問われるようになっています。

コンプライアンス意識の欠如は、企業やマネジャーのリスクになるだけでなく、組織運営においてはメンバーの働きがいにも悪影響です。

会社の問題、大きな問題にはならないと軽視することなく、大きな問題になる前に自身の言動を見直してみてください。

▶ マネトレは、リーダーやマネジャーのマネジメント活動をサポートし、成長を支援します。「コーチ」と「マネジメントナレッジ」を提供する新しいサービスです。

企業文化とは?|セールスフォースに学ぶ企業文化の重要性 創業者マーク・ベニオフ著『TRAILBLAZER』

企業文化に注目が集まっている

あなたの会社の「企業文化」はどんなものですか?

顧客第一、品質第一、経営理念や行動規範にあるそれらの言葉が思い浮かんだ方もいるかと思います。

一方で、ぱっと思い浮かばなかった方も多いのではないでしょうか。新入社員研修や管理職研修以来、経営理念や行動規範について久しく意識したことがないという方が大半かと思います。

企業文化を形作る理念や行動規範は、時間の経過と共に存在が薄くなってしまっていることが普通です。

しかし今、企業文化が世界的に再注目されています。

ミレニアル世代(1989年~1995年に生まれた世代)に代表される若い従業員は、これまでよりはるかに、自分の仕事に高い目的意識を持たせたいと考えていると言われます。

今回は、時価総額約20兆円、クラウドコンピューティングを開拓し、CRM(顧客関係管理)プラットフォームで世界No1企業であるSalesforce.comを例に上げ、その創業者マーク・ベニオフ著『TRAILBLAZER(トレイルブレイザー)』から、企業文化の重要性について考えます。


企業文化とは?|企業風土とはどう違う?

企業文化と似たものに、企業風土という言葉があります。

企業文化は、企業が打ち出した経営理念や行動規範などをベースに、意識的・無意識的に築き上げたもの。

企業風土は、そこで働く社員の人間関係をベースに自然に生まれるものです。

企業文化とは、企業と社員との間で共有・形成される独自の価値観や文化、規範、ルールのことを指します。

創業時から積み重ねられた事実や、経営方針、マネジメント姿勢等によって形作られており、社員が共通して持つ価値観や行動規範となります。

企業文化はすべてのことに勝る|セールスフォースの事例

セールスフォースの創業者マーク・ベニオフが書いた『TRAILBLAZER(トレイルブレイザー)』では、企業文化について最も多く紙面を割いて語られています。

著者は本書の中で、経営学の大家ピーター・ドラッカーを例に上げ、ドラッカーは「企業文化は戦略に勝る」というルールを定めたが、「企業文化はすべてのことに勝る」とまで述べています。

ここでは、特徴的な部分について一部抜粋します。


“ 一部のビジネスリーダーは、設備の整ったオフィスに笑顔の人が集まっている修正済みの写真を載せた美しいパンフレットに、企業文化を代弁させようとしているようだ。あるいは、食通が喜ぶような食事を提供し、卓球台を設置すれば、企業文化ができたと思っている。

真実はというと、企業文化は単なる特典や無料サービスよりもはるかに重要なものだ。それは基本的に、自分たちのコアバリューを定義して表現する方法と言える。

成長し、その状況を長く維持するには、人目を引くバリューをずらりと並べる必要はなく、ただ本物があればよい。バリューを偽ることはできない。企業文化が偽物や亜流、中途半端や検討違いなものであれば、その会社は最終的に傾いていくだろう。


私達の企業文化は変化のペースに合わせて進化し、自ら息づき、親しみやすくダイナミックになり、私たちを実際に前へ前へと推し進める。将来に渡って繁栄を願う企業にとって、企業文化とそれを定義するバリューは、経済的成功の原動力となるのだ。”

“ 今日の世界は、経済的、社会的、政治的に課題が山積しているので、企業が通常通りに事業を遂行したり転換したりすることはもはや不可能になっている。企業が大きく鳴るほど、また影響を及ぼす対象者が増えるほど、単純に製品で自社を定義づけることが一層難しくなる。

時と共に、従業員、顧客、さらには投資家、パートナー、コミュニティなどのステークホルダーが、あなたが事業を行なうに際してどんな哲学を持っているかを知りたかるだろう。あなたに「志」があるかを問うてくるのだ。”

