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コーチングとティーチングの使い分け|人材育成における効果的な場面を理解する
コーチングアプローチは万能ではない
昨今1on1を取り入れる企業が増え、マネジメントにおいてメンバーとの対話を重視する考え方が広まっています。
それに伴い、マネジメントにおける人材育成手法として、管理職にコーチングを学ばせる企業も増えています。
一方で、個人がコーチを受けるのとは異なり、組織においてマネジメントを行う際は、コーチングが適さない場面もあります。
コーチングは非常に有効な手法であるものの、部下のマネジメントにおいて何にでも使える万能薬ではありません。
なまじコーチングを学んだばかり、コーチングを多用し失敗するマネジャーも出てきています。
では、どうやって使い分ければいいのでしょうか?今回は、マネジメントにおけるコーチングとティーチングの使い分け、注意点について解説します。
コーチングは前向きに振り返りをさせやすい
従来からあるティーチングは、できる人ができない人に教える指導法です。「自分が持っている知識、技術、経験などを相手に伝えること」と定義することができます。部下に知識や経験がない状態でも、学びを得ることができるのがメリットです。
この場合、基本的に上司から部下に対する一方向のコミュニケーションとなります。
ティーチングを受ける部下は学びを得る一方で、コミュニケーションが一方向のため、自らの発言は減り、萎縮しやすくなります。部下の持つ自信の量を減らす方向に働きます。
一方で、コーチングとは、基本的に教えたりアドバイスしたりはせず、「問いかけて聞く」という対話によるコミュニケーションです。上司が問いを投げ、部下が答えるという双方向のコミュニケーションとなります。
教えてもらうのではなく、問いかけを通して、自ら気づき、学びにつなげる。
部下の内省において、非常に役に立つ手法です。
コーチングを受ける部下は、受け身の感覚が生まれにくく、未来に向けた前向きな思考を持って終わることができます。
例えば、「ここが駄目だった」「こうした方がよい」と指摘するティーチングではなく、「100点満点中どのくらいのできだろう?」「どうしたらもっと上手くやれたと思う?」というコーチング的手法で問いかけられた方が、自発的に答えることができます。
次に向けて前向きな気持ちを持てると感じられると思います。
コーチングは、部下に次につながる振り返りを促すことができるのです。
コーチングで陥いりやすい罠
一方で、コーチングも万能ではありません。
部下にとって、難しすぎるもの、知識のない新しいものに対し行っても、内省ができないので部下は学びを得られません。
例えば、経験やスキルがない新人に「どうしたら良くできる?」「目標はどうしたい?」と問いかけても、前提となる知識がないため答えようがありません。
ある事柄に対して、何が良くて、何がダメなのか、が分かるレベルでないとコーチングはうまく機能しません。
このような場合は、ティーチングの方が適しています。
ある大手企業で課長職のAさんは、会社が行ったコーチング研修でその有効性を感じ、部下との対話においてコーチングを積極的に利用していました。
一方で、マネトレでAさんのチームのサーベイを取ったところ、あまり組織コンディションは高くありません。何が原因だったのでしょうか?
原因は、Aさんがコーチングを多用しすぎていたことでした。
Aさんは、コーチング研修で自分が気づきを得れたこと、部下に問いを投げ気づかせる行為に達成感を感じており、なんでもかんでもコーチング的手法を用いていたのです。
結果的に、難度が高いことに取り組む部下のストレスになり、適切な助言がもらえないとAさんへの信頼を損なわせていました。
また、コーチングで個人がやりたいことが引き出されたものの、会社やチームの方針や価値観、判断基準等の「伝える」が重視される場面でのティーチングが欠けていたため、メンバーの目標とチーム・会社の目標との結びつきを作ったり、チームが進むベクトルを合わせることができておらず不和が生じていました。
個人を尊重しつつ、組織の協業を通じて会社が目指す方向に導くといったマネジメントの重要な部分は、上司からの情報提供(ティーチング)も欠かせません。
コーチングだけでは、組織の構成員はバラバラに動いてしまい、お互いの無関心やハレーションを生んでしまいます。チームではなくただの集団になってしまうのです。
コーチングとティーチングは使い分けが必要
コーチングは非常に有効な手法ですが、こと組織のマネジメントで使うには、適した場面をきちんと理解しておく必要があります。
日本の旧来型のマネジメントは、ティーチングやパワーマネジメントが強すぎ、時代遅れとなっています。
その反動もあって、昨今コーチングに注目が集まっています。しかし、ティーチングがダメな手法では決してありません。
むしろ、適切なティーチングがあり、部下が自分で考えられる情報を持っているからこそ、コーチングが有効に機能します。
場面によって使い分けが必要です。
コーチングとティーチングが必要な場面を見極めながら、コーチングが効果を発揮する場面では積極的にコーチングを活用していきましょう。
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