ティール組織
ティール組織

【第1回】ティール組織の徹底解説|過去と現在の組織モデルとマネジメント

2018年に日本語版が刊行された『ティール組織 ― マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現』。米コンサルティング会社のマッキンゼーで10年以上組織変革プロジェクトに携わり、その後独立したフレデリック・ラルー氏が書いたこの本は、550ページに及ぶ大作の組織論の本でありながら、12ヶ国語以上に翻訳され、世界で35万部、日本では5万部の大ヒットとなりました。
世界に対する日本での販売部数の多さから、いかに多くの日本企業が組織やマネジメントに対する悩みを抱え、それらに対する答えを求めていたかが伺えます。

現在、企業に求められるステークホルダー認識の変化や、ESG(環境・社会・企業統治)を重視する風潮の高まり、ジョブ型を推進する機運、テレワークによる管理型マネジメントの限界の露呈など、企業を取り巻く環境に大きな変化が起きています。
そのような中で、一時HR界隈で流行語となったティール(進化型)組織、ホラクラシー組織や、ラルーによる従来型の企業やグローバル企業に対する分析・考察は、改めて注目する価値が生まれていると感じます。

本コラムでは、『ティール組織』550ページの要点を分かりやすくまとめ、組織構造やマネジメントに焦点を当てながら、数回に分けて解説していきます。

過去と現在の組織モデルについて

ティール組織について理解するには、まず過去と現在でどのような組織モデルがあるのかを把握必要があります。
著者のフレデリック・ラルーは、本書の中で過去と現在の組織モデルについて5つに分類しました。下がそれを簡単にまとめた図になります。

組織の発展段階

組織の発展段階表_ティール組織

これらは上の組織モデルから下の組織モデルに向けて発展していく、組織の発展段階を表しています。
衝動型(レッド)組織、順応型(アンバー)組織はイメージが付きやすいと思います。現代において、衝動型組織は映画の中でしか中々お目にかかることは無いでしょう。
企業経営においては、多くの日本企業は達成型(オレンジ)組織であり、一部先進的な取り組みをしている企業で、多元型(グリーン)組織を部分的に取り入れている、もしくは取り入れようと努力しているのが実情です。
多元型(グリーン)組織の代表例は、SalesforceやGoogleといった、組織開発で参考にされるシリコンバレーの先進企業はそれに該当するでしょう。

ここでは、組織モデルや組織の発展段階、複雑性といったラルーの理論の前提となる主要なポイントを理解した上で、企業人事において必要となる、達成型(オレンジ)組織、多元型(グリーン)組織、そして進化型(ティール)組織に絞って解説をしていきます。

組織モデルは優劣ではない|どの段階にも健全と不健全の面がある

個々の組織モデルについて理解を深める前に「組織モデルは優劣をつけるものではない」ということを理解しましょう。
ラルー氏は、進歩には段階があるというのは事実ですが、ある段階がその前の段階より優れているということではない、世界に対処するためのより複雑な方法と解釈する方が有益と述べています。
どの段階にも、健全な面と不健全な面があります。また、それぞれのステージは、特定の文脈によく順応しています。

例えば、多元型組織で働く人は、衝動型組織にいる人では到底できない方法で、対立する意見をうまくまとめられるはずです。
仮に内乱が起こって自分のコミュニティを守ろうとする場合は、多元型のパラダイムで動くより、衝動型のパラダイムの方が恐らくうまく対処できます。

一方で、今日の平和な社会においては、衝動型のパラダイムは、その後のどの組織モデルのパラダイムより機能しません。
軍隊や、行政機関のように、組織モデルの前半のパラダイム(順応型組織)で組織運営を行なうことに、現代でも合理性があるといったこともあります。
※パラダイム(paradigm)とは「物の見方や捉え方」のこと

発展段階はひとつに限定されるものではない、複雑性をはらんでいる

次に、「人や組織はひとつの段階に収束しているわけではなく、複雑である」ということです。
下記のような特徴があり、実際の組織や人は複雑性をはらんでいます。唯一言えることは「ある特定の瞬間に、あるひとつのパラダイムに基づいて行動している」ことです。

