年上部下のマネジメントのコツ|年上部下への対処法
年上部下のマネジメントのコツ|年上部下への対処法

年上部下への対処法|年上部下のマネジメントのコツ

「年上の部下へのマネジメントに困っている」「年上部下が言うことを聞いてくれない」そんな相談がコーチによく寄せられるようになりました。
よく知った先輩や、元上司が部下になることもあります。
このような場合、相手は良い気持ちはしないことの方が多く、マネジャーが苦労するのは当然と言えます。
日本企業でも、年功序列での人材登用は崩れてきています。役職定年制を設けている企業も多く、年上部下を持つマネジャーが増えました。
一方で、文化や制度的にマネジメントが難しい年上部下の対応は、年下部下と同じようにはいかないことが多く、対応に困っているマネジャーが散見されます。
今回は、今後も増えていくであろう「年上部下のマネジメント」のコツをご紹介します。

年上部下のマネジメントが難しいのは構造的な問題|やる気のない年上部下はどこにでも発生する

前提として、年上部下のマネジメントが難しい、やる気のない年上部下が発生するといった背景には、構造的な問題があります。

1つ目は、会社の制度によるものです。
年配社員は、もう自分の先が見えています。自分より年下のあなたの部下になった時点で、もはや昇進は望めません。また、役職定年であれば、今後給与も地位も上がることはないわけです。
これからどんなに頑張ろうとも、自分の待遇は変わらず何も得るものはない。もうこの先どうなるかは見えている。これが、年配の部下が問題児になってしまう理由です。
仕事でのアップサイドが見えないため仕事にやる気を持てず、どうせ同じ給料なら楽をしたいと仕事を受けたくない心理が働きます。彼らは定年退職を夢見て、ひたすら残りの会社人生をやり過ごそうとします。

2つ目は、日本特有の解雇規制によるものです。
日本では、企業による社員の解雇が非常に厳しく制限されており、余程のことがない限り社員を解雇することが出来ません。そのため、年上部下は会社に貢献しなくても居続けることができてしまいます。
貢献し続けなければ解雇されるかもしれない、成長し続けなければ解雇されるかもしれない、そういった危機感を持ち合わせていないのです。
例えば、上司の言うことを聞かない、パフォーマンスが悪い部下がいた場合、年上だろうが年下だろうが海外であれば解雇されてしまいます。
日本ではそのようなことがないため、会社の制度的な要因でモチベーションを無くした年上部下は、もう一生懸命働こうとしません。
自分本位で会社に貢献しようとしない、年下上司の言うことを聞かない自分勝手な年上部下が、大量に生まれてしまうのは、こうした解雇規制が要因としてあります。

3つ目は、文化的な背景によるものです。
日本は目上の人を敬う儒教文化が根付いています。
先輩後輩の上下関係が厳しい、上座下座がある、こうした考えは、人間関係には上下があるという儒教による影響を色濃く反映した文化です。
例えば、キリスト教では神の下では皆平等です。もちろん、上司との上下関係や、老人を敬うといったことはありますが、先輩後輩や、ちょっと歳が離れているといったことで敬う文化はありません。
日本人は「年下の言うことは聞けない、聞きたくない」「オレの方が先輩だから偉い」そういった能力と関係がないところでの上下関係が、これまでの教育や仕事の中で育まれ、潜在意識として染み付いています。
こうした文化的な背景が、年上部下のマネジメントを難しくしています。

あなたが年上部下のマネジメントに苦労している場合、マネジメントも一定要因としてあるかもしれませんが、大部分は構造的な問題、外部要因によるものです。
マネジャーの中には悩んで思い詰めてしまう方もいますが、あなただけの責任ではないと認識していただければと思います。

年上部下との接し方の基本|立場は上だが、人生経験は下である

年上部下のマネジメントで持たなければならない基本スタンスは「立場は上だが、人生経験は下である」というスタンスです。自分が偉くなったのではなく、自分の役割が変わったと捉えましょう。
上司としての立場をしっかりと示しつつ、先輩を敬う姿勢を見せる。このバランスが大切です。
舐められてはいけないと上から感を出してしまうのはいけません。
目上の人に対する敬意を欠いてもいけません。
だからといって、遠慮しすぎて上司としてきちんとモノが言えないのも問題です。
難しい立ち位置ですが、上司の立場と、目上を敬う気持ちの両方を意識した言動を心がけ、年上部下と接していきましょう。

