マネジメントには、なぜ「キャリアの理解」が必要なのか?

マネジメントには、なぜ「キャリアの理解」が必要なのか?

「キャリアの理解」とは

キャリアの理解とは、メンバーがやりたいことや希望するキャリアを把握し、その実現に向けてサポートすることです。
こうした内発的な動機づけは、長く維持されやすく、やりがいやモチベーション向上に繋がりやすいとされます。

メンバーが希望するキャリアを理解しようとせず、一方的に仕事を任せるやり方では、仕事への動機づけができず、チームの生産性や、メンバーのやりがいを高めていくことは不可能です。
メンバーがやりたいこと、希望するキャリアを把握した上で、いかに今の仕事に接続し、動機づけするか。これはマネジメントを行う上で必要不可欠なスキルの一つです。

「キャリアの理解」の低下が招く、マネジメントへの悪影響

キャリアを理解しようとしない場合は、「人としての信頼」を悪化させます。
メンバーのやりたいことやキャリアを考慮せず、チームやマネジャー都合のみで仕事を任せている状態です。
メンバーは自身が尊重されていると思えず、組織の駒のように扱われているという印象を与えてしまいます。
結果、チームに貢献したいという意識やマネジャーに協力したいという気持ちが芽生えず、マネジメントが機能しなくなります。

キャリアの理解が浅い場合は、「目標設定」「アサインメント」「承認・称賛」などの質が高まらず、「仕事のやりがい」「能力・スキルの向上」を高めていく支援が難しくなります。

キャリアの考えを理解しサポートする姿勢がないと、マネジメントのさまざまな場面でマイナスの影響が出てきます。

キャリアの理解が低いことが招く悪影響
  • 任せる仕事に対して動機づけできず、生産性(仕事の質)が低下する
  • メンバーの内発的動機づけが難しく、やりがいや成長を感じづらくなる
  • メンバーを理解しようとしない利己的なマネジャーと思われてしまう
  • 無意識に自分と同じ価値観をメンバーに求めてしまう
  • 目標設定が「会社から与えられたもの」になり、納得度が高まらない
  • 仕事への主体性や、マネジャーへの協力姿勢がなくなる
  • 会社やチーム、仕事に対する不平不満や愚痴が増える
  • マネジャーに対して批判的・反発的な態度が増える
  • 異動希望や退職者が発生しやすくなる   など

「キャリアの理解」を低下させる要因として考えられること

キャリアを理解しようとしたことがない場合は低くて当然ですが、メンバーへの聞き方が悪くうまく把握できないと悩まれるマネジャーも少なくありません。
また、キャリアについて対話し把握しているつもりでも、メンバーが理解してもらえていると感じていない場合もあります。
これは、対話の頻度が少なくメンバーのキャリア観が変化している、希望を伝えたが応援してもらえない、希望を聞かれただけで特にマネジャーの変化を感じない、といったケースが多いです。

自覚がある場合、ない場合、状況はそれぞれですが、メンバーへのサーベイで「キャリアの理解」が低いスコアとなった場合は、以下のチェックポイントが満たせているか、自身の行動を振り返ってみてください。

キャリアの理解に関するチェックポイント
  • メンバーとの会話が、目の前の仕事の話ばかりになっていないか
  • メンバーのキャリアや価値観を把握するための対話をおこなっているか
  • メンバーの希望を考慮せず、できる人に仕事を振ってしまっていないか
  • 仕事を任せるタイミングで、業務に動機づけする意識を持っているか
  • フィードバックや内省支援により、メンバーの成長支援をしているか
  • 部やチームの未来を語り、今後求められる役割や能力スキルなどを共有できているか
  • 昇進昇格していくことがキャリアだという固定観念を持っていないか
  • 自分と異なる価値観、多様なキャリア観を受け入れる心構えはできているか
  • やりたいことが今のチーム以外にあるメンバーの場合も、そのキャリアを尊重できているか
  • 無理矢理やりたいことを決めさせたり、都合が良い方向に誘導しようとしていないか

「キャリアの理解」の高め方

キャリアの理解は、Will Can Mustの重なりを広げるイメージで進めていくのが効果的です。
メンバーの中には、これらを意識して任された業務への意味づけ(自身への動機づけ)ができる方もいるかもしれませんが、ほとんどのメンバーは考えていないか、うまく重なり合っておらず、自身で意味づけすることができていません。
まずは、各メンバーがWill Can Mustをどう捉えているのか現状把握をしてみてください。
その上で、1on1などで定期的に対話を行い、それぞれの状態に合わせて必要な支援をしていきましょう。

●メンバーのWill(やりたいこと)を把握する

まずは、メンバーと個別対話する時間を作り、メンバーのWill(やりたいこと)を確認しましょう。
ここで注意すべきは、これまでのメンバーとの対話内容や頻度です。
業務に関するやりとりが中心で、メンバーの価値観やキャリアなどメンバーを理解するための対話をおこなっていなかった場合、いきなり「キャリアをどう考えている?」と問いかけてもメンバーは戸惑います。
「急にどうした?」「何のための質問だろう?」「もしかして異動になる?」など、無駄な深読みを産んでしまい、どう回答すべきか困ってしまうでしょう。

以下のような手順を踏んで進めると、こうした誤解を与えず、メンバーが話してくれる可能性が高まります。

①メンバー理解を深めていく姿勢を伝える

「より良いチームにしていくために、もう少しみんなのことを理解する必要があると思っている。これまであまり時間が取れていなかったが、今後は定期的な1on1でキャリアの希望なども聞いてサポートしていこうと思う。」

いきなり質問するのではなく、上記のように背景や意図を事前に伝えましょう。
メンバーも事前に考えて準備してくれるため、唐突に聞くより効果的な対話になります。

②キャリアだけでなく、価値観や考え方から理解する

キャリアは、過去→現在→未来という連続性の中にあり、その時々の選択は価値観や考え方と密接に関係しています。
そのため、ある一時点のなりたい姿を聞くだけでは、メンバーの考えを理解しきれないことが多いです。

・過去→現在→未来の順番で質問をする(未来のことより、過去のことの方が話しやすい)
・やりたいことやなりたい姿がない場合は、価値観や考え方を把握する質問をする

無理に「ないたい姿」を作らせる必要はありません。また、マネジャーが思う方向に誘導するのも良くありません。
全員がなりたい姿を持っているわけではなく、やりがいが仕事以外(家庭や趣味)にあり、仕事は慣れたことを淡々とこなしたいというのが本音という方もいます。
こうした場合は、「まだなりたい姿を持てていない」「今はそういう考え」といった風に、率直に今の状態として受け止めましょう。

業務を通してCan(できること)が増えたり、チームの目指す世界観を伝えるなど将来のMust(すべきこと)が共有されるといったきっかけで、Willが見えてくることもあります。
業務を通じてできることが増えている段階は、Canの広がりによって選択肢が増え続けています。そのため、今のWillが3ヶ月〜半年後には変わっていることも少なくありません。
メンバーのCanやMustを広げる支援をしながら、定期的にコミュニケーションをとってみてください。

●Must(すべきこと)の解像度を高める

チームの「役割や目標の明示」がうまくできていない場合は、会社やチーム、職種の将来がイメージできていない可能性があります。
メンバーがやりたいことを考える上では、今の会社やチームは今後どんな方向に進んでいくのか、どんな役割が求められるのか、どんな能力スキルが必要になるか、といった将来のMust(すべきこと)の理解が助けになります。
今後こんなことが求められるようになるなら、その時自分はこうなっていたい、こうありたいとイメージを膨らませることができます。

会社の方針、部の方針、チームの方針、今後任せていきたい業務の方針。
こうした未来に目を向けた発信が少ない場合、メンバーがやりたいことを考えるための材料を、うまく与えられていない可能性があります。
目の前の業務も大事ですが、四半期に1回など節目のタイミングを利用して、チームとしてどうしていきたいか中長期の話をマネジャーから発信するようにしてみてください。
メンバーが今の会社、今のチームの中で自身のやりたいことを見つけられる可能性が高まります。

●Can(できること)を増やす支援をする

子供は「プロ野球選手になりたい」などできることに関わらずなりたい姿を語りますが、大人になるにつれ、自分ができること・できないことを理解し、それをベースに現実的に考えるようになります。
マネジャーが、メンバーの今の能力・スキルをベースにできる仕事だけを任せてしまっていると、メンバーは「能力・スキルの向上」を感じることができず、Canが広がりません。

「これはもう安心して任せられるから、次はこういった業務を経験してもらいたい。その中でこんなスキルを磨いていこう」
「今後こうしたニーズが増えそうで、こんな能力が求められるようになるはず。中長期を見据えて、今から経験していこう」
「基本的な業務はできているから、より高い成果を出す、効率を上げるなど、仕事の質を高める工夫を取り入れてみて」

上記のように、できるようになったことを認める、今後の方向性や目標を擦り合わせる、Canを広げていくことを求めるコミュニケーションが効果的です。

できることが増えず成長の停滞感を感じてしまうと、今できることが自分の限界値のように感じたり、新しいことへのチャレンジが億劫に感じられたりと、新しく任せたい仕事に対する動機づけが難しくなります。
目標設定の面談や、定期的な1on1を利用して、Canを増やす支援をおこなっていきましょう。