・どの段階であっても、前の段階のパラダイムを内包し、それを超えている。例えば達成型のパラダイムに基づいて行動するようになったとしても、時と場合によっては、順応型や衝動型のパラダイムで行動する能力を持っている。

・個人においても、多元型モデルの組織に属している場合、自分がそのパラダイムを十分に吸収していなくても、一時的に組織の影響を受け多元型の行動を取ることもあり得る。

・すべての側面が同じペースで成長するわけではない。例えば、達成型の認知能力を身につけて革新的なビジネスに取り組んでいながら、精神面では順応型ということもあり得る。

ただし、同じ発展段階のパラダイム基づいて活動している人々は、一定の認知的、倫理的、あるいは心理的特徴を共有しています。あなたの会社でも、企業文化・風土が従業員や社内の意思決定に大きな影響を与え、いちいち意思決定の理由を説明されなくても「うちの会社はこうだから」と中にいる大半の人は、そうした判断が当然、あるいは仕方なしと思っていることは、それを表しています。
もちろん、人によっては見え方が大きく異なっており、同じパラダイムであっても、異なる結論に達することもままあります。

組織の進化の難しさと発展段階の実態

人にとって、新しい段階への移行は、認知的にも、心理的にも、倫理的にも大変なことです。
ラルー氏は、コーチやコンサルタントがいくら組織のリーダーに複雑な世界観を身に着けてもらいたいと願っても、説得を通じて実現することはできない。意識の変化は強制できない。できることは、次の段階への成長に役立つ環境を作り出すことのみと述べています。

また、組織のあらゆる構造、慣行、文化は、さまざまな発達段階の中に散らばっているわけではなく、ひとつの段階の周辺に集まっています。つまり、ある段階があたかもその組織の重心のような存在となり、組織内のほとんどの慣行が決まります。

ただし、組織に発達理論を適用するときには、単純化しすぎないように十分注意する必要があります。
例えば、ある組織が達成型(オレンジ)組織という時、それは組織の重心について示しています。

しかし、その職場のあらゆる行動や交流が達成型(オレンジ)パラダイムに従っている、あるいはその組織に働くすべての人が達成型(オレンジ)の観点に基づいて活動していることを意味しているわけではありません。そのような組織はありえません。
全てではないけれど、組織の構造、慣行、プロセスの大半が達成型(オレンジ)パラダイムによって形成されている」というのが現実の組織の実態です。

また、大きな組織では、部門や地域が異なると、組織モデルもそれぞれ異なる、複雑性を持っている可能性もあります。
大規模な多国籍企業の場合、本部が達成型(オレンジ)パラダイムに従って運営され、一部の工場が順応型(アンバー)になっているケースは十分にあり得ます。
従って、単純化しすぎることには注意が必要です。

報酬における発達段階の例
  • 社長が思いつきで給料を上げたり下げたりできる ➝ 衝動型(レッド)
     
  • 組織における階級によって固定給がきまる ➝ 順応型(アンバー)
     
  • 個人ごとに目標を設定し、達成すれば報酬アップで報いる
     ➝ 達成型(オレンジ)
     
  • チーム単位の成果によるボーナスを重視する ➝ 多元型(グリーン)

組織の発達段階はリーダーによって決まる

組織の発達段階は、リーダーによって決まります。
なぜならリーダーは自らが合理的だと考える組織構造、慣行、文化を整えるからです。あるいは、リーダーがどの段階のパラダイムを通して世界を見ているかによる、とも言えます。
数年単位で変わるサラリーマン社長で、これまでを踏襲する経営を行ない、なんら変化がない場合は、その社長の持っているパラダイムは、前任と変わらないということです。
つまり、どんな組織もリーダーの発達段階を超えて進化することはできません。これは、会社、部門、チーム、どの単位についても言うことができます。