指示の出し方|遠慮しすぎて曖昧な指示を出してはいけない

年上部下は経験と自信があるので、自由を行使しがちです。
明確に指示を出さないと、マネジャーの認識とズレたアウトプットになることがよくあります。ゴールは明確に示しましょう。
ただし、実力のある方であれば手段はある程度任せてしまっても構いません。年齢を重ねていても実力の無い方もいるので、その場合は手段をまるっと任せてしまうのは危険です。
どのような仕事の任せ方が良いか、本人と話しながらしっかりと決めて業務を任せるようにしましょう。

また、年下上司を舐めている場合は、指示であることを明確に伝わるようにしないと、依頼した仕事が対応されないことがあります。
お願いや相談だと思われると無視されることがあるため、「何を(What)」「どのように(How)」「いつまでに(When)」を明確にして、依頼だとハッキリ分かる形で指示しましょう。

特に、流されやすいのが納期です。
明確にし合意しておかないと、年下上司の依頼を後回しにする人もいます。本人に宣言させても良いですし、上司としての希望を伝え合意を取っても構いません。
納期が決まったら忘れられないように、中間報告や結果報告の予定を、相手の予定表にすぐ投げてしまいましょう。

コーチングを活用する|経験があるからこそ何かしら言いたい

コーチングアプローチで、相手への問いかけを使って、やり方や期限を設定するのは効果的です。年上部下は経験があるからこそ何かしら言いたいこと、自分の意見があることが多いためです。
何が問題だと思いますか(原因)?どうしたらよいと思いますか(解決策)?どうやって進めていくべきでしょうか(具体化)?など問いを使って導けば、上から感を出さずに(指示や命令感を出さずに)導くことができます。

ただし、コーチングを活用するには注意事項があります。
それは、あなたの「上司としての判断や能力」について、年上部下からある程度認められていないと、使ってはいけないということです。


「上司部下の関係においては」、あなたの上司としての判断や能力について相手が全く認めていない場合、コーチングが機能しません。
年下部下の場合は、自分の方が目上のため、文化的背景や経験から上司は一定の敬意を持って見られており、最初からコーチングが機能することも多いです。
しかし、年上部下の場合は違います。
年上部下は、年下の上司に対してそうした感覚を持っていません。そのため、あなたが能力を示さなければ、あなたからのコーチング的アプローチを素直に受け取ってはくれません。
このような状態で相談や報告に対し「どうすべきと思いますか?」のように問いかけると、「能力がない」「指示・判断できない人」「上司の責任を放棄している」といった出来ないレッテルを貼られ、信頼を損ねてしまいます。

コーチングはマネジメントにおいて非常に強力なツールのため、管理職登用の際に研修を受けることも多いのですが、年上部下を想定した内容はまずありません。
そのため、良かれと思って年上部下に対してもコーチングを利用し、逆に信頼を失ってしまい困っているケースが見られます。

信頼を得るまでできていなくても、「こいつは上司としての判断能力やスキルをまあまあ持ってるな」くらいは年上部下を認めさせていないと、コーチングアプローチはただマイナスに働くだけになってしまいます。
年上部下との関係性の序盤では、まず自分の考えや判断を示しましょう。最初からコーチングを使うことは避けた方が無難です。
「私はこう考えていますが、◯◯さんはどう思いますか?」のように自身の考えや判断を示した上で、相手に意見を求める程度に留め、自分の判断能力や業務スキルをきちんと相手に示すようにしましょう。
自分の仕事の能力に対する信任を得た上で、コーチングを使って関係性をつくっていくことが重要です。

報告、相談のタイミングを明示する


年下上司に報告や相談をするのは、年上部下からすると嫌な行為です。
報告とは上に対してするものという意識があるため、相手に報告をするというのは、相手が上だと認識することになります。
相談するのは自分で解決できないと認めることになります。
当然年上部下からすると心理的に嫌です。そのため、報告や相談は放っておくとあまりこなくなります。

いつ、どんなタイミングで報告、相談がほしいか予め明示しておきましょう。そして、すぐに相手の予定表に報告タイミングを投げて忘れられないようにしょう。

報告、相談のタイミングの明示は、テレワークマネジメントでも重要であり、以前まとめた下記が手法として参考になります。 

(参考)テレワークマネジメントのコツ

褒めるにも注意が必要|感謝を使う

「○○さんは仕事が正確ですね」「〇〇さんは仕事が早いですね」といった形で褒めると、相手は評価されている感を感じます。
年下上司からそう言われると、年下に褒められるということに心理的な抵抗感、複雑な感情があり、素直に喜べません。
そのため、承認称賛したい場面では、感謝を使いましょう。
「仕事が早くて助かりました、ありがとうございます」「仕事が正確で効率的に進めることが出来ました、ありがとうございます」
こうした、アウトプットに対して生まれた事実(良かった結果)と、感謝を組み合わせると、上司から評価されている感が出ないため、年下上司の言葉を素直に受け取れます。