部下の不満の聞き出し方|不満を直接聞いたところで、部下は本音を話さない

部下の不満の聞き出し方

近年、従業員サーベイを実施する企業が増えています。
管理職は、サーベイ結果をもとに、部下の不満をヒアリングし、改善しようとします。
ところが、「部下に聞いた不満を潰しても組織のスコアが良くならない」といった悩みをよく聞くようになりました。いったいなぜなのでしょうか?
今回は、部下の不満の聞き出し方についてご紹介します。

部下の不満を聞く際の上司の心構え

①外ではなく内に原因があるかもしれないと考える

1つ目は、原因が「外(制度や環境)」ではなく、「内(自らの上司としての言動」にあるかもしれないと認識しておくことが大切です。
少しつらい作業かもしれませんが、そう思っておくことで、広い視野で原因を考えることができます。
また、メンバーと対話する際も、自分自身に原因があるかもしれないと考えているか、自分の外にしか原因の目がいっていないかでは、メンバーに対する質問が変わってきます。
驚くことに、自分の外に原因があると無意識に思ってしまっているマネジャーは多く、メンバーから働き方などの制度や環境に対する不満が出てくると、不満が分かった!とすぐに判断してしまう方がいます。
しかし、それはメンバーが、上司に面と向かって言いやすかった不満で、本当の不満ではないかもしれません。
本当の不満ではないものの解決に取り組んでも、優先順位として間違っていますし、大した変化も期待できません。

②まずはマネジャーとして、できていない行動がないか内省する

メンバーに不満を聞く前に、まずはあるべきマネジャーとしての行動や発言と、自分にギャップがありメンバーの不満になっていないかを考えましょう。
チームの役割や目標をメンバーに周知し、それをブレイクダウンして各メンバーに業務を割り振り、業務遂行のための適切な支援をし、人材を育て、チームとして成果を出すことがマネジャーの役割です。
そうした行動をした上で、なんらかの不満がチームの生産性や業績達成に悪影響を及ぼしている、その可能性があるなら取り除くように努力するのが本来のあり方です。
サーベイ結果をもとに、不満からスタートし、不満をすべて潰そうとされる方がいますが、メンバーのすべての不満を解消することがマネジャーの役割ではありません。
不満からスタートしなくても、マネジャーがあるべき姿への行動や発言をすることで、メンバーのさまざまな不満が解消されることもあります。
まずはサーベイ結果をもとに、あるべき姿と現状の自分とのギャップについて考えましょう。

③上司は不満を解決する人で、部下はそれを期待する人の構図になってはいけない

上司が「何が悪い?どうしたらいいと思う?」と聞いてばかりだと、部下の態度が傍観者になってしまいます。
本来上司としては、一緒に組織を良くするために、部下にも主体的に役割を発揮して欲しいはずです。
ところが不満のヒアリングだけだと、不満は上司が解決してくれるものだと期待するようになります。
その結果、当事者意識がなくなってしまいます。
マネジャーが組織を良くしようと、メンバーへの不満のヒアリングを続けた結果、逆にチーム状態を苦しいものにしてしまうケースは少なくありません。
上司は部下に対し、「あなたはどう貢献できるか?」「どのような形なら協力してもらえるか?」という、課題解決のためのチームへの貢献を求める姿勢を忘れないようにしましょう。

部下の不満の聞き出し方

メンバーがどのように感じているか、実態を確認する姿勢はとても良いことです。
しかし、「不満を聞く」という姿勢はあまり得策ではありません。

不満を聞くことの落とし穴
  • メンバーに直接聞いたところで本当の不満を答えるわけではない(答えやすい不満を口にする)
  • 本当はたいした不満がなくても、不満について聞かれると不満を作り出してしまうことがある
  • 質問者本人(上司)への不満は聞き出しにくい

サーベイ結果を元に、上司がメンバーに不満を聞くと、制度や環境への不満は出てきても、上司に対する不満はなかなか出てきません。
面と向かって上司の不満を口にするのは、メンバーにとってハードルが高すぎます。
つまり、メンバーが上司に話せる不満は、話しやすいだけで、彼らの中でプライオリティが高くない問題かもしれないのです。

働きやすさやワークライフバランスといった環境や制度に関する不満は、比較的本音を聞き出しやすいため不満を聞くアプローチが有効な場合もあります。
それでも、メンバーの働きやすさが損なわれている原因が、上司の判断や意思決定の仕方、仕事の進め方などであれば、それらを聞き出すのは難しいでしょう。
上司の発言や行動が関係する不満は、メンバーからは聞き出しにくいです。
漠然と「何が問題だと思う?」と、課題や不満について聞いても中々出てきません。

不満や課題の聞き方の例
  • ○○に課題があるのではと思って、こういうことをやろうとしているんだけどどう思う?
  • 〇〇はこういった意図で行っているんだけど、どう感じてる?
  • ○○ができていなかったと思っていて、こう改めようと思うのだけどどう思う?
  • 今回〇〇が低かったのだけれど、自分がチームの役割や目標をみなに伝えられていないことが原因だと考えているんだけれどどうだろうか?

上の例のように、直接サーベイ結果の「項目」や、漠然と「原因」について聞くのではなく、具体的な「行動」や「推察」に焦点を当てた聞き方をすると、上司への直接の批判にならないため、メンバーは答えやすくなります。
また、「自分のこういうところは問題だ」と自らの問題を指摘することで、上司自身に矢が向く指摘を受け入れる姿勢が伝わり、上司へ指摘することへの安心感が生まれます。
上司本人から問われているわけなので、答えて問題ないとメンバーは感じることができます。

部下の不満の聞き出し方にはコツがある

いかがでしたでしょうか?
サーベイ結果などをもとに、メンバーがどのように感じているか、不満を確認するといった実態を確認する姿勢はとても良いことです。
一方で、聞き方を間違えると本当の課題にたどり着けず、あまり意味のない方向で努力してしまったり、間違った方向にチームの舵をきってしまう可能性もあります。
これまでストレートに部下の不満のヒアリングをしていた方は、ぜひ今回のコツを参考に、質問の仕方を改めてみましょう。
きっと新しい発見が生まれるはずです。

部下を問いで導く・コーチングを使うときに注意すべき5つのポイント

部下を問いで導く・コーチングを使うときに注意すべき5つのポイント

管理職に対するコーチング研修はとてもメジャーな研修のひとつです。ほとんどの企業で実施されているかと思います。
一方で、コーチングを使おうとする現場のマネジャーは、コーチングについて「知っているけれど使えない」「使っているつもりだけど部下から良い反応がない」という方が少なくありません。
マネジメントにおいてコーチングはあくまで一つの手法でしかなく、マネジメントの現場は研修と違い複雑です。
今回は、部下を問いで導く、コーチングを行う際に注意すべき5つのポイントについてご紹介します。

①メンバーが考えて答えにたどり着ける内容か

大前提、問いで導こうとする際には、「知識がないと分からないものではないか」という点に注意しなければいけません。
例えば、メンバーの価値観や、キャリア観について問うてみる。これは相手の中にあることを聞いているので、問いかけて聞くというコーチングは有効です。もちろん、ハッキリとした考えがないケースもあります。それでも、考えの種は本人の中に必ずあります。
また、現在行っている仕事について、あと一歩でたどり着けそうな場面、十分な知識はあるけれど判断が誤ってる場面、こうした場合でもコーチングは有効です。
問いによって別の視点を与えたり、内省を促すことで、今と違う考えや、間違いに気づける可能性が高いからです。

しかし、本人が知らない、知識がないが故に解けない、答えられないことについてコーチングをしても意味がありません。
例えば、ルール、法律、慣習、知識、過去の経緯、こういった知っているか知らないかが問題であり、絶対に自分で考えて中から答えが出てくるようなものではないものについて、コーチングしても意味がありません。どれだけ問いかけて待っても何も出てきません。
こうした場合は、知識について教えるティーチングが適しています。

②質問するだけになってはいけない

マネジメントにおけるコーチングは、研修で習ったセオリー通りにはいきません。
メンバーの成長に繋げる、納得感を持ってコトにあたってもらうためにコーチングを実施するのですが、時間は限られており、仕事も迫っています。
メンバーもコーチングを受けたいわけではなく、解決方法を教えてほしかったり、アドバイスが欲しかったりするわけです。

こうした背景から、マネジメントを行う際に、メンバーが答えられない時間が長くなると、上司は何も支援してくれないと逆に不満になります。
メンバーが上司に相談に来たり、上司が気づいたことを指摘したい場合には、たいていメンバーは考えたけれど答えにたどり着けなかった状態です。
そこでただ質問して聞こうとするだけでは、メンバーは詰まってしまいます。
メンバーが自力で正解にたどり着けるよう、ヒントや追加の質問などを織り交ぜながら、導く必要があります。

