リーダーを目指す人の心得|コリン・パウエル著
リーダーを目指す人の心得|コリン・パウエル著

パウエル国務長官に学ぶリーダーを目指す人の心得

先日2021年10月18日に、米国の元国務長官コリン・パウエル氏が84歳でこの世を去りました。
パウエル氏は、ジャマイカ系移民の子としてニューヨーク市のハーレム地区に生まれ、黒人として初めて米国4軍のトップである統合参謀本部議長や国務長官を務めた経歴の持ち主です。
彼が生まれた時代は黒人への人種差別はまだ根強く、バラク・オバマ元大統領以前に、黒人でここまでの高みにたどり着いた人はいませんでした。そんなパウエル氏の優れたリーダーシップは高く評価されており、党派を超えて尊敬を集めた人物でもあります。

今回は、そんな彼が晩年にリーダーシップについて書いた自伝的著作である『It Worked for Me: In Life and Leadership(邦題: リーダーを目指す人の心得)』から、ビジネスパーソンにも役立つリーダーシップの心得についてご紹介します。

怒っていいが、その上で怒りをコントロールし乗り越える

激怒や失望のすばらしい点は、それを乗り越えてゆくというところにある。怒ったら、さっさと怒りを乗り越え、自制心を失わないように心がけよう。

アンガーマネジメントの重要性は一般に広く知られていますが、一方で怒りのコントロールができていないマネジャーは多くいます。パウエル氏でさえ、怒りのコントロールは常に意識していたとのことで、アンガーマネジメントは難しくも重要なスキルと言えるでしょう。

(参考)▶アンガーマネジメントとは|怒りに対処する方法

人格と意見を混同してはならない

人格と意見を混同してはいけません。さもないと、意見が却下された時自分も地に落ちてしまいます。
パウエル氏は下記のように部下に対していつも伝えていたそうです。

私に反論しろ。心の底から反論しろ。自分が正しく、私がまちがった道を選んでいると私に納得させろ。それが君たちの義務だ。そのために君たちがいるのだから。私に反論されたからといって怖気づかないこと。
ただし、議論は尽くしたとして私が決定を下す瞬間がいつかくる。そうしたら、自分の考えであるかのように私の決定を実行しろ。

日本人は、上司も部下も人格と意見の切り分けができていない人が多い印象です。教育過程でディベート文化がないことに起因するのではとも言われますが、ある事柄に対する意見対立がそのまま人の対立(人間関係の悪化)になってしまいがちです。
しかし、人格と意見を切り分け、部下が積極的に意見を言える環境をリーダーがつくることは、学習する組織をつくる上で非常に重要です。

チーム研究の第一人者であるハーバード・ビジネススクール教授のエイミー・C・エドモンドソン氏が、著書『チームが機能するとはどういうことか』で述べたところによると、チーミング(絶えずチームワークを模索し、実践し続けること)の成功には四つの行動が必要とされます。

  1. はっきり意見を言うこと
  2. 協働すること
  3. 試みること
  4. 省察(自分自身をかえりみて、そのよしあしを考えること)すること

チーミングの効果は、大きく2つあり「組織のパフォーマンスが上がること」「魅力とやりがいあふれる職場環境になること」とされます。
そして、その過程は必ずチーム内に緊張や対立を生むため、対立がチーミングにとって望ましいものであることを理解していないリーダーや、対立に取り組むうえで必要なスキルを学ばないリーダーは、失敗する運命にあると結論づけています。
そうした意味でも、パウエル氏が述べた「人格と意見を混同してはならない」とするリーダーの心得は、非常に重要な心得と言えます。

リーダーは小さなことまで感じる努力をする必要がある

最終的な成否を左右するのは、たくさんの小さなことだ。リーダーは小さなことまで感じられなければならない。小さなことが起きる組織の最深部がどうなっているのかまで感じられなければならない。
出世すればするほど、虚飾とスタッフに囲まれて他が見えなくなる。現場で何が起きているのか、確認する必要性が高まるのだ。ひとつの方法は階下の現場に降りること。これから行くなど予告をしてはならない。予告などすれば、大急ぎで掃除をされたり必死で準備をされるのが落ちだ。
部下というものは小さなことばかりの世界で生きている。リーダーは公式でも非公式でもなにがしかの方法でその世界を把握しなければならない。

立場が上がるほど現場が見えなくなります。これは致し方ありません。
しかし、優れたリーダーになるには、現場を知ろうとする努力をし、決断するにあたって小さなことまで理解する必要があります。報告を待つだけでなく、積極的にコミュニケーションを取り、末端の組織まで知ろうとする姿勢が必要です。
マネトレ利用者である企業の中間管理職に対する調査でも、部下のエンゲージメントが低い上司は、部下とのコミュニケーション量が少ない(上司本人も重要視しておらず定期的な1on1等のコミュニケーションを取る場を作っていない)傾向が顕著に見られます。コミュニケーション量を軽視してはいけません。

功績は分け合う

大切なのは気持ちを表す行動だ。勲章やストックオプション、昇進、ボーナス、昇給なども悪く無い。だが、直接触れなければ部下の心を動かすことはできない。電子メールをばらまくようなやり方ではなく、優しい一言をかける。背中をぽんとたたく。よくやったと褒めるといったことを1対1でしなければならない。

自分の功績を上げることばかり気にして、部下の功績をさも自分の功績のように吹聴する上司もいますが、それではリーダーとして周囲からの信頼を得ることはできません。部下の主体性を引き出し、チームのパフォーマンスを引き上げるには、リーダーの積極的な部下に対する承認称賛の行動は欠かせません。
デジタルな時代だからこその、パウエル氏流のアナログな承認称賛をぜひ取り入れてみましょう。

(参考)▶承認・称賛の文化醸成|メンバー同士で承認・称賛し合うチームの作り方

必要だと思う以上に人に親切にする

親切で思いやりのある人と思われていれば、厳しい決断をしても受け入れてもらいやすい。

リーダーはみんなが賛成する判断ばかり出来ませんし、時には厳しい判断も必要になります。
そんな時には、普段からの行動、態度が物を言います。リーダーがリーダーとして力を発揮するためには、普段の部下に対する行動、態度がとても重要です。

パウエル氏のリーダーシップ論は多くの研究結果と通ずるものがある

いかがでしたでしょうか?
今回はパウエル氏のリーダーシップ論の一部をご紹介しましたが、彼が人生経験の中で培ってきたリーダーシップ論は、目新しい独自のモノというより、多くのリーダーシップやチームビルディングの研究によって明らかになっている事柄と共通するところが多く見られました。
既知のリーダーシップに関する事実を着実に実行したリーダーであるとも言える彼が、黒人というマイノリティの立場からここまで高い名声を得たことを考えると、言われみると当たり前のことだけれど、実践するのが難しいのがリーダーシップなのかもしれません。

今回取り上げた内容はすぐにでも実行できることばかりです。ぜひ明日からパウエル氏のリーダーシップ論を実践してみてください。

※参考:『リーダーを目指す人の心得』コリン・パウエル著

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