注意する際は別室で|メンツを潰さないように配慮する

メンバーの前で、年上部下を指導すると、年上部下のメンツをひどく傷つけます。
これでは相手の恨みを買うことはあっても、指導の内容は相手の頭に入らず、本来の目的が果たせません。
相手は反撃してくるでしょうし、反抗心を持つだけになってしまいます。
そのため、年上部下を指導や注意する際は、場所を移し行うようにしてください。
ただし、年上部下がチーム全体に悪影響を与えており、個別注意をしているが中々改善されない場合や、指導しないことがメンバーに放置として捉えられてしまうような事象の場合は、人前で注意しても構いません。
基本は場所を移して行うようにしましょう。

目標設定と評価のコツ|あなたでなく会社のシステムとして要求する

年上部下は、新たな仕事は避けたい、頑張りたくない、という心理があるので、本人に任せると低い目標を設定しようとする傾向があります。
目標設定はチームとの接続を示し合理的に要求しましょう。
マネジャーがチームの目標を明示し、それを達成するためにあなたには何をしてもらわないといけないか、チームと個人を接続します。
そして、それを抽象的な言葉でなく、具体的な数字で計測できる形に落とし込みましょう。
年上部下の場合は本人にモチベーションがないことが多いため、上司の感想やお願いのような感覚的と捉えられるものだと真剣に取り合わずうまくいきません。
会社の指示として合意せざるを得ないような形で、合理的にやってほしいことを説明し、計測できる具体的な目標設定を行いましょう。
(参考)目標設定のポイントSMART

評価に関しては、会社の制度上こう判断していると、会社で決められたシステムに沿って判断をしていることを強調しましょう。
あなたという年下上司の考えや感覚で評価していると感じられると、年上部下は納得しません。
制度やシステムに則って、客観的に判断していると相手に感じさせるように伝えましょう。

チームへ悪影響を与える年上部下への対処法

年上部下が年下上司のいないところで悪口を言っている。そのような自分に関することの場合は、放っておきましょう。
面と向かって話してもしこりが残るだけです。
自分は言っていない、誰から聞いたのか?という話になっても困ります。
上司としてしっかりとチームのマネジメントを行うだけです。知らないふりで何の問題もありません。

一方で、チーム方針や全体に関わることをメンバーに吹聴し、チームにマイナスの影響を与えているようなら是正します。
この場合、オープンな場で本人に不満を言わせるようにします。
例えば、チームミーテイングで、本人に質問して話を振る。議題として挙げ、メンバーの前で話し合いを行う。このような場で、上司としてきちんと説明しましょう。
もしオープンな場で、何ら意見を言わないなら、放っておきましょう。
他のメンバーは、陰で色々言ってたのに皆の前では言わないのかと呆れるだけです。そんな人に影響力は生まれません。影響力もない人の話は気にしなければ良いだけになります。

年上部下が言うことを聞かなかったり、ルールに従わなかった場合は注意し続けましょう。
放置してしまうと他のメンバーに悪影響が出る可能性があります。また、たいてい注意されなくなると行動はエスカレートします。
もし、他のメンバーに悪影響が出てしまい同調する人が出たら、その人に対しても同様に注意しましょう。「〇〇さんもやっている」と言われたら、「○○さんにも注意している。君はあの人のようになりたいの?」と問いかけましょう。間違いなく「なりたくない」と答えるはずです。

最終手段は、上司も含めて話し合いの場を持つことになります。
実際に行動に移す前に、これ以上続けるようであれば上司に相談し対応を取ると伝えても良いでしょう。
それで行動を改める可能性もあります。
上司も含めて厳しい話し合いの場を持つ際は、下記を参考に、起きている問題の事実をしっかり記録し、上司に伝えましょう。
(参考)勤務態度に問題がある部下への対処法