上記内容から、セールスフォースという会社が、いかに企業文化を大切にしているかが分かります。

同社では独自の企業文化をオハナ(家族)と呼び、コアバリューとして4つのシンプルな言葉を掲げています。

信頼、カスタマーサクセス、イノベーション、平等

▶参考:セールスフォースのコアバリュー


バリューの言葉自体には、他の会社と大きな違いはないでしょう。

しかし、他社とは圧倒的に異なるレベルでそのコアバリューを徹底し、その上にオハナや社会貢献、ボランティア活動、1−1−1−モデルといった企業文化が生まれ、それによって同社は世界有数のエクセレントカンパニーになったのです。

次項ではより理解を深めるため、難しい経営判断が求められる場面で、企業文化を体現するためにセールスフォースの経営陣が取った具体的な事例について解説します。

バリューに反する問題から目を背けてはいけない|強力な企業文化をつくるために

セールスフォースのコアバリューへの態度を示す事例としてこんな事例があります。

同社があるインディアナ州で、「宗教の自由の回復法」というLGBTQを差別することを法的に認める法案を可決した際、マーク・ベニオフはTwitterで即座に「インディアナ州への投資を大幅に削減せざるを得ない」と反対を表明しました。

企業としては、態度を示さなければプラスもマイナスもない。しかし、反対すれば逆の立場の人から反発が出る。そもそもセールスフォースは政治家でもなんでもなく一企業でしかない。

企業内の問題ではなく、社会、政治の問題です。

それでも社員は、この問題にあなたはどうするつもりか?と、リーダーの具体的な行動を求めていたと語っています。

マーク・ベニオフは、「平等」というセールスフォースのコアバリューに反する差別に対し、会社の代表として明確に反対の立場を示しました。

社内の従業員に対してももちろんですが、全ての人々の平等を保証することを、社会に対しても行動で示したのです。

結果的に、この運動はムーブメントとなり、法案は修正されることとなります。

企業文化とは、社員や顧客に対するだけのものではなく、影響範囲はたとえわずかでも、接点のあるステークホルダー全ての人々を対象とするのです。


これは、アメリカ特有の話という訳ではありません。

平等を掲げているのに、管理職の女性比率が低い、役員は全員男性。公平を掲げているのに、社内政治や上司の好き嫌いで評価が決まる。コンプライアンスを掲げているのに、セクハラやパワハラの管理職が野放しにされている、過労死が発生している。品質第一を掲げているのに、データの改ざんが行なわれている。顧客第一を掲げているのに、受注や販売後の顧客の成功に関心がない、誇大広告を行っている。

日本企業においても、近年問題となったバリューに反する問題の例を上げれば枚挙にいとまがありません。

事業を強力に後押しする企業文化を創るためには、バリューの問題に目を背けてはいけないのです。

企業文化のメリット|企業文化が生む効果

企業文化には、様々なメリットがあり、代表的なものとしては下記のようなことが挙げられます。

メリット
  • 社員にとって共通の指針になる
    優先順位や取るべき対応を同じ物差しで判断することができる
      
  • 社員の一体感を生む
    社員間の情報共有や相互協力の活性化、チームワークの改善につながる
      
  • 社員のパフォーマンス・モチベーションが向上する
    企業文化に沿って何ができるかを考え、自発的に行動する社員が増える

企業文化には大きなパワーがあります。

セールスフォースほど強力に企業文化やコアバリューを実現していくのは難しいですが、すぐに始められることもあります。


トップマネジメントであれば、自社の企業文化やコアバリューが何なのか、時代に合っているのかを改めて考える、設定し発信する。バリューに反することを許さない。

ミドルマネジメントであれば、自社の企業文化やコアバリューを理解し、メンバーに共有する、それらに即した意思決定を、評価、承認称賛を行っていく。

そうした行動によって、企業文化を育み・根付かせ、社員の力をまとめ・引き出し、事業成長に繋げていくことができるはずです。

あなたの会社のコアバリューはなんでしょうか?ぜひ改めて考えてみてください。

▶ マネトレは、リーダーやマネジャーのマネジメント活動をサポートし、成長を支援します。「コーチ」と「マネジメントナレッジ」を提供する新しいサービスです。

マネジャーに必要な影響力とは|部下や関係者の協力を得てチームを成功に導く方法

影響力とは、他に働きかけ、考えや動きを変えさせるような力のことです。

マネジャーにとっての影響力は、メンバーや上司、その他関係者に働きかけ、望ましい行動を引き出す力です。

もし、業務プロセスの構築や業務支援をきちんとしているのに思ったように進まない、協力を得られていないと感じる状況なら、影響力を高めることが解決に役立つかもしれません。


