職場での人間関係は働く人にどのような影響を与えるか?|理想の人間関係とは

職場での人間関係は良いほうがいい、それは誰しも思うところです。
一方で、「人間関係」という言葉は非常に抽象的です。どういった状態が職場の人間関係として理想なのかきちんと言語化できる方は少ない概念でもあります。
職場は職場、プライベートはプライベートでいいのでは?とも思えますし、どのような状態が望ましいのか分からない人が多いのではないでしょうか。
今回は、職場での人間関係が、働く人のやりがいや生産性にどんな影響を与えるのか。理想の人間関係とはどういった状態なのか。学術的調査や、マネトレの利用者データを分析した結果を交えながら解説します。

職場での人間関係はエンゲージメントに影響を与える

ワークエンゲージメントは、仕事に関連するポジティブで充実した心理状態を指し、活力、熱意、没頭によって特徴づけられ、仕事に向けられた持続的かつ全般的な感情と認知をいいます。

ワークエンゲージメントが高い状態は、個人の健康(肉体的、精神的)及び仕事での生産性に大きくプラスの影響を与えることが数々の研究で明らかになっており、心身の健康、コミットメント、離職の意思、パフォーマンスと深い相関関係があることが分かっています。

社員の健康の観点や、企業の利益が向上し、より優秀な人材が集まる好循環を生むことから近年主要な経営テーマとなっており、数多くの企業が取り組んでいます。
欧米では2000年代に、日本では2010年代から取り組みの機運が高まりましたので、これまでの日本企業のマネジメントにはなかった概念と言えます。

ワークエンゲージメントに影響を与える要素の一つとして「職場での人間関係」が挙げられます。
人間関係が良好な職場では、上司や同僚などメンバー間のコミュニケーションが活発です。
意見交換がしやすく、信頼関係が構築できるため、アイデアや協力、助け合いが生まれやすく、組織の生産性や貢献意識が高まります。
また、周囲の人間関係が良好だと、人はチームの中で働くこと(仕事)にやりがいを感じることができます。
エンゲージメントが高い組織に、良好な人間関係は欠かせません。

人間関係がチームに与える影響

人間関係がチームのパフォーマンスに与える影響の調査は数多くあり、例えばハーバード大学教授のジョージ・エルトン・メイヨー教授によって行われたホーソン実験では、労働意欲が職場の人間関係に影響され、良好な人間関係(仲間意識や誇りが強いグループ)が仕事のモチベーションに影響し生産性がアップすることが確認されました。

また、「上司・先輩・同僚の姿勢」が社員のエンゲージメントに大きく影響を与えます。
例えば、関西福祉科学大学 心理科学部 島井哲志教授のスクール・エンゲージメント(学校が好きで、学業や行事を楽しむこと)の調査では、先生のスクール・エンゲージメントが高くない限り、生徒のエンゲージメントは高まらないという結果となりました。
先生が生徒たちのモデルとして率先して学校に誇りを持ち、教えることを楽しまない限り、多くの生徒は学校に誇りを持てず、学びを楽しんだりしませんでした。
この法則は、職場にもあてはまり、上司や先輩、同僚のエンゲージメントの高さが、社員のエンゲージメントを左右し、特に上司の影響が強いとされます。

マネトレ利用企業においても、エンゲージメントスコアが高い上位20%の組織においては、「仕事やプライベートの相談ができる同僚はいるか?」という質問のスコアも高くなっており、全体平均以下の組織は一つもありませんでした。

これらのことからも分かるように、職場の人間関係が良好だと、メンバーはやりがいを感じ、組織への帰属意識を持ち、心理的な安全性を感じながらチームに貢献しようと頑張る、といった姿が見えてきます。

チームの人間関係が良くないと何が問題なのか

仕事とプライベートをきっちり分けたい人は一定数存在します。
職場はあくまでも仕事をして、お金を稼ぐ場所であると割り切っている人もいるでしょう。

しかし、全員そうだと考えるのは無理があります。エンゲージメントスコアが高い組織で「同僚への信頼」のスコアが一様に高いことから、マネジメントや組織風土によって、メンバーの同僚に対する考え方は変化すると考えるのが自然です。
もし、あなたの組織では割り切った考えが大半だとするならば、そうした考えにさせてしまっている、組織に期待させなくしているのは、マネジャーであるあなたに一定の責任があることは否めません。

また、同僚への信頼が低いケースでは、「心理的安全性」が低い傾向が顕著に見られます。
人間関係が良くないと、仕事においてもお互いに意見が言いにくい状況が伺え、チームとしてのパフォーマンスを引き出すことができません。

職場の人間関係が悪いと、従業員間のコミュニケーションは少なくなります。
結果、新しいアイデアや業務の改善は生まれにくくなります。
連携がスムーズに行われないと、ミスやトラブルを引き起こしやすくなります。
信頼できない集団の中では、人は自分のする仕事にやりがいを持ちにくくなります。
心理的な安全性が無いため同調圧力に抗いにくく、早く帰るといったことにすらストレスを感じます。
精神的な満足度が低いので、体の健康や心のバランスを崩すことにも繋がります。
離職率が上がり、生産性も下がるため、休職や退職などにより、メンバーの負担が増えることでさらにストレスがかかる負のスパイラルに陥るかもしれません。