年上部下にやる気を持って働いてもらうには

人事主導でキャリア面談やキャリア教育を行ったり、シニアを活用する制度を作って対外的にPRしている例はありますが、それも成果の実情は芳しくないようです。
一方で、組織単位ではシニア社員が活躍している組織はいくつもあり、立教大学 経営学部 田中聡助教授の調査では、本人の行動特性として下記のような傾向が見られたそうです。
こうした行動特性を本人が根本に持っており、かつそうした行動特性が表れる環境をマネジャーが用意してあげることができれば、意図的にモチベーション向上に繋げられる可能性があります。

1. 仕事を意味づける
自分にとってのやりがいや社会的意義という観点から仕事の意味を捉え直すこと

2. まずやってみる
失敗を恐れずに、新しい仕事や役割に積極的にチャレンジしようとすること

3. 学びを活かす
仕事経験を振り返り、そこで得た教訓を自論化して次の場面でも適応しようとすること。行動しっぱなしにせず、経験からの学びを振り返る

4. 自ら人と関わる
関わる人の範囲を限定せず、積極的に多様な人と関わり、異なる主張や意見を引き出す役割を果たすこと

5. 年下とうまくやる
年下の仕事相手とも年齢差を気にすることなく、対等なパートナーとして仕事を進めようとすること

また、下記にマネトレ利用者で、年上部下が活躍しているケースをご紹介します。

・役割を与え、居場所をつくる

実は、年上部下もチームに居にくいのかもしれません。
役割を与え、居場所を作ることで活躍している事例があります。

特に、部門間の調整役、人脈を活用する役割は適任のようです。
年上部下は、マネジャー以上に社内、社外にさまざまな人脈を持っていることがあります。
そうした、これまでの実績や経験を生かした役割で活躍する例が見られます。

・得意なことを任せる

年上部下は、成長へのモチベーションがないことが多く、新しいことに取り組むのを避ける傾向があります。
そのような場合、割り切って得意なことを任せるというのが、お互いにとって良いケースもあるようです。

・育成の役割を任せる

自身の知見を若手に継承したいなど、育成に前向きな方では、若手の育成で活躍している例が見られます。
ただし、若手は出来る人に指導を受けたいと考えているため、スキルや教えるマインドのない人を後進指導にあてると、若手にとってマイナスに働いてしまいます。
このマイナス影響の方が会社や組織として中長期でダメージが大きいため、後進育成の役割は慎重に判断しましょう。

年上部下に成長意欲を持たせるには?

年上部下に成長意欲を持ってもらうにはどうしたらいいでしょうか?そうしたご相談をいただくこともあります。
ここまで年上部下のマネジメントのコツについて色々とご紹介しましたが、残念ながらマネジメントによって年上部下に成長意欲を持ってもらうことはほとんど期待できません。

なぜなら、年上部下にとって仕事の多くは慣れたものです。一通りのことができる状態で成長実感を感じるのは無理があります。
年下上司についてる時点で自分の昇進はもうありません。会社からの残酷な評価であり職場での未来を感じようがないでしょう。
頑張っても頑張らなくても、リターンとしては変わりません。定年までのらりくらいと過ごした方が楽です。

そうした構造的な問題がある中、マネジメントによって年上部下に成長意欲を持たせるのはとても難しいのです。
そんな力はあなたにも、他のマネジャーにもありません。相手からしたら大きなお世話です。

中には成長意欲を持っている年上部下もいます。しかしそれは稀です。
先に述べたような方法で、上司として後押しできることもあるかもしれませんが、会社単位で大きく成功している例も見当たらないことから、年上部下その人の資質による部分が大きいというのが事実でしょう。
育成やチームへの貢献等、何らかのやりがいを持って働ける状態をつくること以上に、成長意欲を持たせることは難しいと言えます。


いかがでしたでしょうか?
年上部下と一言で言っても、さまざまな方がいます。今回ご紹介した手法も、人によって効果的なこともあれば、そうでないこともあるでしょう。
年上部下のマネジメントは、日本企業が置かれている構造的な問題が背景にあるため、とても難しいものです。
本来、会社の制度や雇用制度の面で対処すべき部分も多く、マネジメントだけで限界があるのも事実です。
相手の態度によっては、ある程度妥協する、諦める、厳しく対処する、といった本意ではない行動を取らなければならないケースもあります。
もし、どうしても対処が難しい場合は、自分ひとりで悩まず、適切に上司や会社と相談し、協力を得ながら対処していきましょう。
今回ご紹介したさまざまな年上部下のマネジメントのコツが、年配社員や年上部下に悩んでいるマネジャーの皆さんのお役にたてば幸いです。

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