部下を成長せさせる指導方法

【超実用的】部下を成長させる指導法|パワハラにならない指導の仕方

先日、労災認定されたトヨタ自動車社員のパワハラ自殺についてのニュースが大きく報じられました。
今もなお多くの企業でパワハラが横行しているかといえばそうではなく、怒鳴ったり、人間性を否定する叱り方をする管理職は昔と比べ大きく減っています。
実際に、マネトレ利用企業において、パワハラが疑われるような管理職は、まったくいないわけではありませんが、稀な存在となっています。
※対象がマネジメント育成に力を入れている企業であることから、一定のバイアスがある可能性があります。

各企業で、パワハラなどのハラスメントを研修で取り上げていることや、パワハラ上司が容認されない企業風土、社員の認識、社会に変わってきていることが背景にあるのだと思います。
一方で、指導するにもパワハラと言われるのが怖い、どのようなコミュニケーションを取れば相手にちゃんと伝わるか分からない、といった部下への指導法に関する悩みや、モヤモヤを抱える管理職が増えているようです。何か良い指導の方法はないか?時間がなくてコーチングなんてやってられない、といった相談をコーチに多数いただきます。

今回は、パワハラにならない効果的な指導法の一つを紹介します。時間がない場合の短時間での指導の仕方についても紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。

「叱る」はめったに使わない、日常的に使って良いのは「指導」

大前提、「叱る」というニュアンスの行為を日常的に使ってはいけません。
というのも、叱るという行為は受け手にとって大きなストレスとなります。多用すると叱られた本人の頭は混乱してしまい、言われたことを受け止めることができなくなってしまいます。
そのため、現状を修正する、同じ過ちをしない、といった本来の叱る目的から離れてしまうので使う意味がありません。

叱るという行為は、信頼関係がないと使えない

叱るという行為は、信頼を消費する行為です。
叱ることで、多かれ少なかれ、部下との関係性はすり減ります。
つまり、「叱る」を多用するとそのうち積み重ねた信頼は無くなってしまいます。信頼関係が無く行う「叱る」はパワハラと受け取られやすいです。
また、頻繁に「叱る」行為は、叱られる本人だけでなく、周囲からもパワハラと受け取られます。絶対にやめましょう。

行為者がどう思っているのかは関係なく、相手が不快な感情を抱けばハラスメントになる

「叱る」はそもそも信頼関係がない段階では使えない行為です。
信頼関係がない人から叱られた場合、ストレスである「叱る」に対し正面から向き合おうとはしないため相手に響きません。叱られた側からするとストレス以外のなにものでもなく、反発心や心理的負荷を与えます。
基本的に日常的に使うのは後述する「指導」を用いましょう。

「叱る」と「指導」の使い分け

上司の指示は「指示待ち人間」をつくる

部下に任せてはできないからと、何でも自分で判断して指示する上司もいます。部下の意見は多少の違いであってもなんでも否定して自分の「指示」を伝える。このようなコミュニケーションで、部下に考えろというのは無理があります。部下にとっては自分で考えることは全て徒労に終わるからです。

コミュニケーションの矢印は上司➝部下の一方通行しかなくなり、いつしかそれが固定化されます。
つまり、上司を支援する、上司に対し助言するといった、部下から上司への矢印の存在そのものがないという状況が固定化されるのです。
また、頑張って考えてもすべて上司の意見に最終的に変わるなら、部下にとって自分で考えることは無駄ですし、上司の指示をあおいだ方が合理的です。
その結果、指示をひらすら待つ部下が量産されます。

指示の多用によるマイナスは、指示待ち人間を作るだけではありません。
毎回上司による修正が入るので、部下としてはやり直しが頻発します。すると、ビジネスのスピードは遅くなり、進まないのに時間はかかるのでメンバーのワークライフバランスは悪化します。
緊急時など、指示が有効な場面もありますが、日常的には「指示」ではなく「指導」を用いましょう。