部下の同僚に対する声は、同時にあなたに対する声でもある

もしあなたが部下と対話する中で、「同僚にプライベートの話なんかしたくない」「同僚と関係を深めたいと思わない」というメンバーからの声があれば、チームの人間関係の悪さを如実に表していると同時に、あなたに対する部下からの声でもあります。
信頼関係が構築できていない相手に、プライベートを晒したくない、相手に興味を持とうと思わないと考えるのは当然のことです。
組織のメンバーが同僚に興味を持たない考えに至ったのは、上司の組織運営においての考え方や、メンバーに対して接してきた態度、組織文化づくりの結果でもあります。


相手を知ろうとしないということは、相手を大切に思う気持ちがないということです。
自分を知られたくないなら、それは相手に期待していないということです。
お互いを知らなくても良いと考える組織は、お互いを大切にしていない組織です。
そのような組織にいて、社員は幸福を感じるでしょうか?
社員は仕事をこなしても、役割以上頑張ろうとは思わないでしょう。
その組織の一員であることに誇りは持てませんし、働くことにやりがいも感じにくいはずです。
自分のことばかり優先し、組織に貢献する気持ちのないメンバーばかりになってしまいます。

良好な人間関係では、自然にプライベートな会話が生まれる

職場での人間関係が良好なチームは、仕事だけでなくプライベートも気軽に相談できる関係性が築けていることが分かっています。

一方で、仕事は仕事、プライベートはプライベートで良いのでは?と思われるかもしれません。
しかし、仕事とプライベートは分断され離れたものではなく、2つは繋がって存在し、ある程度重なっています。親の介護や産前産後などは、プライベートが仕事に影響を与える典型例です。

子供の学芸会だから、親の病院への付き添いで、結婚記念日で、ちょっと体調が悪いから、旅行に行きたいから、生理でお腹が痛いから、妻が妊娠しているから、失恋・離婚して・・・など、プライベートの事情で仕事に影響が出ることは多々あります。

職場での人間関係が良好なチームは、このような場面で、「手伝ってほしい、休みたい、早く帰りたい、変わってほしい、在宅勤務にしたい」と相談できる、「手伝おうか?変わろうか?休みなよ、早く帰りなよ、在宅勤務にしなよ」と助け合いや思いやりが生まれます。
こうした状態は、働く人にとっての満足度や、帰属意識に大きくプラスの影響を与えます。

注意すべきは、プライベートの相談をすることで組織が良くなる訳ではなく、エンゲージメントが高い組織ではメンバー同士の信頼関係があり、信頼関係がある組織では気兼ねなく仕事やプライベートの相談ができる状態になるということです。
もしあなたの組織がそうでないならば、良好な人間関係が築けていない状況だと言えます。

同僚への信頼が生まれる風土づくりのために上司ができること

同僚への信頼が生まれる風土のために、上司ができることは沢山あります。
距離を縮めたいからといって、休日の予定を聞いたり、頻繁に飲み会に誘ったり、無理をして付き合わせるのは不適切です。

職場における同僚への信頼は、別のところで十分つくることが可能です。
各々が仕事をしっかりこなすこと、上司としてそうした状態をつくることで信頼は生まれます。
また、上司が組織内のコミュニケーションが活発になる風土づくりをしていくことでも生まれます。

例えば、毎朝あいさつを心がける、積極的に褒める、見た目に清潔感をもたせる、自分について知ってもらおうと努力する、メンバーの良い仕事をみんなに共有する、相手と同じ言葉や表現を使う、自分の欲しい答えに部下を誘導しない、手を止め相手の話をしっかり聞く、相手の話に共感する、大差ない場合は積極的に部下の判断を採用する、チームMTGで意見が活発に出るようファシリテーションの勉強をする、メンバーの仕事に対する考え方や価値観を知ろうとする、家族や趣味を知ろうとする、相手を尊重した態度や話し方をする、など沢山あります。

上記で挙げたことは、「同僚への信頼」に直接働けるものではありませんが、さまざまな要因で間接的に組織の信頼は高まっていきます。
メンバーは、あまり信頼していない上司に質問されても本音や内面について話したくはありません。面倒くさいから本心と違っても上司に同調します。上司に尊敬も期待もしないので、関係性の改善に働きかけたくても部下の協力を得られません。
普段の上司の行動は、人間関係が良好な組織をつくっていくために、非常に重要な意味を持ちます。

職場の良好な人間関係は社員のやりがいに大きくプラスに働く

仕事とプライベートは完全には分けられません。
職場における良好な人間関係とは、上司や同僚と仕事やプライベートの相談が気兼ねなくできる状態、あるいは仕事とプライベートの両方がストレスなく一定程度交わっている状態といえます。

仕事とプライベートをきっちり分けたい人が一定数いるのは当然です。
一方で、人は良好な人間関係の中でより、一生懸命働き、やりがいを感じるのも事実です。
心理学で有名な「マズローの欲求5段階説」においては、友人や家庭、会社から受け入れられたいと願う「社会的欲求」、他者から尊敬されたい、認められたいと願う「承認欲求」は人の根源的な欲求の5つに定義されています。
きっちり分けたいと言っている部下も、信頼できる仲間の中で働いたことがなく期待しなくなっているだけかもしれません。
転職前の会社では飲み会やプライベートな付き合いは嫌でストレスだったけど、転職後の会社では楽しくて積極的に参加しているというケースはよく聞く話です。

仕事にやりがいを持つにあたって、大多数の人にとって職場の人間関係は重要な意味を持ちます。
これまでの学術的調査や、マネトレ利用者のデータを分析した結果として、職場の人間関係を軽視した先に「上司や同僚が信頼され、メンバーがやりがいを持って満足して働き、パフォーマンスが高い組織」というような理想の状態をつくれる可能性はまずない、ということは確かなようです。

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