メンバー「資料が顧客に分かりにくいようなのですが、どう改善したらよいか分からなくて」
マネジャー「顧客にとって何が分かりにくいのかな?」
メンバー「当社のサービスの特徴や他社との違いは、各機能ごとにきちんと説明しているのですが、それでも説明し終わったあとに、結局どんなサービスなのかお客様にはぼやけているようで。」
マネジャー「どうしてだろう?」
メンバー「当社のサービスが他にない新しいサービスだからではないでしょうか」
マネジャー「なるほど。ではどうしたら既存のサービスにない、他とは違う新しさを伝えられるだろうか?」
メンバー「うーん。」・・・「他社と比較してみたらいいのではないでしょうか」
マネジャー「なるほど。いいアイデアだね。どうやって資料で比較を示そうか?」
メンバー「各社の特徴を並べて見るのはいかがですか?」
マネジャー「うん。それもいいけど、特徴を並べるだけだとどう違うかが顧客に分かりにくいよね。今と変わらない結果になるかもしれない。4象限のマトリックス型のチャート図を作るのはどうだろうか?各社のポジションがどこになるのか一目瞭然で分かりやすい。」
メンバー「なるほど。それはいいですね。ですが、そうした図を作るにはマトリックスの軸が肝だと思いますが、あまり作ったことがなく、自信がありません。」
マネジャー「なるほど。それならこの本がいいかな。この本のこの部分を参考に、マトリックスの軸を考えて作ってみて。できたらまた持ってきてほしい。」
メンバー「ありがとうございます。分かりました。自分で一度考えてみます。」

上記例では、前半はメンバーが考えたら答えに近づけると考えて、いくつかの角度を変えた質問によって本人が気づいていない視点を提供し、答えにたどり着けるよう支援しています。
後半部分では、メンバーに図式化する知識がないと判断し、すぐに方法を提供しました。
一方で、マトリックスの軸という重要な部分について、自ら考えるように指示し、考えるヒントとなる書籍も提供しています。

③メンバーに考えさせる時間のコントロール

ある程度時間を与えても出てこない場合は、②を適宜実施することが必要です。
ヒントや追加の質問もなく、ずっと考えることを求められると、メンバーは答えにたどり着けず何で指示してくれないんだ、アドバイスをくれないんだとマネジャーに対して不満を持ちます。
既に自分で考えて困っているから相談にきているケースでは、ヒントや追加の質問などが早いタイミングで必要になります。
マネジャーが新たに気づいたことがあり、メンバーに考えさせたい場合は、最初の問いで少し考える時間を与えて良いでしょう。

仕事における判断は、考えるという思考だけでなく、知識や経験といった情報も必要です。考えたら必ず答えにたどり着けるようなものではありません。
すぐに答えを教えてしまうのでは、メンバーの成長に繋がりませんが、メンバーが止まってしまったポイントで一人で長く考えさせることは、上司から支援や指導を受けれないという部下の不満に繋がると認識しておきましょう。

④イライラしない

メンバーからなかなか正解が出てこないからといって、イライラしてはいけません。
イライラしている雰囲気が伝わると、メンバーはプレッシャーから、集中して考えることができなくなります。問いに対して安心して考えられる状態を作る必要があります。
また、なんで分からないんだ、そんなことも分からないのか、という態度が透けて見えると、メンバーは考えることをやめてしまいます。
「どうせあなたの思う方向に動かしたいんでしょ」「時間の無駄なので早くあなたの持っている答えを教えてください」、といった姿勢にメンバーを変えてしまいます。
マネジャーのメンバーへの聞き方、メンバーが考えている間の待ち方は、コーチングにおいて非常に重要です。

⑤メンバーにとっての緊急度に配慮する

メンバーが急ぎで困っているときは、時間をかけてはいけません。いくらコーチングが有効であろうと、コーチングは時間がかかります。
緊急性が高く、メンバーが助けて欲しい時には、時間をかけずに適切に指示するようにしましょう。
メンバーがすぐに対応したい時、しなければならない時にコーチングを使うと、困ったときに適切な指示が受けれない人、頼りにならない人とのレッテルを貼られ、マネジャーとしての信頼を失ってしまいます。


いかがでしたでしょうか?
部下を問いで導く、コーチングを行う際に注意すべき5つのポイントについてご紹介しました。
今回ご紹介したポイントを押さえると、コーチングはマネジメントにおいて大きな力を発揮してくれるはずです。ぜひ本コラムを参考に、より良い部下の指導方法、育成方法について考えてみてください。

反対意見を出すなら代案もセットで、は正しいのか?|反対意見を表明する際の3つのルール

反対意見を出すなら代案もセットでは正しいのか?

ミーティングや議論における進行ルールの一つに、「反対意見を出すなら代案もセットで」というものがあります。
批判的な意見が出やすい、否定的な意見ばかりのチームにおいては、話を前に進めるためにとても有効なルールですが、実は落とし穴もあります。
今回は「反対意見を出すなら代案もセットで」という一見正しそうなルールに潜む落とし穴と、反対意見を表明する際の3つのルールについて解説します。

反対意見を出す際に代案を求める意味

誰もが会社で、自分の考えに一致しないと何でもかんでも反対する上司、やりたくないを意味がないと言い換えて反対する部下に遭遇した経験をお持ちと思います。
代案を考えるのは難しいですが、ただ反対するだけならとても簡単です。
そのため、話を前に進めたい人からすると、反対だけして代案を何も出さない人は、鬱陶しいことこの上ありません。
代案なき反対は議論を停滞させます。
ミーティングにおいて、「代案がないなら反対するな」「反対するなら代案はセットで」という考えを参加メンバーが持っている、そうしたルールが設けられたチームでは、安易な反対がなくなるため議論がスムーズです。
代案がなければ反対意見は表明できませんので、代案や建設的な意見をベースに話を進めていくことができます。

代案なき部下はマネジャーにとってやっかいな存在

代案なく反対する部下もいます。

マネジャー「今月の商談を増やすために、サイトを訪問してくれた顧客に電話をしよう」
部下「サイト訪問くらいの顧客に電話をしても無駄だと思います」
マネジャー「それはどうして?」
部下「サイト訪問くらいではまだ顧客のニーズは浅いです。サービス資料をダウンロードくらいした人でないと効率が悪い」
マネジャー「ではどうしたら商談を増やせるかな?」
部下「どうしたらいいかは分かりません。ただ、意味がないと思うんです。」
マネジャー「意見は分かった。では、今の案より効果的な策を一緒に考えて欲しい。もしより良い案があるならそれでいこう。ただ、現状のまま何もしないは無しだ。」
部下「分かりました。では、過去に失注した顧客に連絡するのはどうでしょうか。」

こんな場面に遭遇したら、上記のマネジャーのように「より良い案を一緒に考えて欲しい」とメンバーを巻き込むことはできずに、「もっと主体性を持ってくれ」「評論家になるな」とイライラして怒ってしまうマネジャーの方が多いのではないでしょうか。

代案がある部下の意見は上司にとって貴重です。しかし、代案はないけれど反対する部下は、上司にとってはやっかいな存在です。
このような場面で、マネジャーが「反対するなら代案を出せ」と言えば、言われれたメンバーはもっともな意見と感じ、納得がいかないながらも黙って従うでしょう。
「反対するなら代案もセットで」というルールは、安易な反対に対しては有無を言わせない力を発揮します。

代案がなければ反対意見は認められないのか?

実は、チームにとって反対意見が出ることは何ら悪いことではありません。むしろ、反対意見が出ないこと、メンバーが上司や周りに対して忖度する状態こそ問題です。
心理的安全性の低いチームでは、当然ながら立場の強い人に対する反対や否定は出なくなります。
実は、心理的安全性がある中で、代案がなくても反対ができるという状態は、よい状態とも言えるのです。
代案なき反対を許さない状態がいきすぎると、チームにとって不都合なことが起こります。
それは、本当に善意で「やめた方がいい」「もっといい案があるはず」と、メンバーが感じた違和感が放置されてしまう点です。

例えばある会議で、プロジェクトの進め方について発表者からある方向性が示されました。

マネジャー「それでは、本件は時間もないので、いつも依頼しているA社にお願いして進めようと思います。」
Bさん「ちょっといいですか。」
マネジャー「なんだい?」
Bさん「今回のプロジェクトは、A社にすべて任せるのは違う気がしています。今回の趣旨からすると、もっと良い方法があるのではないでしょうか。」
マネジャー「具体的にどうしたらよいと思うの?」
Bさん「すみません。分かりません。ただ、A社に任せるというのは安直過ぎると思うのです。もっと良い方法があるんじゃないかと。。もう少しみんなで考えませんか?もし何もよい案が出なかったらA社に任せるという形はどうでしょう。」
マネジャー「わかった。Bさんの言うことも一理ある。みんなどうかな?」
Cさん「確かに今回の内容からすると、A社とはちょっと違う気もします。こういう方法もあるのでは?」
マネジャー「それいいね!○○チームにも協力をお願いすれば、ある程度自分たちでできるかもしれない」

この時、「代案がなければ反対できない」というルールが徹底されていたとすると、今回Bさんが感じた違和感は表明されることはありませんでした。
違和感を取りこぼしたことにより、チームで生み出されたより良い代案にたどり着くチャンスを失っていたはずです。
「代案がなければ反対できない」というルールにより失うのは下記のような点です。

・善意からの反対や違和感を見逃す
・集団の知で解決できること、より良い代案にたどり着けない

前者は先に述べた通りですが、後者の「集団の知で解決できることを見逃す」も重要な視点です。
反対を表明した個人では解決・代案までたどり着けないけれど、チームでならたどり着けることがあります。
違和感や間違っていることを感じることより、代案を考える方が難しいです。
そのため、「代案がなければ反対できない」ということになると、善意の反対まで無くしてしまいます。それは、チームとしては大きな損失です。