今回は、マネジャーの影響力を高める方法(人を動かす秘訣)について解説します。

人を動かす秘訣|みずから動きたくなる気持を起こさせる

マネジメントにおいて、業務フロー構築や業務支援も大事ですが、実際に業務を行うのは他者なので、いかに期待通りに動いてもらえるかも重要な要素です。

名著『人を動かす』(デール・カーネギー)では、「人を動かす秘訣は、みずから動きたくなる気持を起こさせること」と述べられています。この考え方が、影響力を高めるための参考となります。


さらに同書では、人を動かす原則として3点挙げられています。

人を動かす原則

  • 批判/非難するかわりに、相手を理解するよう努める
  • 重要感を持たせる(承認欲求を満たす)
  • 人の立場に身を置く(強い欲求を起させる)

① 批判/非難するかわりに、相手を理解するよう努める

「盗人にも三分の理」という諺がありますが、部下があなたと違う考えや行動をしている場合も、その人なりの理屈があります。

批判/非難してしまうと、反発や反感が生まれるため、行動を改めてほしい場面では逆効果です。

頭ごなしに否定するのではなく、なぜ自分と違う考えに至ったのかを理解することが重要です。

② 重要感を持たせる(承認欲求を満たす)

承認欲求は人の根源的な欲求であり、他者から「自分は重要な存在だ」と認められたいという欲求があります。

承認欲求を満足させる方法は人それぞれ異なりますが、満たす方法は称賛(褒める)だけではありません。

存在承認、意識承認、行動承認、プロセス承認、結果承認など、承認できるポイントを理解しておけば、相手にあった承認が使いこなせるはずです。

▶︎ 関連コラム: 承認・称賛とは?|1on1でも重要な承認と称賛の使い方

③ 人の立場に身を置く(強い欲求を起させる)

人の欲求は承認欲求だけではありません。

例えば、利益あることはやりたいと思い、不利益があるなら回避したいと思います。

火のないところに煙は立たないように、欲する理由がないところに欲求は生まれません。

相手の立場に身を置いて、相手の利益/不利益を考えてみましょう。

影響力の武器|人が要請を受け入れる心理的原理

社会心理学者ロバート・B・チャルディーニの『影響力の武器』では、説得の秘訣として、人が要請を受け入れる心理的原理についてまとめられており、6つの影響力の武器(返報性、コミットメントと一貫性、社会的証明、好意、権威、希少性)について述べられています。

今回は、特にマネジメントに役立つ「返報性」と「コミットメントと一貫性」の2つをご紹介します。

■ 返報性

他者から何らかの恩恵を受けたら、そのお返しをせずにはいられない。「借り」を作った状態は心地悪く感じるというものです。

GIVE&TAKEは一般用語で使われますが、心理学的にも実証されている人の心理です。

スーパーで試食を貰った時に「買わないと悪い」と思ってしまうのが、まさに返報性です。


上司や組織に対しては、部の方針に同調し促進役を買って出たり、会社や部の戦略に沿ったチーム運営で成果を追い求めるのが基本です。

メンバーと一緒になって会社や上司の考えに反発することで、メンバーからは好かれているマネジャーもいますが、これはただの仲良しクラブであり、影響力のないマネジャーになってしまいます。

影響力のあるマネジャーは、会社や部の方針をきちんとチーム運営に組み入れ、実行に移します。方針が自分の考えと異なる場合も、上司に確認したり実行してみた上で、問題点や改善点について意見します。

方針に沿って実行した上での意見であれば、上司も真剣に耳を傾けるはずです。

こうして意見が通るようになり、マネジャーとしての影響力がさらに高まっていくのです。


メンバーに対しては、業務の支援や指導は「当たり前」という感覚になっている可能性があり、効果が薄い場合があります。

その場合は、メンバーの不満を聞きそれを解消するのがおすすめです。

まずは、早期に解消できる不満に対応し変化を感じさせることです。

自身で解決が難しいことや解決に時間がかかりそうなものは、解決しようとする姿勢を見せ、時間がかかる旨を伝えましょう。

返報性はプラスだけでなくマイナスにも働きます。「不満を伝えたのに対応してくれない」と感じさせてしまうと、あなたの依頼に対しても「対応したくない」という感情が芽生えます。