例えば、最近は価値観やミッションステートメントの再設定が流行りです。各社これらに積極的に取り組んでいますが、リーダー(組織)が、多元型(グリーン)パラダイムに達していないと、価値観とミッションステートメントの策定にどれだけ力を入れても実際の組織行動は変わらず意味がありません。
なぜなら、ひとつ前の達成型(オレンジ)組織における意思決定の基準は、成功するかしないかだからです。

達成型(オレンジ)組織では、仮にリーダーが、価値観やミッションステートメントを策定したとしても、利益か価値観かを選ばなければならない局面では、利益を選びます。
そのリーダーは達成型(オレンジ)のパラダイムを持っているため、次の発達段階で生まれる慣行や、文化を重視する姿勢を支えられません。
逆に、リーダーが組織の構造、慣行、文化を整えると、そこで働く従業員は今持っていないパラダイムから次の段階へ自然に行動を取るようになります。

企業文化とは?|セールスフォースに学ぶ企業文化の重要性 創業者マーク・ベニオフ著『TRAILBLAZER』

リーダーに変化をもたらすなら『マネトレ』

例えば、順応型(アンバー)のパラダイムを持つマネジャーがいるとすると、そのマネジャーは上意下達の傾向が強く、事細かに指示するはずです。

しかし、ある時トップが交代し多元型(グリーン)組織に変わると、状況は一変します。
部下への権限委譲が求められ、年に2回360度フィードバックの評価を受けるようになります。
これまで経験したことがなかった直属の部下から評価され、色々と指摘されます。
半年ごとに、チームメンバーと膝を突き合わせ会社の価値観に沿った行動ができているか対話することを求められます。
すると、周囲の環境にマネジャーの意識は引き上げられ、多元型(グリーン)パラダイムのスキルと行動をある程度取るようになります。
時間が経つと、その環境のおかげで新しいパラダイムの中に心から溶け込めるようになります。
これこそが組織の神髄で、人々をその気にさせ、実力以上の能力を引き出し、自分だけではできなかったはずの結果を成し遂げさせるパワーなのです。

組織の段階を考慮せずマネジャーにだけ変化を求めても意味がない

ここまで組織の発展段階についてみてきましたが、我々の組織はどの段階にいるのか?と疑問が浮かんだ方も多いかと思います。
日本企業が陥りがちな問題は、組織(リーダー)のパラダイムは達成型(オレンジ)なのに、マネジャーにだけ多元型(グリーン)のマネジメントを求める姿です。

さまざまな研修を施し、マネジャーに変化を促すものの変化が見られない。いつまでたっても権限委譲は進まず、上意下達のマネジメントだ。そんな悩みを抱える企業人事や経営者からのご相談は非常に多いです。
しかし、これまでの内容を踏まえよく考えてみてください。そもそもあなたの会社のリーダーは多元型(グリーン)のパラダイムを身に着けているのでしょうか。トップダウンの組織運営をしていませんか?リーダーが移行できていないパラダイムをマネジャーに求めても、変われないのは当然です。

トップが変えたいと考えて会社を変えようとするなら、マネジメントだけでなく、組織の構造、慣行、文化も同時に変えにいかないと現場レベルに変化は起きません。

個人の価値観の変化、社会の企業に対する要請の変化。企業に求められる組織の形が、多元型(グリーン)組織以降の段階に向かっているのは明らかです。企業が今後も競争力を保ち、優秀な従業員を惹きつけるためには、次の段階に組織を変えていかねばならないことは、多くの経営者、人事が感じています。
そうであれば、中間管理職のマネジメントだけを変えようとするのではなく、それ以外の環境を組織段階に合わせて変えていく組織開発の戦略も同時に必要になるのです。


いかがでしたでしょうか?
次回は、企業人事において必要となる、達成型(オレンジ)組織、多元型(グリーン)組織にフォーカスし、そしていよいよ進化型(ティール)組織の詳細について解説していきます。

参考:『ティール組織 ー マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現』フレデリック・ラルー著

NEXT:【第2回】ティール(進化型)組織について徹底解説|ティール組織の3つの特徴とは?

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