反対意見を表明する際に必要な3つのルール

一方で、マネジャーとしては、代案のない反対意見や否定的な意見ばかりの状態を放置するわけにはいきません。
そうした場面でマネジャーに必要なのは、「前向きな反対意見」なのか、「後ろ向きな否定・単なる批判」なのか、を見極める姿勢です。

では、前向きな反対意見とするためには、どうしたら良いのでしょうか?
前向きな反対意見を行うには、発言者の発言の仕方が重要になります。

代案のない反対意見を表明する際に必要な3つのルール
  1. 反対する際に、相手の意見を全否定しない
  2. 前向きな決断としての反対であることを示す
  3. 一緒により良い代案を考える姿勢を示す

先の事例のBさんは、上記3つのポイントをしっかり抑えていました。
この3つのルールを守れば、単なる批判や否定でなく、前向きな反対意見を伝えることができます。
マネジャーとしても、3つのルールを守った反対意見であれば、たとえ代案がなかったとしても前向きな発言として耳を傾けることができます。
前向きな反対意見では、不毛な議論の停滞は起こりません。
マネジャーは、この3つのルールを守れば反対意見を表明して良いとメンバーに理解させること(逆にルールから逸脱した反対意見は認めない)、ルールに則った発言には耳を傾けることが重要になります。

反対意見を出すなら代案もセットで、はほどほどに

いかがでしたでしょうか?
代案のない反対意見はたしかに議論を停滞させます。
批判や否定ばかりして、建設的な意見を言わない人もいるでしょう。
しかし、全て一律で「代案なき反対」を否定しては、必要な反対意見を黙殺してしまいます。
反対意見をするなら代案もセットで、はほどほどにした方が賢明です。
今回取り上げた3つのルールをチームの共通認識とすることで、チームのコラボレーションを最大限発揮していきましょう。

部下を成長させる指導法のポイント3選

部下を成長させる指導のポイント3選

指導するにもパワハラと言われるのが怖い、時間がなくてコーチングなんてやってられない等の、部下への指導法に関する悩みは尽きません。
今回は、マネトレを利用する優秀なマネジャー数十人へのヒアリングを通じてまとめた、部下を成長させる指導法の3つのポイントについてご紹介します。
忙しい時にも使える指導法のショートバージョンもご紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。

「叱る」はめったに使わない

大前提、「叱る(非のある言動を咎め、厳しく注意する)」という行為を日常的に使ってはいけません。
叱るという行為は受け手にとって大きなストレスとなります。叱られた本人の頭は混乱してしまい、多くの場合、言われたことをきちんと受け止めることができなくなってしまいます。
そのため、現状を修正する、同じ過ちをしない、といった目的から離れてしまうので、「叱る」は日常的に使う意味がありません。
基本的には「指導(問いや助言を与え、良い方向に導く)」を用いましょう。

マネジメントにおける「叱る」と「指導」の使い分け

部下を成長させる「指導法」の3つのポイント

指導とは、問いで考えさせ、部下を導く行為です。
部下に問いかけることで、本人の内省を促し、改善のために必要なことを部下本人に考えさせます。
単純な指摘や指示と異なり、本人の学びや成長に繋がりやすいとされます。

ポイント① 「問い」を投げかける

「問い」が先にあり、「自分はこうしてほしい」「それはだめだ」「僕はこう思う」といった自分の考えは後にあります。

自分の意見や考えを先出しせず、問いかけを通じて本人に考えさせましょう。
どうしたらもっと良くできたと思う?といった未来形の問いかけの方が、部下の心理的な負荷は小さくなります。
なんでできなかったのか?といった否定形の問い方は相手を萎縮させます。
失敗を詰めているような問い方にならないよう注意しましょう。

<問いかけの例>
どうしたらもっと良くできると思う?
どうすべきだったと思う?
なんでそう判断したの?

なぜ改善した方が良いのか、どうすべきか、といったことは、本人が問いかけの中で気付けるならそれで良く、追認してやるだけで問題ありません。上司から必ずしもこうした方が良いと伝える必要はありません。
また、上司が考えていたことと同じでなかったとしても、前に進みそうなら部下本人の判断を承認することも重要です。

ポイント② 「問い」の時間をコントロールする

問いが難しいのは、相手が答えられない可能性も多くある点です
問いを与えて考えさせる行為は、その問題の大小や重要度、前提知識を知っていることが判断の比重として大きい事項かなどによって、部下が何らかの答えを出せるのかが変わってきます。

本人のキャリアや価値観といったパーソナルな話をする際は、本人が情報を全て持っているので、待っていれば何かしら出てきます。
しかし、業務に関することは、部下が持っている知識や経験、状況認識等が、複雑に絡み合っています。
そのため、出てこない時はいくら待っても出てきません。
何も出てこない場合は、より具体的な考えるヒントを与えたり、切り上げる時間をコントロールする必要があります。

研修でコーチングを学んだ方がやりがちなのが、業務に関する指導での長過ぎる問いかけです。
長すぎる「間」は、受け手のストレスに変わってしまいます。
考える時間が長過ぎると、部下は考えている状態から、ストレスを感じている状態に変わってしまい、ストレスが大きくなります。
ストレスが大きくなると部下の頭に内容が入らなくなり、指導の効果は激減してしまいます。
問いの時間コントロールは非常に大切です。難しそうだなと思ったら、ヒントを与えたり、途中で切り上げてティーチングに移行しましょう。

ポイント③ 指導の目的を忘れない(感情をコントロールする)

管理職の中には、感情のコントロールが苦手で、「指導」している最中、本来の目的を忘れてしまう方が一定数います。
皆さんも、 管理職が指導している最中にヒートアップしてしまい、なんのために指導をしているか忘れ感情的になっている光景を見かけたことはないでしょうか。
感情的に叱り、さらにいつしか怒りになっている人も少なくありません。

部下への指導法の研修は世の中に多くあるものの、受けてもなかなか実践できないのは、行為の最中に「目的」をいつの間にか忘れてしまい、イライラが先にきてしまうことが一因です。部下にイライラをぶつけても、上司の気持ちは静まるでしょうが、それ以外になんの意味もない行為になってしまいます。

上司が怒れば、部下には多大なストレスがかかり、指導をきちんと受け取れません。
現状を修正する、同じ過ちをしないように導く、といった本来の目的を忘れずに、感情をコントロールすることを意識してください。

忙しい時の指導法|「問い」で導くに固執しない

問いで導く指導は、ティーチングより時間がかかります。
忙しい業務の中で全ての指導をそのような方法でやる余裕がない管理職がほとんどでしょう。
その場合は、「問いで導く」方法に固執しなくても問題ありません。

コーチング研修に感銘を受け、やたらとコーチングを多用する方がいらっしゃいます。
しかし、その結果時間がなくなり業務フォローや、フィードバックがおろそかになったり、適切な指示が受けられないとメンバーの不満に繋がるケースがあります。
これではコーチングの意味がありません。

時間がないからといって、毎回「こうしろ、ああしろ」といった指示ばかりも適切ではありません。
指示ばかりでは部下は自分で考えることをしなくなり、成長しません。
結果、いつまでも人材が育たず、マネジャーの忙しい状況も一向に改善されなくなってしまいます。

場面や業務状況を考えて、問いや助言、指示を適切に使い分けましょう。

コーチングとティーチングの使い分け

時間がない時は、上司としての考えを先に示す

時間がない時に使える指導のショートバージョンは、「こうした方がもっと良かったと思うのだけど、それはなぜだと思う?」と、上司としての考えを指し示して、それはなぜかを考えさせる?という方法です。
前述の「どうしたら良かったか?」を考えさせる方法よりも、短い時間で考えさせることができます。
この方法は、部下の能力がその問題に対して追いついておらず答えを考えるのが難しい場合や、問いを投げかけても何も出てこなかった場合にも有効です。

さらに時間が無い場合は、「部下が考える時間」を一人で考えてもらいましょう。
もちろん部下が考えている際に一緒に付き合えることがベストですが、具体的なヒントを与えるなどして、ある程度答えに辿り着けそうな状態であるなら、一旦部下自身で考えてもらうという形でも構いません。
ただし、その際は「考えがまとまったらいつでも声をかけて」と伝え、もし部下からの声がけが無くても、必ず覚えておいて「例の件はどう?」と自ら部下に聞くようにしましょう。

今時間が取れない時は一旦指示し、後で指導する

すぐに対応が必要だが今は時間が取れない、といった状況の場合は、一旦ティーチングで指示し、後日部下との1on1などでそれを議題に取り上げましょう。
その際に問いかけを行えばOKです。時間をズラしての指導でも十分意味はあります。

部下が判断の理由、プロセスを考え理解し、次回自分で判断できるように導いてみてください。
新人や初めて担当する仕事のケースなど、部下の状態によっては、問いで導くより、ティーチングの方が適しているケースもあります。
実際のマネジメントにおいては、教科書通りのスタンダードな「問いで導く」方法に固執する必要はありません。
ご紹介したショートバージョンも組み合わせてみてください。