マネジャーは評価者なので、大抵はそれでも対応してくれますが、これは役職のパワーを借りて従わせているだけであり、メンバーが心から動きたいと思っていない状態となってしまいます。


返報性を理解し、相手が快く行動してくれる状態を目指しましょう。


■ コミットメントと一貫性

一度決定を下すと、そのコミットメントと一貫した行動をとり、自身の決定を正当化しようとする心理が働きます。

発言と行動が一致しない人は、裏表がある人だと疑われてしまうため、自動的に一貫性を保つことが習慣化しているのです。


メンバーにコミットメントを求めたい場合に、上司の立場で指示・命令するような伝え方になっていませんか?

同じ業務でも、上司が命令するのではなく、メンバーが自分自身に決めさせることでコミットメントを引き出すことができます。

仕事の任せ方ひとつで、メンバーのやる気は変わります。目的や制約条件はきちんと伝えてブレないようにした上で、細かい部分はメンバー自身で決定させるようにすると効果的です。

▶︎ 関連コラム: 仕事の任せ方|業績達成と育成を両立させるジョブ・アサインメントの方法

影響力を高めるためにマネジャーが意識すべきこと

影響力を高める方法として、心理学的原理を踏まえたポイントをご紹介しました。

マネジャーとして部下や組織を動かす際は、業務をしっかり設計するとともに、人の心理を理解し、自ら動きたいという気持ちにさせることが大事です。


・異なる考えや行動を頭ごなしに否定せず、相手の考えや相手なりの理屈を理解する

・GIVE&TAKE(返報性)を意識し、まず自分が先に何かを提供する(貸しを作る)

・1から10まで指示命令ではなく、相手に決定させることでコミットメントを引き出す

・承認称賛を用いて、相手に重要感を持たせる(承認欲求を満たす)


無意識に実践していることもあるかもしれませんが、改めて意識してみてください。


いかがでしたでしょうか?

今回ご紹介した心理学的原理は、非常に強力なので、うまく活用すれば影響力を高めることができます。

一方で、強力がゆえに、注意も必要です。

ともすれば、間違った方向に人をコントロールすることもできてしまうからです。


ぜひ、自己の利益、自組織の利益など部分最適ではなく、全体最適を考えて影響力を発揮するように意識してみてください。

▶ マネトレは、リーダーやマネジャーのマネジメント活動をサポートし、成長を支援します。「コーチ」と「マネジメントナレッジ」を提供する新しいサービスです。

価値観とは|メンバーのやる気を引き出す価値観理解

多様化時代のマネジメントでは部下の価値観理解は必須

新卒入社した企業で定年まで勤め上げるという働き方は、既に一般的ではなくなりました。雇用は流動化し、キャリアアップのために転職する、組織に属さずフリーランスで仕事をするなど、自身の価値観に合う働き方を選択できるようになりました。

