教え方
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教え方のコツ|自立自走できるメンバーを育てるために

メンバー育成において、習得してもらいたい知識やスキルを「教える」という場面は多々あります。
メンバーの成長のために、勉強会を実施している方もいるかもしれません。

その中で、一度教えてもすぐに忘れてしまう、業務で活かされない、と感じることが多い場合、それはメンバーの能力の問題ではなく、「教え方」に問題がある可能性があります。
今回は、メンバーの成長、能力スキルの向上につながる、教え方のポイントについて解説します。

ポイント① 人は忘れる生き物。復習させることが大事

メンバー育成のために勉強会を実施することは、大変素晴らしい活動です。
しかし、張り切ってあれもこれも覚えてもらおうとすると、結果的にほとんど覚えてくれなかったという結果に終わりがちです。
これは、メンバーに問題があるのではなく、人の記憶力の限界を超えてしまっているためです。
 
記憶力に関しては、ドイツの心理学者エビングハウスの「忘却曲線」が有名です。
無意味な音節を記憶させ、時間の経過とともに、再学習(覚え直す)のにかかる時間がどの程度節約されるかという実験結果です。
復習して覚え直すと忘却曲線は徐々に緩やかになり、知識として定着していきます。

エビングハウスの忘却曲線


例えば、勉強会で60分かけていろいろ覚えたとしても、次の日に40分(66%)かけて復習しない限り、勉強会直後の状態に戻らないほど、人は忘れてしまいます。
これを理解せずに単発で勉強会だけ実施してしまうと、数日のうちにほとんど忘れてしまい、せっかくの勉強会も効果が薄いものになってしまいます。
メンバーに教える際は、その場で完璧に覚えてもらうのは無理と理解し、すぐに実際の業務で覚えたことを使う機会を作るなど、復習させることをセットで考えましょう。

ポイント② 魚を与えるのではなく、魚の釣り方を教えよ

「魚を与えるのではなく、魚の釣り方を教えよ」とは、飢えてる人に魚を与えると1日で食べてしまうが、魚の釣り方を教えると一生食べていけるという教えです。
魚を与えた相手は、与えてもらわないと生きていけない、また与えてもらえるのを待つということになります。今すぐにでも食べないと死んでしまうという状況では魚を与えるべきですが、そうでなければ自立してもらうためにも、魚の釣り方を教えるアプローチが適切です。
 
メンバーに教える場面を想定すると、以下のように考えると良いでしょう。

知識を与えるのではなく、知識の得方(調べ方)を教える。
答えを与えるのではなく、答えの得方(考え方)を教える。

一般知識であれば、インターネット検索で大抵のものは調べることができます。
分からないことは誰かに聞くではなく、まずは自分で調べてみることや、調べ方のコツなどを教えるべきです。
調べてたどり着けることであれば、全てを記憶にインプットしなくても、必要な時に調べれば良いのです。
 
業務支援の場面では、「そうじゃない、こうだろう!」と正しいやり方だけ教える指導の仕方ではなく、なぜそうすべきなのか、どのように考えれば正しいやり方にたどり着けるかなど、理由や考え方をきちんと伝えましょう。
答えを教えられた人は、全く同じ状況にしか対応できませんが、考え方を教えられた人は、問題解決の考え方を使って近しい問題に対処できるようになります。

ポイント③ 長期記憶の種類|知識の定着に効果的なこと

人の記憶は、感覚記憶、短期記憶、長期記憶の3つに大別されます。

感覚記憶:感覚器官から無意識に脳に運ばれ、瞬間的に保持される記憶
短期記憶:短い時間、数個程度の情報を一時的に保持する記憶
長期記憶:長期的に大量の情報を保持する記憶


メンバーに教えたことは、忘れず覚えておいて欲しいため、長期記憶にしていく必要があります。
教えたことは、まず短期記憶に保持されます。短期記憶は、リハーサル(反復)により、長期記憶へと変えていくことができます。
 
また、以下のような記憶は、長期記憶となりやすいと言われています。

エピソード記憶:個人の経験に基づく記憶。
 時間や場所といった文脈、その時の感情などがともに記憶される。

意味記憶:言語とその意味(概念)が組織化された記憶。
 経験の繰り返し(リハーサル)により形成される。

手続き記憶:技能や手順など繰り返し経験することで形成される記憶。
 習熟すると意識せず自然とできる。


実際に体験・経験したこと、意味や概念を理解したこと、繰り返し経験したことは長期記憶になりやすいということです。

・一方的に教えるだけでなく、ワークなどで実際に経験させる
・断片的な知識ではなく、文脈や理屈など周辺情報とセットで体系的に理解させる
・勉強会では、最後にまとめを入れることで、勉強会内で反復する
・教えたことを実践できる仕事を依頼する/数日後に問いかけをする(反復させる)

といった工夫をすることで、知識として定着する可能性が高まります。

ポイント④ マジカルナンバー4±1|覚えさせることは一度に3個まで

マジカルナンバーとは、人が短期記憶できる容量のことです。
チャンクと呼ばれる意味のある情報のかたまりを、いくつ短期記憶できるかを示しています。
1950年代の研究ではマジカルナンバー7±2(つまり5~9個)、2000年代の研究ではマジカルナンバー4±1(つまり3~5個)と提唱されています。
個人差はありますが、短期記憶で一度の覚えることができるのは、3~5個程度と少ないのです。
 
職場で勉強会を開催したり、メンバーに都度教えたりする場面では、このマジックナンバーを理解し、多くのことを伝えすぎないことが大切です。
また、業務が繁忙な状態では、対応すべきタスクが3~5個のチャンクを埋め尽くしている可能性があり、なかなか記憶に残りません。タスクをメモに書き出す、予定表に入れるなど、短期記憶に頼らないで済む状態にすることで、それまでの記憶は忘却され、新たな情報を記憶できるようになります。
 
短期記憶の容量は3~5個程度というのを理解し、要点を3点以内にまとめて伝えるのが良いでしょう。

具体例:Excelの勉強会を実施する場合

ここまでのポイントを踏まえ、メンバーのExcelスキルを高めるために勉強会を行うケースを考えてみます。

まずは、メンバーに何をできるようになってもらいたいかから考えます。
・数式(sum、average、round、if、countif、sumif、vlookup)
・ショートカット(ctrl+↓、shift+↓、ctrl+D、ctrl+;、、、)
 
このように書き出していくと、すぐにチャンクが3個を超えてしまいますので、対策を考えます。
Excelの数式やショートカットは、ネット検索ですぐに調べることができるため、勉強会の場だけで完璧に覚えてもらおうとせず、調べてできる状態をゴールとすれば、「Excelはやりたいことを検索すれば答えにたどり着ける」という1チャンクのみで、ゴール状態を実現できます。
 
そして、以下のように長期記憶になりやすい方法を取り入れると、より効果的になるでしょう。

・体験・経験したことは記憶に残りやすいので、勉強会では例題を準備し実際に使って機能の存在を知る(エピソード記憶)
・数式は機能だけでなく、どんなことをしたい場面で使えるのか、活用イメージと一緒に理解させる(意味記憶)
・勉強会後にExcelを使う業務を依頼する(リハーサルによる記憶の固定化)


いかがでしたでしょうか。
人の記憶力には限界があり、一度にたくさんのことを覚えることができません。

このことを理解していると、何かを教える際に要点を3つ以下に絞り、反復の場を用意することで、効果的な育成を行うことができます。
メンバーの能力やスキルを向上させたい、成長を実感してもらいたい場合は、ぜひ参考にしてみてください。

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