よくある勘違い|毎回最後に期待を伝える必要はない

「指導したら、最後に期待を伝えるをセットで」というような指導法もよく目にしますが、期待を毎回最後に伝える必要はありません。
現実のマネジメントで、毎回期待を伝えるのはそもそも無理があるでしょう。
むしろ、修正して成果が出た際に覚えていて、褒めたり認めてあげることの方が大切です。この点は忘れず実行しましょう。

期待がないと動けないのはマイナスでもあります。
こうした方がもっと良いよね、楽だよね、その方が自分の成長やポジティブな結果に繋がるよね、と部下が思えていれば、上司の期待を毎回伝える必要はありません。
また、期待は嬉しい人もいれば、実はストレスを感じる人もいます。期待や褒めるの乱用は、期待そのものの価値を下げてしまいます。
期待は外発的な動機づけであり、一時的な効果です。部下の中から生まれる内発的動機づけに勝るものはありません。
「指導」の最後に、部下が前向きに修正に向き合える状態に導くには、部下の価値観やキャリアを理解していることがとても役立ちます。

価値観とは|メンバーのやる気を引き出す価値観理解
キャリアとは|部下のキャリアを理解し信頼関係を築く方法

上司の指示は「指示待ち人間」をつくる

部下に任せてはできないからと、何でも自分で判断して指示する上司もいます。
部下の意見は多少の違いであってもなんでも否定して自分の「指示」を伝える。
このようなコミュニケーションで、部下に考えろというのは無理があります。部下にとっては自分で考えることは全て徒労に終わるからです。
コミュニケーションの矢印は上司➝部下の一方通行しかなくなり、いつしかそれが固定化されます。

こうなると、上司を支援する、上司に対し助言するといった、部下から上司へのコミュニケーションの矢印そのものがないという状況が固定化されます。

頑張って考えてもすべて上司の意見に最終的に変わるなら、部下にとって自分で考えることは無駄ですし、上司の指示をあおいだ方が合理的です。
その結果、指示をひらすら待つ部下が量産されます。

指示の多用によるマイナスは、指示待ち人間を作るだけではありません。
毎回上司による修正が入るので、部下としてはやり直しが頻発します。
すると、ビジネスのスピードは遅くなり、進まないのに時間はかかるのでメンバーのワークライフバランスは悪化し、エンゲージメントも低下します。
緊急時など、指示が有効な場面もありますが、日常的には「指示」ではなく「指導」を用いましょう。


いかがでしたでしょうか?

今回は部下を成長させる指導法のポイントをご紹介しました。
ハラスメントになりかねない感情的な叱るや指導をしなくても、部下を成長に導くことはできます。
むしろ、昔ながらの「叱る」が多いことや、命令・指示型のパワーマネジメントは今では逆効果です。
ぜひ部下を成長させる指導法を実践してみてください。

上司と部下の間にある隔たりはどの程度か?

上司と部下の間にある隔たりはどの程度か?

自己評価と他者からの評価(他己評価)の間には、誰しも多かれ少なかれギャップがあります。
従業員サーベイを実施すると、自己認知とのギャップに驚かれる人事や管理職は少なくありません。
では、実際に上司と部下との間にはどの程度の隔たりがあるのでしょうか?

今回は、そんな疑問についてマネトレが独自に調査した結果をご紹介します。

管理職から見たチームの評価(自己評価)は?

マネトレを利用する従業員数200名以上の企業に所属するマネジメントを行う役職についている方(リーダー、マネジャー、課長等)を対象に、「半年前と比べて自分のチームはよい方向に変化している実感があるか?」とアンケートを実施しました。

■半年前と比べて自分のチームは良い方向に変化している実感があるか

上司と部下の間にある隔たりはどの程度か?_管理職から見たチームの評価(自己評価)
上司と部下の間にある隔たりはどの程度か?_管理職から見たチームの評価(自己評価)_結果のまとめ

組織の良い変化を実感している上司は、「とてもあった」「あった」を合計すると84.4%となりました。
非常に高い数値ですね。上司の自己評価では、8割を超える人が自分のチームは良くなっていると感じているようです。
一方で、メンバーからの評価(他己評価)はどうでしょうか?

メンバーから見たチームの評価(他己評価)は?

次に、主観的な上司の自己評価ではなく、客観的な意見として部下からの他己評価を見てみます。
今回、他己評価として、部下へのエンゲージメントサーベイを利用します。
先のアンケートで、組織の良い変化を実感していると答えた上司 209名の配下組織について、部下に対するサーベイによるエンゲージメントスコアの実際の変化を取得した結果が下記になります。

■良い変化を実感している上司の配下組織の半年間のエンゲージメントスコアの変化

上司と部下の間にある隔たりはどの程度か?_メンバーから見たチームの評価(他己評価)は?
上司と部下の間にある隔たりはどの程度か?_メンバーから見たチームの評価(他己評価)_結果のまとめ

実際にエンゲージメントスコアが上昇している組織は43.5%となりました。
上司の自己評価からは大きな差があります。
先の上司に対するアンケートでは、「変化があった」「変化が少しあった」の2つを、良い変化を実感していると判断しましたので、その点を加味してエンゲージメントスコアについて「良化」「変化なし(維持)」の合計で比較してみます。
メンバーからの他己評価は、良化、変化なしを合わせて63.1%です。

組織の良い変化を実感し、チームは着実に前進していると判断している上司が8割いる一方で、部下は6割程度しか良い変化を実感していません。

上司と部下の間にある隔たりはどの程度か?_管理職・メンバーから見たチームの評価_比較結果のまとめ

上司と部下の間にある隔たり

今回は、上司と部下の間にある隔たりを測る指標として、上司の自己評価と、他己評価として部下のエンゲージメントスコアを軸に比較しました。
上司と部下の間の隔たりは確かにあり、上司は自己評価が、部下からの他己評価より高くなる傾向があるようです。
また、その差は約2割であり、上司は自分が考えているより2割程度割り引いてチームの状態を捉えると、マネジメントがより適切に行えるかもしれません。

まとめ
  • 上司は部下からの他己評価よりも、自己評価が高くなる傾向
  • 上司と部下の間にある隔たりは約2割

調査概要
■調査対象
・従業員数200名以上の企業に所属するピープルマネジメントを行う管理職(リーダー、マネジャー、部長等の管理職)
・管理職250名(アンケート調査に協力した管理職の人数)

■調査方法
1.ミドルマネジメント育成クラウド「マネトレ」を利用する管理職に対するアンケート調査
2.アンケートに回答した管理職の組織における従業員サーベイによるエンゲージメントスコアの変化を計測

■調査期間
2021年10月〜2022年3月

リーダー、マネジャーへの動機づけを行っていますか?|出世したくない人が8割の時代

リーダー、マネジャーへの動機づけを行っていますか?

マネトレでは、新任リーダーやマネジャーのスキルアップと、日々のフォローをお願いしたいといったご相談を多くいただきます。
いざ現場に導入してみると、スキル向上の前に、そもそも当のリーダーやマネジャーの動機づけができていない(本人はマネジメントをやりたくない)ことが判明するケースが少なくありません。
今回は、上司や人事が見落としがちな「リーダーやマネジャーへの動機づけ」について解説します。

今は出世したくない人が8割の時代である

会社で出世して給料を上げていくこと。過去は、多くの会社員にとってそれは目標でした。
ところが、現在はそれとは全く違った様相があります。

人材サービスのマンパワーグループが2020年3月にまとめた調査では、役職についていない20~50代の正社員400人の83%が「管理職になりたくない」と回答しました。
また、「管理職になりたくない」と回答した人の理由の上位3つは、「責任の重い仕事をしたくない」(51.2%)、「報酬面でのメリットが少ない」(40.4%)、「業務負荷が高い」(40.4%)となっています。

引用: https://www.manpowergroup.jp/client/jinji/surveydata/20200316.html

この結果からは、「皆が出世を目指している、昇進は喜ばしい」という価値観は既に崩壊しており、そもそも当の本人は管理職になりたいと思っていない可能性が大いにあることが伺えます。
ところが、登用する側の上司は古い価値観を持っており、「管理職になるのはめでたいこと」「本人も嬉しいこと」だと決めつけて、任命している傾向があります。
登用される側のやる気やモチベーションに対する配慮が抜け落ちてしまった任命はあらゆる企業で見られ、新任リーダーやマネジャーが、不満やストレス、怒りを感じているケースは無視できない数です。

動機づけされていない新任リーダー・マネジャーはとても多い

マネジメントへの動機づけがされていない状態では、研修や指導によって管理職に必要なスキルを身に付けてもらおうとしても、本人が望んでいないため身に付けさせることは難しいです。

実際の現場で動機づけされていない管理職が多く見られるのは、新任のリーダー・マネジャーです。
現場の上司も人事も昇進を良いものだと決めつけていて、昇進に際して本人のモチベーションや考えを聞くような対話を行い、動機づけることを全く行っていないケースもあります。
制度や権限、タスクに対する細かい伝達や、マネジャーとしての役割に関する教育をしても、「昇進おめでとう。よろしく頼むね。」では登用される本人は動機づけされません。
これでは、元々管理職になりたかった2割の人以外は、やりたくない管理職をやらされている状態となってしまいます。

組織をマネジメントしていくためには、リーダー・マネジャーを継続的につくっていかなければなりません。
今や人事や上司は、マネジメントに登用する人を動機づけることに、力を入れていく必要性が生まれているのです。

モチベーションがないリーダー・マネジャーの負の影響は大きい

マネトレ利用者において「リーダー・マネジャーにモチベーションがない組織」の半年間の変化を調べたところ、実に89%の組織で従業員エンゲージメントが低下しました。

このように、やる気がない人をリーダー・マネジャーとして置いておくことの弊害はとても大きく、無視することはできません。
一方で、マネジメントに関する能力とやる気の両方がある人のみを登用していては、「マネジメントできる人材が足りない」ということが発生してしまう企業がほとんどでしょう。
では、どうやってリーダー・マネジャーを動機づけていけば良いのでしょうか?