効果的な指導を行なうステップとポイント

指導とは、問いで考えさ、部下を導く行為です。
部下に問いかけることで、本人の内省を促し、改善のために必要なことを部下本人に考えさせます。
単純な指摘や指示と異なり、本人の学びや成長に繋がりやすいとされます。

指導を行なう際のステップとポイント

① 「問い」を投げかける

問いが先にあり、「自分はこうしてほしい」「それはだめだ」「僕はこう思う」といった自分の考えは後にあります。
自分の意見や考えを先出しせず、問いかけを通じて本人に考えさせましょう。
どうしたらもっと良くできたと思う?といった未来形の問いかけの方が、部下の心理的な負荷は小さくなります。失敗を詰めているような形にならないように注意しましょう。

<問いかけの例>
なんでそうしたの?
どうしたらもっと良くできると思う?
なんでそれで良いとおもったの?
なんでそれをしなかったの?
どういうロジックでそう判断したの?など

なぜ改善した方が良いのか、どうすべきか、といったことは、本人が問いかけの中で気付けるならそれで良く、追認してやるだけで問題ありません。上司から必ずしもこうした方が良いと伝える必要はありません。
また、上司が考えていたことと同じでなかったとしても、前に進みそうなら部下本人の判断を承認することも重要です。

② 「問い」の時間のコントロール

問いが難しいのは、相手が答えられない可能性も多くある点です
問いを与えて考えさせる行為は、その問題の大小や重要度、前提知識を知っていることが判断の比重として大きい事項かなどによって、部下が何らかの答えを出せるのかが変わってきます。

本人のキャリアや価値観といったパーソナルな話をする際は、本人が情報を全て持っているので、待っていれば何かしら出てきます。
しかし、業務に関することは、部下が持っている知識や経験、状況認識等が、複雑に絡み合っています。
そのため、出てこない時はいくら待っても出てきません。

何も出てこない場合は、より具体的な考えるヒントを与えたり、切り上げる時間をコントロールする必要があります。
研修でコーチングを学んだ方がやりがちなのが、業務に関する指導での長過ぎる問いかけです。
長すぎる間は、受け手のストレスに変わってしまいます。考える時間が長過ぎると部下は考えている状態から、ストレスを感じている状態に変わってしまい、ストレスが大きくなると部下の頭に入らなくなり指導の効果が激減してしまいます。
問いの時間コントロールは非常に大切です。難しそうだなと思ったら、ヒントを与えたり、途中で切り上げてティーチングに移行しましょう。

③指導の目的を忘れない(感情をコントロールする)

管理職の中には、感情のコントロールが苦手で、「叱る」や「指導」の本来の「目的」を行為の最中に忘れがちになる方が一定数います。
皆さんも、指導している最中にヒートアップしてしまい、なんのために指導をしているかを忘れ、管理職が感情的になっている光景を見かけたことはないでしょうか。
叱るや指導の研修は世の中に多くあり、受けてもなかなか実践できないのは、行為の最中に目的をいつの間にか忘れてしまい、イライラが先にきてしまうことも一因です。イライラをぶつければ、部下には多大なストレスがかかり、指導をきちんと受け取れません。
現状を修正する、同じ過ちをしない、といった本来の目的を忘れずに、感情をコントロールすることを意識してください。

指導のショートバージョン|時間がない時の指導法

「 問いで導く」に固執しない

問いで導く指導は、ティーチングより時間がかかります。
忙しい業務の中で全ての指導をそのような方法でやる余裕がない管理職がほとんどでしょう。
その場合は、「問いで導く」方法に固執しなくても問題ありません。
コーチング研修を受け感銘を受け、やたらとコーチングを多用する方がいらっしゃいますが、その結果時間がなくなり業務フォローやフィードバックがおろそかになったり、適切な指示が受けられないとメンバーの不満に繋がるケースがあります。これでは意味がありません。
反対に、時間がないからといって、毎回「こうしろ、ああしろ」といった指示ばかりも適切ではありません。
指示ばかりでは部下は自分で考えることをしなくなり、成長しません。結果、いつまでも人材が育たずマネジャーの忙しい状況も一向に改善されません。