そのため、我慢してまで同じ会社で働き続けたいと考える人は減り、マネジャーにとってはマネジメントの難易度が上がってきています。

ひとりひとりの価値観の違いを前提にしないとマネジメントできない時代へと変わってきたのです。


多様な価値観を持つ部下をマネジメントするためには、ひとりひとりの価値観の違いを認め、理解することが必要です。

今回は、価値観の違いを認めた上で、メンバーの価値観を理解する方法についてご紹介します。


価値観理解はマネジメントの基本|メンバーの働きがいを高める

価値観とは

何に価値を認めるかという考え方。
善悪・好悪などの価値を判断するとき、その根幹をなす物事の見方。

上記が、広辞苑の定義です。

つまり、部下の価値観を理解するとは、部下ひとりひとりが良し悪しをどう判断し、何に価値を感じるかを知ることです。

部下が価値を感じることが分かれば、格段にマネジメントしやすくなります。


例えば、仕事を任せる時。

部下がどんな仕事に価値を感じるかが分かれば、複数ある業務の中からアサインする業務を選べます。

また、任せる際に、動機づけにつながる一言を添えることもできます。


部下の仕事を承認称賛する際にも役立ちます。

相手がポジティブ思考で、主体的で仕事に取り組んでいる場合は、難しい仕事をやり遂げた時、成果が出た時にその結果を称賛するのが良いでしょう。

逆に、あまり自信がなく慎重なタイプの部下は、仕事のプロセス(進め方や考え方)を承認するコミュニケーションが効果的にはたらきます。


このように、部下の価値観に合う仕事を任せ、部下に響く承認称賛ができれば、あなたの組織は部下にとって働きやすく、働きがいを感じる組織になっていきます。


メンバーの価値観を理解する方法|ストレングスファインダー

価値観を理解すると言っても、部下の全てを理解するのは不可能ですし、マネジメントに活かす目的では、全てを理解する必要はありません。

そこで今回は、部下の価値観をパターン化して捉えたり、ツールを用いて理解を促進する方法をご紹介します。


① 4パターンで捉える「ソーシャルスタイル理論」

大まかな傾向を簡易に知りたい場合は、ソーシャルスタイル理論がおすすめです。

ソーシャルスタイル理論は、アメリカの産業心理学者であるデビッド・メリル氏が提唱したコミュニケーションの理論です。人の言動を4つのスタイルに分けて分析し、相手が望ましいと感じる対応を探し、選択する方法として活用されています。

「意見」と「感情」の強弱で4つのタイプに分けるもので、ネット上で無料で診断できるツールもあるので、最初のきっかけとして役立ちます。

ソーシャルスタイル理論
  • ドライビング:意見を主張、感情を抑える。プロセスより結果重視
  • エクスプレッシブ:意見を主張、感情を出す。積極的にチャレンジ
  • アナリティカル:意見を聞く、感情を抑える。慎重に分析して行動
  • エミアブル:意見を聞く、感情を出す。全体の調和を重視

② 34の資質を知る「ストレングスファインダー」

より詳細に部下を理解してマネジメントに活かしたい場合、米Gallup社のストレングスファインダーの活用も有効です。

ストレングスファインダーは、ひとりひとりの強みや才能を発見するのに役立つツールで、アンケートに回答するだけで全4分類・34資質の中から、受験者の強みや資質を発見することができます。

書籍『さあ、才能(自分)に目覚めよう』に付属のアクセスコードや、公式サイト、公式スマホアプリから受験可能です。

ストレングスファインダーの4分類
  • 実行力の資質:物事を成し遂げることが得意
  • 影響力の資質:人に影響を与えることが得意
  • 人間関係構築力の資質:人間関係を構築することが得意
  • 戦略的思考力の資質:頭の中で考えることが得意

ストレングスファインダーの34資質

書籍には、34の資質ごとに、その資質を持つ人の活かし方も解説されています。

例えば、「原点思考」を強みとする人の場合、「この人に何か用件を頼むときには、その経緯を丁寧に説明する。この人は物事の原点や背景が理解できないと、イエスとは言わない。」など。

知っていれば、仕事を任せるタイミングで、背景をしっかり説明しようと思うようになるはずです。


ストレングスファインダーは有料(約2,000円)で、アンケートに30分程度かかるため、部下に強制は難しいと思います。

そのため、まずはマネジャー自身が体験してみて、その結果を開示しながら部下に薦めてみるのが良いでしょう。

部下を理解して組織運営に活かしたいという想いが伝われば、受けてみようと思う部下も少なくないはずです。

ご紹介したツールは、部下の価値観を知るきっかけになりますが、100%正しい結果が出るとは限りません。

そのため、結果を鵜呑みにせず、まずは本人の解釈を聞いてみましょう。

「一部、自分の願望が入っている印象」「この資質は意外だった」など、本人の納得度が低い場合も、本人の解釈を聞くことで部下への理解が深まります。


ぜひ、ツールも活用しながら部下の価値観を理解し、マネジメントに活かしてみてください。

▶ マネトレは、リーダーやマネジャーのマネジメント活動をサポートし、成長を支援します。「コーチ」と「マネジメントナレッジ」を提供する新しいサービスです。

マネジャーは民主的であるべきか?|ボトムアップ、トップダウンの使い方

日本企業の特徴として、上意下達のパワーマネジメントが良くないと言われてきましたが、最近は「部下に聞いてみます」「みんなで決めます」といった民主的な体制を好むマネジャーが増えているようです。

民主的という言葉を聞くとポジティブに感じる方が多いと思いますが、こと成果を出さねばならない会社組織・ビジネスにおけるマネジメントでは弊害もあります。

部下の意見を聞くこと自体は大切なことですが、なんでもかんでもボトムアップではリーダーシップのないマネジャーと見られますし、チームのパフォーマンスは低下してしまいます。マネジャーにはトップダウンが必要な場面もあるからです。