※調査方法:
リーダー・マネジャーにモチベーションがない組織は「マネトレ利用ユーザーの内、まったくログインせず組織改善に取り組まない管理職がいる組織」を指し、当該組織に所属するメンバーに対し3ヶ月に1度サーベイを実施し、エンゲージメントスコアの推移を計測

リーダー・マネジャーを動機づけるにはどうすればよいのか?

リーダー・マネジャーを動機づけていくには、全社的な取り組みと、現場での取り組みの両方が必要です。
例えば、いくら会社として魅力的な報酬制度やサポート体制をつくったとしても、現場の部長が朝誰よりも早く出社し遅く帰るようでは、「そんな働き方をしてまで昇進したくはない」と社員は考え管理職になりたいとは思わないでしょう。

全社的な取り組み例
  • なりたいと思える管理職の役割や報酬制度の再考
  • 労働環境の整備(管理職のワークライフバランスへの配慮、管理職業務の省力化・効率化)
  • 教育環境の整備(学びに対するサポート)
  • 管理職を孤立させないフォロー体制
  • キャリア教育(管理職でもスペシャリストでもないマイペースのキャリアはないことの周知など)
  • 管理職像の多様化(引っ張るリーダーだけでなく、サーバントリーダーシップを発揮する管理職もあるなど)
  • 現場の推薦する管理職候補に対する第三者からの対話、動機づけ
現場での取り組み例
  • 管理職になりたくない可能性を考慮し、登用に際しては丁寧なコミュニケーションを取り、必要に応じて時間をかけて進める
  • なりたくない背景を聞き、その原因を解決・改善できないかの検討
  • 管理職になって得られること、成長できることをしっかりと伝える(給与のアップ、権限が増えることによる意思決定の幅、マネジメントすることによって得られる仕事のやりがい、市場価値の向上など)
  • 管理職になるまでのステップの整備(徐々に権限や裁量を増やしていくなど)
  • マネジメント負荷への配慮 (チームの構成メンバーや、補佐するリーダー的な存在をチームに入れるなど管理職のマネジメントのしやすさへの配慮)
  • 登用後も管理職の悩みを吸い上げる姿勢

メンバーと同様に、リーダー、マネジャーにも動機づけは必要

会社の中でより高い職位を目指すことが、かつては多くの人にとってキャリアの目標でした。
しかし、価値観やライフスタイルの多様化、転職の一般化、共働き世帯の増加、ワークライフバランス重視、個人のキャリアに対する意識の向上などにより、今いる会社で出世することが共通の目標ではなくなっています。
共働き世帯であれば、片方がほどほどに働き家事の多くを担って、片方が給与の高い会社に勤め仕事に精を出すといった、夫婦でバランスを取る若い世代は珍しくありません。
最近では、副業が広がったことにより、本業で管理職に登用されることで昇給する給料以上を副業で稼ぐ人も出てきています。
今後「管理職になりたくない」という人はさらに増加するかもしれません。

だからこそ、人事も現場の責任者も、マネジメントに登用したい人の動機づけから始めなければなりません。
会社として「管理職になりたい」人を増やすためのさまざまな改革も必要になります。
管理職に必要な知識やマネジメントスキルの教育の前に、まずはリーダー、マネジャー候補としっかり対話することからはじめましょう。

従業員サーベイを実施した後にマネジャーがやってはいけないこと|NG行動4選

従業員サーベイを実施した後にマネジャーが気をつけるべきNG行動4選

近年、従業員サーベイを実施する企業が増えています。
従業員や自社について客観的に知ることができるメリットがあり、経営や人事にとってサーベイ結果はとても有益です。
しかし、サーベイは使い方を誤ると、組織にマイナスの影響を与えてしまうことがあります。
今回は、従業員サーベイを実施した後にマネジャーがやってはいけないNG行動を4つをご紹介します。

やってはいけないこと① サーベイ目的の共有をしない

サーベイを実施する目的を必ず共有し、回答を促しましょう。
人は目的が分からないものに協力しようとは思いません。
組織や会社を良くしていくために活用するので、皆さんの率直な声を回答して欲しいと伝えましょう。

マネジャーがメンバーにサーベイの目的を説明し、アンケート回答への協力依頼をしないと、アンケートの回答率が下がったり、全て同じ点数をつけるといった適当な回答が増えてしまいます。
低い回答率や、適当な回答が増えれば、サーベイ結果が適正なものではなくなります。
誤ったサーベイ結果で、判断や行動を起こしては意味がないどころか、チームにとってマイナスになるかもしれません。

せっかく時間や費用をかけてサーベイを実施するのであれば、有益な結果が得られるように、マネジャーは必ず「目的」を伝え、メンバーに回答を促すようにしましょう。
たとえば、マネトレで実施した1万件以上のアンケートの回答率は95%を超えています。
もし、あなたの会社のアンケート回答率が9割を下回っているようであれば、マネジャーからメンバーに対するサーベイ目的の説明や、回答依頼が行われているかチェックしましょう。

やってはいけないこと② サーベイのやりっぱなし

サーベイをしたけれど忙しくて放置してしまった。
これは、管理職、人事の双方から良く聞く話ですが、サーベイは絶対にやりっぱなしにしてはいけません。
下記はマネトレ利用者に実施したアンケートで、従業員サーベイ後に何も行動ができなかったと答えた管理職がマネジメントする組織で、エンゲージメントスコアが6ヶ月後にどうなったか調べたものです。

51%の組織で、従業員のエンゲージメントスコアが悪化しました。
これは、「サーベイ結果を受けて何らかの行動をした」と答えた管理職がいる組織と比較すると、約2.5倍も悪い結果です。

「サーベイを実施したけれど、結局何もできなかった」とならないよう、サーベイ後の改善活動や、そのスケジュールをきちんと計画・チェックしていく施策を事前に設計しておく必要があります。

やってはいけないこと③ メンバーへのヒアリング

サーベイ結果を受けて、マネジャーがメンバーと対話することはとても重要です。
多くの管理職が、サーベイ結果を見て、その背景や課題をメンバーに確認しようとします。
しかし、それが「ヒアリング」だけになってはいけません。

「何が問題か?」「どうしてこうした結果になったと思う?」というヒアリングだけすると、メンバーを傍観者にしてしまいます。
サーベイ結果について1on1で確認されたことを「上司や会社が解決してくれるもの」とメンバーは期待する・考えるようになってしまうのです。
こうなってしまった経験があり、従業員サーベイをやめたという企業も多いです。

メンバーが傍観者になるのを防ぎ、サーベイを有効活用するためには、マネジャーの対話のスタンスが重要になります。
メンバーに当事者として考えさせる問いかけを行いましょう。

ただのヒアリングにしないための問いかけ
  • 出てきた問題に対して「ではどうすれば良いと思う?」「あなたならどう解決する?」「どんな協力ならしてもらえるだろうか?」と問いかけ、メンバーに当事者として問題を考えさせ、参加させる。

本来、組織の課題はマネジャーだけで解決できるものではなく、メンバーひとりひとりが当事者として関与することで解決されるものです。
もちろんサーベイの結果、マネジャーが改めなければならない点もあると思いますが、その過程でメンバーが協力できることはたくさんあります。
マネジャーは自身の言動を振り返るだけでなく、メンバーを巻き込み、チームとして組織課題を解決する意識でサーベイ結果に向き合いましょう。

やってはいけないこと④ 行動の過程・結果を共有しない

サーベイ結果を受けて、マネジャーが何らかの行動を起こしたとしても、その過程や結果が共有されなければ、何もしていないことと同じです。
メンバーは、「マネジャーは何もしていない」と考えるようになると、マネジャーに期待しなくなり、アンケートに真面目に回答しても無駄だと考えるようになります。

マネジャーの行動はメンバーから見えにくく、自身が思っているほどメンバーには見えていません。
特に、上位組織や人事に掛け合わなければ解決が難しい問題などに対する行動は、マネジャーがメンバーに共有しなければ全く見えないといって良いでしょう。

また、良い結果にならなければメンバーに共有しないという方がいらっしゃいますが、それは間違いです。
問題が改善された、解決された、という結果はもちろん重要ですが、「解決のために努力している」という事実も大きな意味を持ちます。

下記はマネトレ利用者に実施したアンケートで、従業員サーベイ後に何らかの行動を起こした、と答えた管理職がいる組織の、半年後のエンゲージメントスコアの変化を調べた結果です。

エンゲージメントスコアが良化した組織は全体の63%で、これは何も行動しなかった管理職がいる組織の2倍に相当します。
半年程度では課題は解決されないことも多く、エンゲージメントスコアの良化した組織がみな、課題解決がなされたわけではありません。
このデータは、結果のいかんに関わらず、マネジャーがサーベイ結果を受けて行動をすることに、意味があることを示しています。そうしたマネジャーの行動は、メンバーにとってポジティブに映ります。

マネジャーがやるべきこと
  • 解決のために行動していることを共有する。
  • 行動した結果を共有する(それが良い結果でも悪い結果でも)

やってはいけないを避ければ、サーベイはとても意味あるものになる

従業員サーベイは、やってはいけない行動をしてしまうとデメリットも多い施策となってしまいます。
一方で、今回ご紹介した失敗を避ければ、組織をより良くし、従業員のエンゲージメントを高め、働く人の環境を改善させるきっかけとなる施策です。
従業員サーベイを有効に活用していきましょう。

マネジメントには、なぜ「影響力」が必要なのか?