時間がない時に使える指導のショートバージョンは、「こうした方がもっと良かったと思うのだけど、それはなぜだと思う?」と、上司としての考えを指し示して、それはなぜかを考えさせる?という方法です。
こうすると、前述の「どうしたら良かったか?」を考えさせる方法よりも、短い時間で考えさせることができます。
この方法は、部下の能力がその問題に対して追いついておらず答えを考えるのが難しい場合や、問いを投げかけても何も出てこなかった場合にも有効です。

さらに時間が無い場合は、「部下が考える時間」を一人で考えてもらいましょう。
もちろん部下が考えている際に一緒に付き合えることがベストですが、具体的なヒントを与えるなどして、ある程度答えに辿り着けそうな状態であるなら、一旦部下自身で考えてもらうという形でも構いません。
ただし、その際は「考えがまとまったらいつでも声をかけて」と伝え、もし部下からの声がけが無くても、必ず覚えておいて「例の件はどう?」と自ら部下に聞くようにしましょう。

また、すぐに対応が必要だけれど今時間が取れないといった事象の場合は、一旦ティーチングで指示し、後日部下との1on1などでそれを議題に取り上げ、「どうしてそういった判断をしたのだと思う?」と問いかけを行いましょう。時間をズラしての指導でも十分意味はあります。
部下が判断の理由、プロセスを考え理解し、次回自分で判断できるように導いてみてください。

新人や初めて担当する仕事のケースなど、部下の状態によっては、問いで導くより、ティーチングの方が適しているケースも多々あります。
実際のマネジメントにおいては、教科書通りのスタンダードな問いで導く方法に固執する必要はありません。ショートバージョンも組み合わせ、最大限の「指導」を活用していきましょう。

コーチングとティーチングの使い分け

指導についてのよくある勘違い|期待を毎回最後に伝える必要はない

「指導したら、最後に期待を伝えるをセットで」というような指導法もよく目にしますが、期待を毎回最後に伝える必要はありません。現実の運用で、毎回期待を伝えるのはそもそも無理があるでしょう。
むしろ、修正して成果を出た際に覚えていて褒めてあげることの方が大事です。この点は忘れず実行しましょう。

期待がないと動けないのはマイナスでもあります。こうした方がもっと良いよね、楽だよね、その方が自分の成長やポジティブな結果に繋がるよね、と部下が思えていれば、上司の期待を毎回伝える必要はありません。
期待は一時的な効果で、内発的動機づけの方が大切です。
また、期待は嬉しい人もいれば、実はストレスを感じる人もいます。期待の乱用は期待そのものの価値を下げてしまいます。内発的動機づけに勝るものはありません。
「指導」の最後に、部下が前向きに修正に向き合える状態を導くには、部下の価値観やキャリアを理解していることがとても役立ちます。

価値観とは|メンバーのやる気を引き出す価値観理解
キャリアとは|部下のキャリアを理解し信頼関係を築く方法


いかがでしたでしょうか?

今回は問いで導く指導方法を解説しました。
ハラスメントになりかねない感情的な叱るや指導をしなくても、部下を成長に導くことはできます。
むしろ、昔ながらの叱るが多いことや、パワーマネジメントな指導は今では逆効果です。
今回ご紹介した方法は、 特別なスキルは必要なく、意識次第ですぐに実行が可能ですので、ぜひ「問いで導く」指導法を試してみてください。

マネジメントに変化をもたらし、活力ある組織をつくるには『マネトレ』

マネトレでは、マネジメントや人材育成、組織開発に役立つさまざまな資料を、無料で公開しています。ぜひお気軽にダウンロードください。