今回は、マネジャーが民主的でありすぎることの弊害と、ボトムアップ、トップダウンのマネジメントの場面による使い分けについて解説していきます。

マネジャーは民主的なだけではいけない

「チームの皆で決めました」マネジャー自身がこうした発言をする際は、注意が必要です。

マネジャーは学級委員ではありませんので、チームの結果に対して責任を負っています。皆で決めようがチームの結果責任はマネジャーです。

そして、多様な意見を尊重することが仕事ではなく、多様な意見がある中でも、目指す目標にチームを向かわせるのがマネジャーの仕事です。

民主的すぎる場合、下記のような弊害が生まれることに留意する必要があります。

①チームが中途半端な方向を向いてしまう

仕事の能力や、モチベーションが異なるメンバーで議論した場合、さまざまな意見が出てくるのは当然です。これを皆の議論の中で着地させようとすると、それなりの形には落ち着きます。

しかし、最も状況を理解し、先を読み、成果を上げる判断ができる能力があるのは、メンバーではなく、リーダーであるマネジャーです。

民主的に出た結果がリーダーの意思決定より優れているわけではないのです。リーダーがすべきことは、自分の意思決定に納得し、フォローしてもらえるように、メンバーと丁寧なコミュニケーションを取ることです。

②コミュニケーションコストが増える(効率性が落ちる)

民主的に決めようとすると、議論が増えていくので、チーム内でのコミュニケーションコストが膨大になります。

これは、仕事のスピードを落とすことに繋がり、業務量や時間的拘束を増やします。

③リーダーシップがない、頼りないと見られる

チームの目標や目的を定める能力はメンバーにないことは普通であり、マネジャーがこれをチームに任せた場合、無責任、頼りないと思われて当然です。任せて良いのは具体的な仕事であって、責任ではありません。

ボトムアップとトップダウンの使い分け|やるべきことはトップダウン、やり方はボトムアップ

では、ボトムアップが有効な場面はどういった場合でしょうか?


やるべきことはトップダウン(リーダーが決める)、やり方はボトムアップ(メンバーが考える)


チームが目指すこと、そのためにやるべきことをリーダーがトップダウンで決めるからこそ、メンバーのボトムアップを効果的に引き出すことができるのです。

本来トップダウンで決めることまでメンバーに決めさせては、チームの方向性は定まらず、パフォーマンスは上がりません。

トップダウン(リーダーが決める)

方針、目標、目的、価値観、評価基準

ボトムアップ(メンバーが考える)

具体的なやり方、進め方、目標の実現方法

リーダーが絶対に自分で決めるべきこと|JALの再生事例

2010年1月の経営破綻から見事復活した日本航空(JAL)。

そのJALの再生において、京セラ創業者の稲盛和夫氏がリードしたことは広く知られています。

企業再生のさまざまな改革を行なう中でまず取り掛かったのが「JALフィロソフィー」と呼ばれるJALの社員に求める行動指針、行動哲学の作成です。

今では、リーダーの行動、現場サービスに至るまで、JALのベースとなっています。

HPにも公開されているJALフィロソフィーには、特に目新しいものは見られません。

それでもトップが指針を明確に示したことで、社員はJALフィロソフィーに基づいて考え、行動するようになり、JALの収益性やサービスレベルは大幅に向上し、見事V字回復を果たしました。


「何をすべきなのか」「どうしてやらなければならないのか」「やりきった先に何があるのか」の決定を部下に任せてはいけません。絶対にリーダーが決める必要があります。

その結果、ボトムアップが有効に機能し、価値あるメンバーの意見や主体性をより引き出すことができるのです。

強いチームをつくるには、トップダウン、ボトムアップ両方のマネジメントが欠かせません。


いかがでしたでしょうか?

あなたはリーダーが決めなければならないことも民主的に決めてしまってはいないでしょうか?

強いチームを作るためには、トップダウン、ボトムアップどちらも必要です。

それぞれの強みを理解し、マネジメントに役立てていきましょう。

▶ マネトレは、リーダーやマネジャーのマネジメント活動をサポートし、成長を支援します。「コーチ」と「マネジメントナレッジ」を提供する新しいサービスです。