なぜ「影響力」が重要なのか?

「影響力」とは

影響力とは、他に働きかけ、考えや動きを変えさせるような力のことです。
マネジメントでは、部下はもちろん、上司や他部署、取引先、顧客など、さまざまな相手と関わります。
そのためマネトレでは、「必要な資源・協力を確保し、チームを成功に導く力」をマネジャーの影響力と定義しています。

チームを成功に導く過程では、ヒト・モノ・カネ・情報・時間などの資源が不足し、壁にぶつかることが多々あります。
こうした場面で、メンバーや上司、関係部署の協力を取り付ける、利害を調整する、人員や予算を確保するといった活動は、マネジャーとしての信頼を高めたり、チームを成功に導く上で必要不可欠な能力です。

「影響力」の低下が招く、マネジメントへの悪影響

影響力は、「マネジャーとしての信頼」に影響します。
メンバーとの信頼関係には、「人としての信頼」「マネジャーとしての信頼」の2段階があります。

・ 同僚としてなら良い(人間関係は良い)が、上司としては頼りない
・ メンバーの意見は聴いてくれるが、何も改善されない
・ 「誠実さ」のスコアは高いが、「影響力」のスコアが低い

これらは人としては信頼されているものの、影響力が低くマネジャーとしての信頼が十分に構築できていない状態です。

「マネジャーとしての信頼」は、マネジメントの土台です。
メンバーから信頼が得られないと、マネジメントのさまざまな場面でマイナスの影響が出てきます。

影響力が低いことが招く悪影響
  • マネジャーとしての信頼が得られず、マネジメントが機能しなくなる
  • 上司とメンバーの板挟みで、マネジャー自身の負担が増えてしまう
  • 他組織への依頼や要望が通らないことで、組織の生産性が高まらない
  • 恒常的な業務過多が改善されない
  • 「意見を出してもどうせ変わらない」と感じさせ、意見が出づらくなる
  • マネジャーに期待しなくなり、相談や新しい提案が減る
  • マネジャーに対して批判的・反発的な態度が増える
  • 不平不満や愚痴が増える    など

「影響力」を低下させる要因として考えられること

影響力がないと感じさせる行動をとってしまっていることもあれば、自分ではしっかりやってるつもりなのに、サーベイで低いスコアとなりショックを受けることもあります。
上司と部下の認知ギャップで多いのは、上司が何らかの行動を起こしていることがメンバーに伝わっていない(見えていない)というケースです。
メンバーへのサーベイで「影響力」や「信頼」が低いスコアとなった場合、以下チェックポイントが満たせているか、自身の行動を振り返ってみてください。

影響力や信頼に関するチェックポイント
  • チームで顕在化した問題を放置していないか
  • メンバーの意見を適切に上申しているか(マネジャーで止めていないか)
  • 自分だけで改善が難しい問題の場合、上司や関係者に相談し協力を求めているか
  • 聞くべきではないと判断した意見について、メンバーが納得できる説明をしているか
  • チームの役割や目標を明示し、そのためにチームとして解決すべき課題を説明しているか
  • 仕事を割り振るだけでなく、意義や重要性などを伝えて仕事に動機づけしているか
  • 上司という役割責任を権威と勘違いし、高圧的な態度で指示や指摘をしていないか
  • 問題やメンバーからの意見に対して、自身の対応方針を伝えているか
  • 上司に相談中など、きちんと改善に動いていることをメンバーに伝えているか

「影響力」の高め方

「影響力」は一朝一夕には高まらず、ある程度時間がかかります。
必要な資源・協力を確保しチームを成功に導くというマネジャーの役割を遂行していくことで、マネジャーとしての影響力や信頼は徐々に高まっていきます。

●問題を放置せず、適切に判断して対処する

マネジメントをしていると、大小さまざまな問題が発生します。
その際どのように対処していくのか、判断軸や分類方法をある程度決めておくと対処しやすくなります。

①その問題は、対処すべき課題か?

問題が発生したり、メンバーから不平不満や改善の要望が出た際は、まずそれらは「対処すべき課題か」を考えましょう。
対処すべきものが多いと思いますが、中には顧客に影響が出てしまうもの、メンバーの個別最適の意見で全体最適にならないものなど、「対処すべきでない問題」「聞くべきではない意見」もあります

頭ごなしに否定するのは良くないため、なぜそう考えるのか、目的は?、メリットとデメリットは?など、メンバーの意見の背景や考え方を確認した上で判断するのが適切です。
その上で、コンプライアンスや倫理観、会社のビジョン、部門のミッション、チームの役割や目標、顧客への影響、全体最適、メリットデメリットなど、何に照らして「対応すべきでない」と判断するのか、理由を説明しましょう。
その場で判断できない場合は、「検討する」と持ち帰って問題ありません。後日、検討の結果を忘れず伝えましょう。

②課題を分類して優先順位を決める

課題を分類する軸は複数あります。優先順位を整理するのが目的なので、使いやすい分類で構いません。
また、どれも対処すべき課題なので、厳密である必要はありません。大まかに優先順位を決め、対処していきましょう。

(例1)問題の重要度で分ける
・顧客や会社の信頼に影響する → 最優先で改善する
・無駄や非効率だが業務としては回っている → 対応時期を設定して改善に取り組む

(例2)改善によって得られる効果で分ける
・チーム全体に効果が及ぶ → 優先
・メンバー個人に効果が留まる → 次点

(例3)改善の難易度で分ける
・すぐに改善できる → すぐに改善し実績を作る。タスクとして溜めない
・改善できるが工数が大きい → 優先順位を決め、対応時期を設定する
・自分だけで改善できない → 相談や確認に時間がかかる旨を伝え、後日状況報告

●きちんと改善に動いていることを伝える

意外と多いのが、マネジャーは改善に取り組んでいるのに、それがメンバーに見えていない(伝わっていない)というケースです。
上司に相談する、関係部署と調整する、取引先と話し合いの場を持つなどマネジャーが活動している時、メンバーは自分の業務に向き合っているため、見えていないことが多いです。
テレワークや会議が多いなどメンバーの近くで仕事をする時間が少ない場合は、マネジャーが何をしているか、ほとんどメンバーには伝わっていないと考えた方が良いでしょう。

マネジャーの活動はメンバーから見えづらく、ともすればマネジャーは仕事をしていない、問題を放置しているとみられがちです。

・改善に取り組んでいるという事実
・途中経過(誰に相談し、誰がボールを持った状態か)
・改善の目処(いつ頃までに/時間がかかる理由)
・改善できなかった理由(上の判断理由)
・改善すべきでないと判断した理由(どんな判断軸で決めたのか)

など、きちんとマネジャーの責務として動いていることをメンバーに伝えるようにしてみてください。

●チームの目標や方針を明示し、チームとして解決すべき課題をメンバーと共有する

チームを成功に導くには、そもそもチームの成功とはどんな状態かを明確にしなければなりません。
チームの役割や目標を定め、それを達成するためにどんな戦略や方針で進めていくのか示すのもマネジャーの役割です。
メンバーとマネジャーでは、視座の違いや経営情報に触れる機会に差があり、メンバーは同じ情報を得たとしてもマネジャーと同じレベルで考え、情報を解釈することができません。

チームの役割や目標がなかったり、メンバーに理解されていない場合、マネジャーはチームの成功のために動いているつもりでも、メンバーはなぜそうするのか理解できないといったすれ違いが発生します。
共通の目標がないため、変えたくない、これまで通りの方が楽だ、などと個人の価値観をもとにした反対意見が増える悪影響も出てきます。

チームの目標や方針を明示し、チームとして解決すべき課題を共有することで、マネジャーの取り組みや依頼事項の意図が、メンバーに理解される状態を作りましょう。

●上司や他部署のマネジャーと良好な関係を築く

マネジャーが直面する問題の中には、自身に権限がない、影響が他組織にも及ぶなど、自分だけで解決が難しい問題が多々あります。
こうした問題は、上司や他部署に掛け合うことで、承認を得る、協力を得る、利害を調整するといった活動をしていくことになります。
日頃からコミュニケーションをとり良好な関係を築いておくと、いざ問題に直面した際に、協力を得やすくなります

●任せる仕事に対して動機づけする努力を欠かさない

マネジャーは、メンバーに対して業務の指示を出したり、その成果を評価したりと、その役職に一定のパワーがあります。
そのため、「これやって」とただ指示を出すだけでも、メンバーがその指示に従ってくれる場合も多いです。
ただ、このような仕事の任せ方では、メンバーは仕事に動機づけされることもなければ、自ら協力したいと思うこともないでしょう。

「必要な資源・協力を確保し、チームを成功に導く」には、チームメンバーの協力を得ることも当然必要です。
メンバーの心持ちも影響するため、任せる仕事に対して100%動機づけできることはないと思います。
しかし、仕事の目的や意義、重要性、なぜあなたに任せたいのか、その仕事にどんな魅力があるのかなどを伝え、メンバーを動機づけする努力を欠かしてはいけません。
こうした説明を怠らず、働きかけを続けていくことで、影響力やマネジャーに対する信頼が高まっていきます。

マネジメントには、なぜ「誠実さ」が必要なのか?

なぜ「誠実さ」が重要なのか?

「誠実さ」とは|マネジメントにおける重要性

誠実とは、「私利私欲をまじえず、真心をもって人や物事に対すること」です。

・偽りのない本心で人や物事に接すること
・自身の損得を超えた判断ができること
・相手や周囲の状況を優先して考えられること

一般的には、こうした心構えを持っていると相手に理解されれば、「誠実さ」が伝わっていると言えます。

誠実さは、人として信頼できるかどうかの判断ポイントになります。
人は、信頼できない相手、信頼できるか分からない相手の話を素直に聞くことができません。
マネジャーは、メンバーを統率し、メンバーに組織の目的や目標の達成に向けて動いてもらう必要があります。
そのため、人として信頼されることは必要不可欠であり、何より先に取り組むべき最優先事項です。

「誠実さ」の低下が招く、マネジメントへの悪影響

上司の誠実さが低い、と思われている状態は、メンバーとの信頼関係が十分に構築できていない状態です。
信頼関係はマネジメントの土台です。
信頼が損なわれると、メンバーはマネジャーに対して批判的になり、マネジメントが機能しなくなります。
また、長く放置してしまうと、批判的な関係性が固定化され、関係修復が困難になってしまいます。

誠実さが低く、信頼されていないことが招く悪影響
  • 対話の際に、なかなか心を開いて本音で話してくれない
  • チームの方針に対して、批判や反発が増える
  • 依頼や指示をしても、素直に対応してくれない
  • チームをより良くしようとする活動に対しても協力が得られない
  • 会社やマネジャーに期待しなくなる(離職率が高まる)
  • メンバーの愚痴や不満の声が増える   など

「誠実さ」を低下させる要因として考えられること

メンバーは、マネジャーの普段の言動から、信頼できる人かどうかを無意識的に判断しています。
初対面の相手を信頼できるかすぐ判断できないように、「誠実さ」や「信頼」は時間をかけて構築されていきます。
チームを組成した直後は、互いの理解ができておらず、まだ分からない、判断できていない状態がほとんどです。
ある程度付き合いが長い場合は、これまでの関わりの中で、誠実な人物かメンバーから判断されています。

メンバーへのサーベイで誠実さや信頼が低いスコアとなった場合、以下チェックポイントが満たせているか、自身の言動を振り返ってみてください。

誠実さや信頼に関するチェックポイント
  • 人として尊重した態度でメンバーと接しているか
  • メンバーの意見や考えを聴く姿勢を持っているか
  • マネジャー自身がメンバーを信頼し自己開示しているか
  • 意思決定に判断軸があるか(感情や上司の意見に流されないか)
  • 発言や判断に一貫性があるか(言うことがコロコロ変わらないか)
  • 自分のミスや誤りを素直に認められるか
  • 発言に嘘や偽りがないか
  • 言葉遣いが横柄ではないか
  • 約束を守っているか
  • 仕事中と仕事後で発言は一貫しているか(たとえば飲み会での発言にも注意を払えているか)
  • 上司という役割責任を権威と勘違いし、高圧的な態度をとっていないか

「誠実さ」を高める方法

誠実さや信頼は、一瞬で失墜することはあっても、一気に高まることはありません。
ある程度時間がかかる(時間をかけて築いていく)ことを覚悟しましょう。

①すぐに改善に取り組むことが大事

メンバーからの信頼を得られないと、マネジメントが機能せず、組織をより良くしようとする活動も前に進みません。
「誠実さ」が低い場合は、まずメンバーから信頼を得ることを考えていきましょう。
リーダーとしての発言、行動を振り返り改善することが重要です。

<チーム組成タイミング>

新しくチームを組成したタイミングは、互いを理解しあい、信頼関係を構築するのに適したタイミングです。
メンバーも、新しい上司はどんな人か、同僚と良い関係が築けるかなど、不安を感じながら過ごしています。
そのタイミングで、お互いを知るための1on1ミーティングや、チームの懇親を目的としたランチ会などを行うと効果的です。
メンバーを理解しようとする、チームの関係性を良くしようとする姿勢が伝わり、マネジャーに対する信頼や、協力しようとする気持ちを高めます。

チーム組成初期は、チームの戦略や方針を考えたり、業務割り振りや目標設定をしたりとやることが山積みで大変な時期だと思います。
ついついメンバーとのコミュニケーションを疎かにしがちですが、最初の1ヶ月が大事な時期です。
その時期にコミュニケーションをとっておかないと、メンバーに関心がない、大切に思ってくれないという印象を与えてしまいます。
一度マイナスの印象が定着してしまうと、回復させるために時間を要します。
初期にメンバーとコミュニケーションをとり、互いを理解することは、その後のマネジメントを楽にします。長期でみると効率化に繋がリます。
忙しい時期ですが、積極的にメンバーとコミュニケーションを取りましょう。

<チーム組成から3ヶ月以上経過している場合>

メンバーとの付き合いが長ければ長いほど、「●●さんはこんな人だ」と印象が固定化している場合が多いです。
これまでのチームでの関わりの中で、あの時こんな判断をした、こんな振る舞いをした、こんな発言をしたなど、さまざまな言動を踏まえ、時間をかけて構築されたマネジャーへの見方です。
こうしたケースでは、マネジャーが2,3ヶ月、心を入れ替えてメンバーと接するだけでは、本当に変わったのか、ただの気まぐれなのか、メンバーは判断できません。
しかし、中長期でそうした態度を継続していくと、必ず上司への見方が変わり、良い変化が現れてきます。
諦めず、誠実な態度でメンバーと接し、信頼関係を構築していきましょう。

 

②具体的な改善アクション

上述した「誠実さや信頼に関するチェックポイント」で満たせていないことを、1つずつ改善していくことになります。

●メンバーとの対話を増やす

1対1で対話するのが、互いを理解し合い信頼関係を築く場として最も効果的です。
大っぴらに自分をさらけ出せる人は少ないので、個別に対話の中で、メンバー理解を深めていきましょう。
メンバーによっては、なかなか心を開いて本音で話してくれないメンバーもいます。
その場合は、マネジャー自身が先に自己開示をすることで、メンバーを信頼していることを示してみてください。

●裏表のない言動を心がける

メンバーは、業務時間中の言動だけでなく、業務時間外の振る舞いも見ています。
オンオフで言ってることが違う、上司には下から出るのに部下には偉そう、当人がいない場所で陰口や愚痴を漏らす、といった表裏がある振る舞いは信頼を損ないます。心当たりがある場合は改善しましょう。

●判断軸を作り、意思決定に一貫性を持たせる

メンバーの意見を聴く姿勢は重要ですが、メンバーの意見が全て正しいわけではありません。
マネジャーは何を優先するかきちんと判断軸をもち、適切にジャッジしていかなければなりません。
判断軸がなく優柔不断だったり、時や場合により判断が変わるようでは、信頼は生まれません。
コンプライアンスや倫理観、会社のビジョン、部門のミッション、チームの役割や目標、顧客への影響、全体最適、メリットデメリットなど、何に照らしてどう判断したのか、判断の理由を説明できるように意識してみてください。

●約束を守る/メンバーの意見や不満を聞き流さない

意見や不満を伝えてきた場合、メンバーはマネジャーが改善してくれることを望んでいます。
メンバーの意見や不満の中には、改善すべきではないもの、改善すべきだがマネジャーだけでは解決が難しいものも含まれます。
前者は、なぜ改善すべきではないと考えているのかきちんと説明する。
後者は、上司や関係者に相談していることや、改善が難しい理由、改善に時間がかかる旨をメンバーにきちんと伝える。
マネジャーの思考や行動は、思ってるほどメンバーに伝わらないため、メンバーに「伝える」ことを意識的に行ってみてください。

多様な価値観を受け入れる/部下が自分と同じ熱量で仕事に取り組んでいると思わない

上司は、部下に対して「仕事ならやって当然」、「昇進したら嬉しいはず」と考えがちです。
しかし、実際はそんなことはありません。部下が上司と同じ熱量で仕事に取り組んでいるとは限りません。
仕事はあくまで仕事で任されたことだけこなしたい人、責任を負いたくないので出世したくない人、さまざまなメンバーがいます。
自分は良かれと思い、発破をかけるため、危機感を与えるため、インセンティブを与えるため、と行動したことが相手には響かないかもしれません。
自分とメンバーは違う、という前提に立って、相手を理解するように努めましょう。